生まれ変わって推理する

さかもと

心の不吉な塊

 僕は何者なんだろうか。そんな哲学的な思考が僕の頭を掻き回る。

皆も1度は考えたことがあるだろう。

人間とは何か。感情とは何か。宇宙とは何か。etc.

そんな生きる上ではどうでもいい事が頭の中に常駐しているのだ。

心底生きづらい頭で生きているのだ。心は腐り、思考は停滞していっていることを感じる。

体力をすり減らして通った中学も特に意味もなさなく。

無駄に増やした語彙も使う事なく、頭から消えていく。

本当にしたい事は何なのか。それさえも分からない。

僕の心にはあるのだろう。漠然で、不吉で、重い、不安の、塊が。

友人はいない。恋人も勿論いない。

頼れる人がいないというのは僕の塊が増大していく。

将来の夢が無いのもそれを増大させていく。

頭にはキャパシティが有るものだ。

その有限の空間の中に無限の不安で埋め尽くさんとしようとしている塊は、日に日に僕の欲求を押し潰し、生きている意味が有るのか、人並みの思考が消えていくのだ。

 僕は以前はアニメを多量に見ていた。サブスクで順位順にした1位からそれぞれに見ていた。あの時は何を見ても面白く感じていた。どんなにありきたりで、どんなにつまらなくても、僕はアニメを見る事を好み味わっていた。

しかし、今はサブスクのアニメのタイトルをスクロールしてタップしては、見るという行為をせず、またスクロールを行う。そんなもので時間をドブに捨ててしまう。

片仮名が多くて、気が悪くなってしまう。こんな気色の悪いネタを善しとする今の僕が嫌になる。

そんなこんなで鬱だけでは形容し難い僕の人生だった。

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 夜に見た美しい満月が、朝の空に昇っていると勘違いしたのは保安球のボタンを押して、オレンジ色に光るLEDライト。空は青く、時計を見たら針は11を刺している。

いつもの日常だ。俺はもう28歳になっていた。普通の人なら既に職に手をつけ、家庭を持つ人も出てくる年齢であろう。

しかし、俺は就活に失敗し、大学を出た後も特に社会貢献に役立つ訳でも無く、ただ時間と惰眠を貪っていた。

最初は自分は他人と違っていたことに焦りを感じていたが、今となっては何も感じない。IT系の会社を目指していた。入りたかった。

あって欲しかった未来は見るも無惨に砕け散ったのだ。ニートである。

そんなニート君は実家暮らしでお小遣いも貰えるわけで、今日発売のカードBOXを買いに行くつもりだ。本当はネットで買いたかったのだが、予約5分で完売となり、なくなく外に買いに行く事になってしまった。クソが。

外に出る事に特段恐怖を感じることは無いが、いかんせん大学卒業から外出をしなかった所為かぼんやりとした不安が胸をキュッと絞める。

陰キャ専用といった感じの黒いズボンと白い無地のシャツに鼠色のパーカーを羽織った。気分が良くなってしまった。ウキウキと家の扉を開け、無駄に明るい光を放つ下界に飛び出した。

しくじった。6年近く外に出ていない体が太陽の光に打ち勝ている程の防御力を持っている訳がなっかた。日差しが俺の肌をパーカーの上からでも突き刺してくる。

今すぐにでも家の中に入りたいと思ったが、やはりカードが欲しい。

重い足を振り回しカードショップの方へと向かう。


 信号機が青になった。道路に書かれた白線しか踏まずに横断する。俺はガキだ。

いや、ポジティブに言えば楽しみを見出すのが上手いのだ。そうだ。そうに違いない。28歳で子供らしいのは流石に自分でもキツい。

しかし、都会には何故こんなにも信号が多いのか。俺の視界の見える範囲では5メートル間隔で横断歩道と信号が見える。ざっと10人位が同時に異世界転生することが出来そうだ。異世界転生か、、、、出来るものならしてみたいものだ。

また信号で止まる。この無駄な時間はイライラする。スマホを手に取り、ソシャゲを開く。ログボを受け取り、素材周回をする。楽しい^^。


突然だった。後ろから背中が押された。

前の方でスマホに夢中になっていた俺は道路に出てしまった。気づいた時の眼前にはただの乗用車が前にいた。

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 気が付けば、そこには真っ白な空間が広がっていた。

死んだのか。つまらない死に方をしてしまったものだ。引き篭もりの体は車に轢かれると死ぬぐらいには弱いらしい。

まあ、未練も未来も無かった人生だ。思いの外、悲しいという気持ちは湧いてこなかった。

それよりもこの空間は何なのか。

普通ならここから神が出てきて異世界転生をするはずなのだが、、、、、神の様な存在は見えない。

座った体を立たせて、辺りを散策するが何も見当たらない。いや、1つあった。

白いキューブだ。周りが白いのに白くするのは馬鹿だろ。

これ触っていいものか。触ると中に閉じ込められる呪物かもしれない。もしくは、トリガーオンしちゃう奴かもしれない。それならいいな。

触ろうか。触らないか。触ろうか。触らないか。

触ろう。

白いキューブを手に取った。これは!何もない。重くも、軽くもない。硬いな。


急に白いキューブから白い光が放ち始めた。フェイントかけてくんなよ。

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ま、まぶちい。

瞼を開けるとそこには。稚児の俺の体を抱く両親の顔、、、、、ではなく。

中世ヨーロッパ風の街並みが広がる異世界、、、、、という訳でもなく。

血溜まりが広がる知らない学校の校舎裏であった。








 








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生まれ変わって推理する さかもと @sqkqmoto_yuuya0209

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