第3話 敵勢力との初戦闘

封印の神殿に着いた時、既に戦いは始まっていた。


『きゃあああ!』


神殿を守っていた神官たちが、魔王軍に攻撃されている。


「ひどい……」


俺は拳を握りしめた。こんな一方的な暴力、許せない。


『健太くん、行くわよ!』

「はい!」


俺たちは神殿に駆け込んだ。


「そこまでだ!」


俺が叫ぶと、魔王軍の兵士たちが振り返る。


「なんだ、小僧か」

「放っておけ」


兵士たちが俺を無視して、再び神官を攻撃しようとする。


「させません!」

ソラが光の矢を放つ。兵士の一人が吹き飛んだ。


「なに!?」

「勇者の力だと!?」


兵士たちがざわめく。ソラの勇者姿を見て、慌てふためいている。


『皆さん、下がって!』

ソラが神官たちを守るように前に出る。その姿は、まさに正義の勇者だった。


「おい、あの女が勇者らしいぞ!」

「隊長を呼べ!」


そして現れたのは——


「ほう、勇者とな?」


黒い全身鎧に身を包んだ大男。明らかに普通の兵士とは格が違う。


『あなたは……』

「俺は魔王軍四天王の一人、『破壊の騎士ガルム』だ」


ガルム……なんか強そうな名前だ。

「小娘、その力を魔王様のために使え。さもなくば——」

『断ります!』


ソラがきっぱりと拒否する。かっこいい!


「ふん、では力ずくだ」


ガルムが巨大な剣を構える。魔法の力で剣が黒いオーラに包まれた。


「うわあ、あれやばくないですか?」

『大丈夫よ、健太くん。あなたがいれば——』


その時、ガルムが瞬時に間合いを詰めてきた。

「速い!」

『きゃあ!』


ソラが辛うじて回避するが、マントが切り裂かれる。


「つええ……」

今までの雑魚とは明らかに違う。これはピンチだ。


『健太くん、どうしよう!』


ソラが不安そうに俺を見る。こんな時、俺はどうすればいい?

そうだ、俺の役目は応援することだ!


「ソラちゃん!」

俺は大声で叫んだ。


「ソラちゃんなら絶対勝てる!俺が信じてる!世界で一番強くて、可愛くて、優しいソラちゃんに勝てない敵なんていない!」

『健太くん……!』


ソラの体が光に包まれる。さっきより強い光だ。


『やあああああ!』

ソラの放った光の矢が、ガルムの鎧を貫いた。


「ぐわああ!まさか、この俺が……!」


だが、ガルムはまだ立っていた。


「小僧……貴様、何者だ?」

「え?」

「その金の力で少女を強化するとは……まさか貴様、『聖なる投資者(ホーリーインベスター)』か?」


聖なる投資者?課金勢の異世界版かな?


『健太くんが聖なる投資者?』

ソラも驚いている。


「面白い……だが、これで終わりだ!」


ガルムが最大の攻撃魔法を詠唱し始める。剣に黒い炎が宿る。


『危険!みんな逃げて!』


ソラが必死に神官たちを守ろうとするが、一人では限界がある。


「くそ!」


俺はポケットの中のお金を数えた。洞窟で稼いだ金貨と銀貨で、合計30枚くらいある。でも全部使ったら今夜の宿代が……

いや、今はそんなことを考えてる場合じゃない!


「ソラちゃん、これが俺の覚悟です!」


俺は金貨を20枚、空中に投げた。


「金貨20枚の虹スパチャ!ソラちゃん、お願いします!」


その瞬間——

『健太くん……そんなに……』


ソラと俺の周りに、投げたお金が虹色の光の粒子となって舞い踊る。これが虹スパの力だ!


『これは……』

「『聖なる大投資(ホーリーメガドネーション)』だと!?」


ガルムが驚愕の声を上げる。

光に包まれたソラは、もはや別次元の存在に見えた。天使の輪が大きくなり、背中に光の翼が現れる。


『健太くん、ありがとう。あなたの想いが、お金に込められて、私に力をくれる』

「ソラちゃん……」


これが俺の異世界での真の力。推しに課金し続けること。それが魔法になるなんて、最高じゃないか。


『いくよ、健太くん!』

『『合体技——虹色投資波(レインボーマネーバースト)!』』


俺たちが同時に叫ぶと、神殿全体を包むほどの巨大な虹色の波動が発生した。

俺たちが同時に叫ぶと、神殿全体を包むほどの巨大な光の波動が発生した。


「うわああああああ!」


ガルムと魔王軍の兵士たちが光に飲み込まれ、消滅していく。


「馬鹿な……この俺が……こんな小僧に……」

ガルムが崩れ落ちた。


「やった……勝った!」

俺とソラは抱き合って喜んだ。


『やったね、健太くん!』

「ソラちゃんのおかげです!」


神官たちも駆け寄ってくる。

「ありがとうございます!ソラ様、そして聖なる投資者様!」


聖なる投資者様って、課金勢の称号みたいで恥ずかしいな。


「あの、俺はただの——」

『健太くんは私の大切なパートナーよ』


ソラがにっこり笑う。パートナー……推しにそんなふうに言われるなんて。


「それより、封印は大丈夫なんですか?」

俺が神官に尋ねると、老神官が頷いた。


「はい、おかげ様で魔王の復活を阻止できました」

「魔王の復活?」

『そうなの。実は封印の神殿には、古代に封印された魔王の力の一部が眠ってるの。それを集めれば、魔王が復活してしまう』


なるほど、それで魔王軍が狙っていたのか。


「でも、まだ他にも封印の場所があるんでしょ?」

『うん……全部で七つの封印があるの。今回は一つ目を守れたけど……』


つまり、俺たちの戦いはまだ始まったばかりということか。


「大丈夫です」

俺はソラの手を握る。


「俺たちなら絶対に世界を救えます。だって——」

「だって?」

『健太くんと一緒なら、どんな困難も乗り越えられるもの』


ソラが俺の言葉を先に言ってしまった。


「そう、それです」

俺たちは微笑み合う。


こうして俺たちの最初の大きな戦いは終わった。でも、これはまだ序章に過ぎない。

魔王軍は他の封印を狙って動き出すだろう。そして俺たちは、それを阻止しなければならない。

だが、俺には不安はなかった。

なぜなら、俺の隣には世界で一番大切な人がいる。

推しが——いや、もう推しという関係を超えた存在が、一緒に戦ってくれる。


「ソラちゃん」

『なあに?』

「次はどこに行きますか?」

『そうね……二つ目の封印は「氷の神殿」にあるの。でも、そこは氷の魔物がたくさんいる危険な場所よ』

「なら、防寒具が必要ですね」

『ふふ、健太くんって準備がいいのね』

「当然です。推し——じゃなくて、大切な人を守るためなら、どんな準備でもしますよ」

『大切な人……』

ソラが頬を赤らめる。

『ねえ、健太くん』

「はい?」

『私たち、いいコンビよね?』

「最高のコンビです」

『ずっと一緒にいられるかな?』

「もちろんです。俺は、ソラちゃんの一番のファンですから」

『ファン……そうね、ファン』

なぜかソラの表情が少し曇った。何か間違えただろうか?

でも、すぐに笑顔を取り戻す。

『ありがとう、健太くん。私も、健太くんの一番のファンよ』

「え?」

俺のファン?推しが俺のファンになるって、どういう状況だ?

でも、悪い気はしない。むしろ最高だ。


「よし、じゃあお互いのファン同士、世界を救いましょう!でも……」


俺はポケットを確認した。残り10枚くらい。


「次の戦いまでに、もっとお金を稼がないといけませんね。宿代もあるし」

『雑魚狩りね!でも、健太くん、あまり無理しないで?』

「大丈夫です。虹スパは滅多に使いませんから。基本は白スパと黄スパで行きます」

『白スパ、黄スパ?』

「スパチャの色分けです。金額によって光の色が変わるんです。虹が最高額で最強です」

『ふふ、健太くんって本当に詳しいのね』

こうして俺たちは次の目的地、氷の神殿に向けて旅立つことになった。

だが、その道中で俺たちを待っていたのは、予想もしない出会いだった。

そして、ソラの心境に変化が生まれ始める——

彼女は俺のことを、本当に「ファン」として見ているのだろうか?

それとも……

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