第15話「合宿(旅行)へ行こう」
まばらな蝉時雨に、太陽は地上を煌々と照らして、今にも融けて液体となって流れ出しそうだな、などと思う夏。なんだか毎年そんなことを思っているような気がする。シャツの襟をぱたぱたとやって風を入れてみても、はなから空気も灼熱地獄のようなれば、さしたる涼しさも感じられない。
午前九時、二鷲高校裏門前。それがこの合宿の集合場所だった。部長である相川が懇切丁寧にまとめたPDFには行先も行程表も何も載ってはおらず、合宿の日程に関してあるのはそのたった一つの情報だけだった。よくもまあこんな杜撰な計画で合宿など許されるものである。
適当なTシャツと短パンというラフな恰好でリュックを背負った明良は、八時半ごろに学校の最寄りに到着した。夏の暑さは着々と明良を蝕み、ただ学校まで歩くというそれだけのことで明良の服をビシャビシャに濡らした。そもそも外出が久々なことも、こうなった要因の一つだろう。もっと外に出て身体を暑さにならしておくべきだったのかもしれない。
「あ、おはようございます」
まだ集合時間までは十五分くらいあるというのに、すでに相川一人を覗いて学校に到着していた。
「明良くん、薄着ですね」
近づいてきた奏はそう言って近づいてきて、そっと明良の身体に指先で触れる。
「おいこら」
「明良くんがそんな恰好してるのがいけないんですよ」
汗でぺったりと張り付いたTシャツの上を、奏の指がなぞる。もう少しで乳首に行こうかというところで、はたと奏は我に帰った。
「あの、えっとですね、その、私も浮かれてるみたいです、みんなの前で……」
何が明良の目の前で起こっているかは見えていないだろうが、しかし福島の怨念のこもった目線がなんとも痛い。
そういう奏も薄着は薄着で、白い薄手のワンピースをおへそあたりでベルトで絞っており、少しでも濡れれば透けそうな有様であった。珍しく髪型もポニーテールで、白いうなじがなんともまぶしい。
「それにしても、暑いですね」
「八月半ばだしな」
「嫌になっちゃいますね、まったく」
そう言って奏は、明良を日よけにして少し前のめりになって膝に手をつき、明良の顔をくっと見上げた。
「谷間見えてんぞお前」
「谷間くらいどんだけ見ても減りませんよ。存分に見てください」
「一回落ち着けお前」
九時を少し過ぎたころ、裏門の前に一台のデカい乗用車が止まった。助手席から、相川が降りてくる。
「いやーごめんごめん、意外と道混んでて。まあ乗ってほら」
相川が車の後ろのスライドドアを開ける。運転席と助手席の後ろに、二席ずつ三列座席が並ぶ、定員八人のデカい乗用車だった。
「運転手は今年も勿論佐山先生でーす」
「暑いから早く乗ってね」
ちょうど車道に近い場所にいた明良と奏から、どんどん車に乗り込んでいく。明良と奏が一番後ろの席、その前には木村と松本が乗り、最後に乗った福島と三橋が出口の一番近くに座る。相川はここへ来たときと同じように助手席に座った。
「じゃあ行くからね。どこに行くかは着いてからのおたのしみ。今年度の演劇部合宿、はじまり~!」
車は勢いよく発進する。交通手段は書いていなかったが、勝手にバスでも手配するのだろうと思っていた明良は、佐山の運転するこの車にやや驚きを隠せない。それは隣に座る奏も同じようで、ふと奏の方を見れば、奏もまた明良の方を見るところだった。
「まさか普通に佐山先生の運転とは」
「あの人の運転大丈夫なの?」
「まあ、大丈夫だから毎年あの人に運転してもらってるんでしょうけど……」
車は市街地を通り抜け、大通りに出る。
「なーんかちょっと不安だよなぁ」
一行がまずはじめに立ち寄ったのは、埼玉県は羽生PAだった。到着と同時に相川がトイレへ走り、それ以外の面々もなんとなく立ち上がって車を後にする。唯一運転手の佐山だけは、そこから動かない。出発前に買ったらしい珈琲をちびちびと飲んでいるばかりである。
「みんな行っちゃいましたね」
「俺たちも行くか」
「そうですね」
奏と二人で駐車場に降り立つ。
「あっつ、サウナかよ」
「いやー、あついですね、これまた」
「こんな暑いと服なんて着てらんねぇな」
「脱いでもいいですよ」
「俺が脱いだらお前も脱げよ」
「さ、さすがにこれだけ人がいるところでは……」
「お前に恥って概念が残っててよかったよ」
建物の中に入れば、強めの冷房で一気に身体を冷やしてくれる。ふう、と二人でその涼しさに息をこぼせば、すぐに近くのパン屋から漂う小麦のいい匂いが鼻腔をくすぐる。
「いいにおいですね」
「なんでこう、こういうところのパン屋って普通のパン屋よりも美味しそうに感じるんだろうな」
「やっぱり旅行中っていう特別感がいいんですかね」
そのまま食事がとれるコーナーを通り過ぎれば、でかでかとコンビニがそこには鎮座している。特徴的なのはやはり、建物自体の主導線側に高々と積まれたお土産の山だろう。東京、埼玉、千葉あたりのお土産が並ぶ。
「やはりパーキングエリアといえばわりと広い範囲をカバーしてくれるお土産屋さんですね」
奏はそういって、そのうちのひとつを手に取った。なんでも、ネギが入ったカステラらしい。
「うまいのか? それ」
「さあ、わかりませんけど……」
商品を戻して、店内へ。奥は普通のコンビニとさほど変わらない。
「あ、そうだ、飲み物買わなくちゃ」
奏はそうつぶやいて飲み物の棚から無糖の紅茶を手に取って、レジの方へ進んでいった。
「俺もおやつでも買うか」
奏とはトイレで一旦わかれた。明良はさっさと小用を済ませ、そそくさと車に戻る。こんな暑いところにいられるか。
車に戻ると、すでに奏以外の面々はそろっていた。座席はもうこれで決まっているらしく、みんな最初に座った場所にちゃんと座っている。乗り込むために福島の上を跨いで、座席の間に置かれた鞄類もまた跨ぎながら一番後ろの席になんとか座る。奏が来ると、明良のときとは違って、福島はちゃんと一度降りて奏のことを通していた。
――じゃあ俺のときも降りろよ。
奏がそろったことで、再び車は高速に進入した。それからさらに車で揺られること二時間半、一行はとうとう目的地近くに到着した。ここまで来れば、目的地もわかるというものである。なにせ、高速を降りた時点でその地名は目に入るのだから。
「日光、ですね、完全に」
奏が、「日光・鬼怒川温泉」と書かれた車向けの青い看板を見てつぶやく。
「ふふふバレちゃあしょうがないね。そう、今回の合宿の行先は日光! 演劇部諸君! 遊ぶよ!!」
助手席から、相川がやたらでかい声でそう宣言する。明良たちのすぐ前に座る木村と松本の二人だけが、小さい声でおー、とそれに応えた。
「なんか、もしかしてあんまり?」
「小学校のころ一回来たきりだな、日光」
「私もですよ。ところでなんで小学校の修学旅行って日光なんですかね」
「さあ」
「まあまあまあまあ、とりあえずこれから宿に向かうからね。この合宿の目的は経験をつけること。つまり楽しむことこそが最大の目的! 明日から存分に楽しむために今日は早めの宿でゆっくり休もう!」
午後二時を過ぎたころ、ようやく一行は三泊を共にするホテルに到着した。よくある所謂普通のビル型のホテルだった。運転手である前に引率の教師であった佐山と相川の二人がチェックインをしている間にそこそこ豪華に飾り付けられたエントランスを抜け、すぐ先のロビーで二人を待つ。
二人掛けのソファに座った明良の隣には、当然のように奏が座った。
「完全に旅行気分ですね」
奏はそう言って、ポケットからスマホを取り出すと、幾らかパシャパシャとホテルの写真を取ってから、今度は明良にカメラを向けた。
「俺なんか撮ってもなんもないぞ」
「記録ですから、意味はあります。単なる記録です。ほんとですよ」
「でも正直オカズにくらいは普通にしてると思うけどね」
背後から響くアルトボイス。声の主は三橋。
「ッ!?!?」
それに、あからさま過ぎるほどに奏は動揺を隠せていない。ちょっとびっくりした明良が馬鹿に見えるほどのびっくり具合、今しも額には汗が浮かびはじめ、あっ、おっ、などと声にならない声を口から漏らしている。
「お前、マジか」
「あ、明良くんだって私のことオカズにしたことくらい、あるはずです」
「いや別にそりゃあるけど、それとこれとは話が違うだろ」
「違うねぇ」
三橋が面白いおもちゃを手に入れた子どものように、奏に満面の笑みを浮かべて手を伸ばす。その手は奏の身体を走り、双丘の頂点に達するとくいっと指を遊ばせた。
「んっ、ちょ、ちょっと!」
「いやー、これから合宿だからさ、しづらいじゃない? どうなるかなって」
「どうなるかなってじゃありませんよ!」
もう、と言いつつ、奏はパンパンと顔を両手で叩く。
「全部発散してからきたんですから、しばらく大丈夫ですよ、ふん」
――全部発散してからきたのか。
明良の脳内に、布団に包まって痙攣する奏の姿がぼんやりと思い浮かぶ。
――いかんいかん。
「明良くん、なんですか」
「いや、別に」
まさか、どんな感じでしてるのか考えていた、などとは言えまい。
「やっぱり写真見ながら指で?」
明良には。そう、ここには無敵の女三橋がいるのだ。忘れてはならない。こいつはホテルに連れ込んでくるような男が好きな女なのだ。
「深掘りするんですか⁉」
「いや、ちゃんと教えてあげないとアッキーがオカズにできないでしょ」
――いつのまにアッキーなんて呼んでるんだ、こいつ。
「え、えっと、まずは服を着たまま上下同時に愛撫から初めて……」
「お、おい、無理して言わんでいいぞ」
「そ、その、服は脱がないで、着たまま手をパンツに入れてですね、あの」
「おい誰かこいつの口塞げ!」
「アッキーが口で塞いだら? ほら今聖女様は目がグルグルしてるから、唇を奪うチャンスだよ」
頭から煙でも吹き出しそうな勢いの奏は、いまだぼそぼそと自分のルーティンを語り続けている。
「あれ、なんでかなちゃんそんな真っ赤な顔してんの?」
「きゅ、救世主ッ!」
チェックインを終えた相川と佐山がやってきて、ようやく奏は我に返ったらしい。茫然とした表情のままふらっと明良のほうへ倒れ込む。そのまま明良の太腿に顔面を埋めると、消え入りそうな小さな声でぽつりと呟いた。
「もう明良くんに嫁ぐしか……」
――お前がそれでいいならな。
奏に水を飲ませ、ちょっとメンタルも回復したころ、ようやく佐山が口を開いた。
「あ、そうそう、宿でのことね。えっとね、ワンフロア丸々貸してくれたから、とりあえずそこへ行きながら話そうか」
その声にしたがって、みんな立ち上がる。
「明良くん、起こして」
限界を迎えた奏を起き上がらせていると、既に進み始めた一行の中から、福島の鋭い視線を感じた。なんという眼力であろうか。
「おおこわ」
「彼もまた聖女教会の構成員らしいですからねぇ」
さっきまでの恥ずかしそうな様子はどこへやら、普通な顔をした奏は、福島の後ろ姿を見ながらそう言った。
明良たちが泊まる部屋は別館にあるらしく、最初に入ったロビーのある本館を右へ左へくねくねと曲がりながら進み、屋根の無い吹き曝しの通路を歩いたところの通用口みたいなところから中に入った。真っ直ぐ進んだところには別館の今は使われていないロビーらしきスペースがあって、その手前右手に一機だけエレベーターが設置されている。五人か六人くらいしか乗れないくらいの小さなエレベーターに二回に分けて乗って五階に上がれば、少し開けたフロアが明良たちを待っていた。
「そういうわけで、五階のワンフロアは丸々使っていいからね。まあ他の階は一般客なわけだから、階段の近くでは騒ぎすぎないようにってところかな。あとはまあ、ちゃんと手順を踏むなら別に宿の施設は自由に使っても構わないからね。なんか、卓球とかしたかったらしてきていいから」
あとは、ともらった紙を見ながら、佐山は早く休みたいと言わんばかりに早口で説明していく。
「部屋はまあ適当にみんなで決めていいけど、一応言っとくけど、とりあえず本番行為は禁止ね。ヤるならバレないようにね、せめて部屋の中で二人でヤってね」
明らかに佐山はこっちを見ていた。
――なんだと思われてるんだ。
「あと風呂か。風呂は部屋にはなくて、この階の中浴場みたいなやつ貸切の形だから、適当に時間割り振って入ってね。別に入りたきゃ男女で入ってもいいけど本番行為は部屋に戻ってからにしてね、風呂場は清潔に」
――さっきと言ってることが違うじゃねーか。
「ま、そんなとこか。じゃあ休むからね、なんかあったら呼んで」
それだけ言った佐山は、一番近い部屋に吸い込まれていった。
「じゃあまずは部屋割りを決めようか。部屋はいちにい…………五部屋だね」
フロアの中央にはテーブルがあり、それを挟んで二人掛けのソファが二つ向き合う形で置いてある。そのテーブルを中心に、四方に客室の入口があって、部屋から出てみんなで過ごす、みたいなものを想定しているように思われる。談話スペースといったところだろうか。
テーブルの上に鍵を並べて、相川がぐるりと部屋を見回した。
「えーッと、そこが一番でかい部屋だから私たち三人で使うとして、あとはどうする?」
「三人一緒でいいんですか?」
「私たちは仲良しだからね」
ふん、と相川が胸を張る後ろを、荷物を抱えた松本と木村が通り過ぎて部屋に吸い込まれていく。扉はすぐには閉まらず、再び出てきた松本が相川の荷物を抱えてまた部屋に吸い込まれていった。
「えーっと、もう適当でいい? 向こうからかなちゃんアッキーくおん福島! で私たちの部屋ね」
パッパと指で示した相川も、じゃそういうことでと言うととっとと部屋の中へ吸い込まれていく。
「どんだけ休みたいんだ」
「心寧ちゃんは、昨日の夜ほとんど寝てないはずなので……」
――そりゃ寝たいわ。
福島は何も言わずに指定された部屋の鍵を取ってそこに入っていくと、しれっとその後ろを三橋が入っていった。
「アレありなのか?」
「まあいいんじゃないですか、そういうことだってありますよ」
奏はそう言うと、自分の荷物を持って、鍵を二本手に取った。
「さ、私たちも行きますよ」
奏に手を引かれ、明良も自分の指定された部屋に二人で入る。
「ん?」
「どうかしたんですか」
「お前ここで寝るの?」
「はい、ここで寝ますよ。同衾です」
あっけらかんと奏は言って、どさっと床に荷物を下ろした。
「お前今日マジでなんでもアリだな」
明良がそう言えば、奏は明良に近づいて、明良の胸を右手の人差し指でとんと突いた。
「明良くん、もはや私は今無敵です。何でもできますよ。今晩は同じ布団で寝ましょう」
「あとで後悔しそうだな」
「まあまあ、とりあえず、浴衣にでも着替えましょう」
奏はクローゼットを開けて、中にかけてあった二組の浴衣を前に掲げた。その片方を明良に手渡すと、自分はそれを二つあるベッドのうち近い方に寝かせ、純白のワンピースのボタンに手をかける。
「おいおい」
「いやね、明良くん、思うんですよ。今更じゃないですか?」
奏はそう言うと、なんの躊躇も無くボタンを外し始めた。はらりとワンピースが床に落ち、すっかり肌着姿になった奏は明良のほうへ歩いてくる。白い肌着の下には黒いレースの下着が覗く。
「明良くんもほら、着替えましょうよ」
一歩、また一歩と明良に近づいてきて、そして顔をぐいと近づけられる。
「脱がせてあげます」
奏が、明良のTシャツの裾に手をかける。そのままゆっくりと持ち上げられ、腕を持ち上げられて、首を通り、そして、脱がされる。肌着もまた同様に。そして次に、ズボンを下ろそうとして――
「あら……」
「流石に、仕方ないだろ。おい、じろじろ見るな、おいこら」
「じゃあ写真とか撮ってもいいですか?」
「ダメだろどう考えても」
「む……。はあ、仕方ないですね。そんなに恥ずかしいなら後ろ向いて着替えてもいいですよ」
「なんでお前が譲歩したやったみたいになってんの?」
色々思うことはある。だが背に腹は変えられない。このまま奏に着替えさせられてみろ、少しでも触れられようものなら爆発してしまいそうな有様である。流石にそんなことはないと信じたいが。
ズボンを脱ぎ、自分の浴衣を手に取り、浴衣に袖を通す。
――右が前? 左が前? どっちだっけ。
ついこの間お菊の皿をやったときに着方を教わったというのに、もううろ覚えになってしまっている。人間、あんまり興味のないことへの記憶など持たないものだな、などと考えていれば、ようやく明良の明良も収まりがついてくる。
背後では奏がまだ着替えているようで、しばらく衣擦れの音が続いた。
――で、どっちが前だ……?
「右前ですよ、明良くん」
「右? 右ってこっち?」
「逆です」
すっかり綺麗に浴衣を着た奏が、明良の着物に手をかける。
「これで押さえててください」
すっかり綺麗な状態に作って、明良が腰のあたりを左右で押さえている間に、さっと帯を巻いて結んでしまった。
「ありがとう」
「いえいえ、慣れないと難しいですからね」
奏はそう言うと、にっこりと笑った。
「それじゃあ改めまして、これから三泊、一緒によろしくお願いします」
「あ、ああ。よろしく」
――ていうかちょっと待て。
「これじゃ部屋が余るんじゃ……」
「まあ、いいんじゃないですかね? 困りはしないでしょうし。それに、予備って大切ですよ」
奏はそう言うと、椅子にちょこんと座った。猫背になると胸元がゆるんで、隙間から谷間が覗いて大変よろしくない。
「そうだ、ホテルの探索でも行きませんか? まだ晩御飯までは結構時間ありますから」
「ああ、いいな。行くか」
「はい、行きましょう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます