図書館問答
端木回
表 文芸部 11月活動日誌
さて、これより語りますのは、ある日の文学部の活動でございます。
ご存知の通り、我らが文学部は品行方正かつ清廉潔白でありながら、横暴にも生徒会より活動場所を奪われては、この3日間は図書室で活動をする日々にございました。
しかして、図書室とは静謐を保つべき場所なれば、無音にての活動が求められること甚だしく、適切な部活動は困難を極めていた次第です。
これは文学部も遂に解散かと、積年の歴史に終止符を打つことを考え、第48代部長として、苦悶の日々を過ごしていたところ、私の元を訪れたのは、生徒会の書記にございました。
この書記と私の因縁は生徒会のお歴々には言うに及ばず、犬猿の中でございます。
もっとも常なるは彼女の一方的な逆恨みゆえに、私といたしましては一片の隔意もございませんが、この日だけはそう言うわけにもまいりません。
何故なら、規則を悪用し、文学部から部室を取り上げたのが彼女だからです。
釈迦に説法ではございますが、部活規則の第3条は次のとおりでございます。
『5名の学生の在籍と1名の教員の顧問を以て部活とする』
確かに文学部は少数精鋭ではございますが、確かに5名の学生が在籍しております。
それをあろうことか、
「猫は学生じゃないでしょ」
などと、我らが2年6組の一員にして、文学部の新入部員であるコインの学生権を停止させようとする始末。
さらにはそれを以て、部活ではないのなら、部室はいらないと部室を取り上げたではありませんか。
たしかにコインは猫なれど、その類稀なる頭脳と美貌で正式な学生証を発行されている学生でありますれば、その肉球で判を押された入部届は認められて然るべきもの。
さすれば、先輩が引退し、部員が4人になった文学部に一匹が加わり、併せて5名となるところを先の言葉です。
つまるところ、私と書記は冷戦状態でございました。
そのようなところに、彼女は、
「あんた、何をしたの⁉︎」
などと、頭ごなしに怒鳴りつけてくるわけです。
見に覚えのない私は、まさか図書室で声を出して、応戦するわけにもいかず、沈黙をしていました。
すると、続けて、
「無視するんじゃないわよ!」
とさらに大きな声を出したわけで、司書さんから注意を受けておりました。
これだけなら、まだ良いものを、声を出すことをやめて、私を指差し、天井を指差し、続けて指でバツを作りました。
正直何を言いたいのか分かりませんでしたが、天井を指差し、怒っていることから、この前の屋上での打ち上げ花火事件を怒っているのでしょう。
つまり、『お前達は屋上で許されないことをしただろう』と言いたかったのだと思います。
しかし、あの打ち上げ花火は、我々文芸部ではなく、奇術部の仕業でございます。
濡れ衣も甚だしいジェスチャーに対して、私もジェスチャーで答えます。
つまり、私は手をパッと開き、10円玉を袖口から取り出すマジックを見せて、ハートマークを作り、『花火は奇術部だ』と教えてやった次第です。
すると、手を合わせて、私を拝み出すではありませんか。おそらくではございますが、「愚かな私めに主犯をお教えください」と言いたかったのでしょう。
そうともなれば、長い付き合いの私と書記。怨みこそあるものの、生徒会に協力するのは一学生の義務であり、友人の過ちを正すのは義であると思い、自分の胸に手を当て、人差し指で書記を指差し、両手で木を型取り、下を指差すことで、『私の友達の木下だ』と涙ながらに、友人を差し出しました。
それを受けて、彼女は哀れな木下を尋問に行くのでしょう。大慌てで、走り去っていったのでございます。
そして、次の日、つまりこれを書いている本日のことでございますが、昨日の書記は一体なんだったのかと訝しんでおりましたところ、
「あんたのおかげで助かったわ。確かにコインは学生ね」
などと前言を翻し、部活動許可証と、部室の鍵を渡してきたわけです。
おそらく、打ち上げ花火事件を解決した功績に便宜をはかると言うことでしょう。
上から目線は業腹ではございますが、一学生として生徒会には逆らえぬ身。
私は無言でそれらを受けとりました。
かくして、私は各部の義務である活動報告書を懐かしき古巣にて書かせていただいているわけです。
これにて文学部の11月の活動報告とさせていただきたいと思います。
どっとはらい。
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