大学2年目

大学2年目、旅行に行った。

2人っきりの旅行だ。

どこに行こうか、必要なものは、旅費は、色んなことを彼女と相談して決めた。

彼女と顔を突き合わせて、あーでもないこーでもないと話すのはとても楽しくて、行く前なのになんだが、すでに旅行した後のような気分だった。

旅行当日。僕達は近所の駅前で集合した。


「ど、どうかな……?」


彼女はモジモジと恥ずかしげに、お腹の前で両手を擦り合わせながら聞いてきた。

僕はなにも言えなかった。いや、正しく言うのなら見惚れていた。

ーー女神がいる。

今日の彼女の服装は、今までのイメージを覆すとても可愛らしい服装だった。

普段は似合わないからと、絶対に着ない白のブラウスに、その上から纏う淡い黄緑色のキャミワンピース。お団子ヘアーは解かれ、整えられたロングヘアーが風に吹かれて靡く。


「に、似合わない、よね?」


落ち込む彼女をまえに、僕は自然と言葉が漏れる。


「可愛らしくて見惚れてたんだ……」

「え?」

「うん。女神が現れたかと思ったよ」

「めがっ!?」

「普段は絶対にしないよね。僕のために無理してくれたんでしょ?」

「え、あ……ぅん」


彼女は恥ずかしげにうつむき、うなずく。


「ありがとう。でも、無理しないで。僕は、ありのままの君が好きなんだ」

「うん、知ってる」


その声はハッキリと発音された。

うつむいていた顔が持ち上がり、僕を視界に収める。とても優しい笑みだった。僕を見るその眼差しは愛おしげで、それでいて、吸い込まれそうなほど魅力的だ。

幸せを噛みしめるようにぎゅっと閉じられた口が開く。


「だからこそ、見合う彼女になりたい。誰にもバカにされない。逆に羨ましがれるぐらい立派な彼女に」


そのために頑張ってみたんだと、彼女はそう語る。

口から小さく笑い声が漏れる。

何度も「うん」と呟く。

ーーああ、どうしよう。我慢できそうにない。

必死に堪えるのだけど、漏れでた感情が身体を震わせる。

様子のおかしい僕を見て、彼女は頭にクエスチョンマークを浮かべる。


「あ、ああーー。少しだけで良いんだ。ぎゅっと抱きしめて良い?」

「えっ? ………ここで?」


彼女はとても戸惑った様子だ。

周囲を見回す彼女の視線の先には、何十人もの人が行き交っている。


「さ、さすがに恥ずかしいからダメ。や、宿に着いた後なら、い、良いよ?」


顔を赤らめながらも、僕の耳にそっと顔を近づけて妥協案を提示する。

ーーそれがどうして悪手だって分からないかな。


「うひゃ!?」


耳元で響く可愛い悲鳴。周囲から感じる視線。僕はそれらを無視して、腕の中にある愛しい彼女を強く抱きしめる。


「好きだよ。一番。愛してる」

「あ、あ、あ、あ、あーーーーーーあっ」


彼女はオットセイみたいな声を発して気絶した。

僕はこれを好機と見て、お姫様抱っこを敢行。意識を取り戻した彼女はその光景を前にまた気絶した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る