ニセカイテンイ

音々音

立志編

第1話 喜劇

いつも通り昼の一時に目覚めた。


「さあて今日は何で抜こうか」


目覚めて一言目がこれである。

我ながら終わってるな。

そんなのテントを立てている息子の前では言えないな。

さて、俺の右手が火を吹くぜ!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


俺はなんと惨めなのだろうか。

いや気にしないでくれ、いつものことなんだ。うん。


今日は久しぶりに気分がいいから外に出てみようと思う。

そういうことを考えてリビングへ降りてみると親がいない。


車はあるので地域の集まりかなんかが歩ける距離であるのだろう。

そういや妹もいないので連れて行ったのだろうか?

とりあえず後輩へ電話をかけよう、考え無しで外に出てもすることがなさすぎて暇で暇で仕方がないだろうからな。


プルルルルル、という音が15コールなったあとに

「応答なし」

と出てきた。まあいつものことだから気にしない。


もう一抜きしようと階段を上がろうとすると電話が鳴った。

液晶に現れた文字を見ると「ホムラ」と書かれていた。

まあ珍しくはないがこいつが特に用もなく(覚えがないだけ)かけてくるのは久しぶりだな。


「もしもし、どうした?」


『もしもし、碧か!?今から学校まで来れるか!?』


「おお、どうしたんだよ急に。別にいいけど何をそんなに焦ってるんだよ」


『今は説明してられないんだ!とりあえず学校で集合だ!いいな!?』


「わかったよじゃあ切るぞ?」


『あ待ってくれもう一つ言いたいことがある!』


「何だよ忙しいやつだな」


『車で来てくれ、できるだけ食料も持ってだ!頼んだぞ!』


「は?おい待てよ」

のは?のとこで通話が切れた。何を行っているんだあいつは、違法じゃねえか。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


とりあえず母さんにバレそうなぐらいの食料を持って学校を行くことにした。

移動手段は車か、自転車。

親には怒られたくないから自転車が妥当だと思う。てか普通はそう。

けど成長しきった豚みたいな大きさのこのバッグを自転車で持っていけるかというと悩むところだ。

学校につく頃には俺は息が絶えているだろう。


───となると、車か。

俺は家で使っているヴォクシーとワゴンRを見る。

運転はできる。叔父さんに教えてもらったからな。

ただ道路ではもちろんできない。したことがない。

俺は悩みに悩み、その途中であることに気付いた。


静かすぎる。

ここは田舎だから静かなのはいつものことだ。

だが今日はその比じゃないぐらい静かだ。無の中にいるみたいな感じ。

車も走っていない。いつも畑いじりをしているおっちゃんもいない。


「まさか」

俺はそこまで考えてある結論を出した。


───あり得ない。ありえないんだそれは。

もしかしてだ、まだ「もしかして」なんだ。そんなことはただの妄想だ。

でもホムラの慌てようを見るに、『車に乗ってこい』という言動から考えるに、この結論しか出ないんだ。


炎はルールは守るやつだ。

俺が「煙草吸おうぜ」なんて冗談で言おうものなら

「あのなあ、煙草っていうのは...」と始まり、2時間弱煙草の危険性について語られる。


それぐらいルールに忠実なんだ。あいつが車に乗ってこいなんてこと言うはずがない。

そういう仮定をもった上で考えると、さらに俺の結論が正しく思えてくる。


「もしかしてだ、まだもしかしてなんだ。」


自分にそう言い聞かせて自分を落ち着かせる。

動悸が酷い。これが本当なら、俺の導き出した結論が本当なら、俺は...


俺は、俺は!!!!


「自由だあああああ!!!!!!!!!」

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