第2話 タイムトラベル
警察署の地下。
重い鉄扉を開けると、湿った空気が押し寄せてきた。
そこは証拠品置き場。棚には無数の封筒や箱がぎっしり詰まっている。
未来は腰につけた鍵束から、証拠品保管庫の鍵を使ってルール通りに施錠を確認してから中へ入った。
「はぁ……今日も証拠品整理か」
彼女は小さくぼやく。
同期の刑事たちが現場に出ている間、自分はこうして埃まみれの段ボールを相手にしている。悔しさを抑えきれず、拳をぎゅっと握った。
棚の奥から取り出した封筒には、赤字で「再審請求中」とスタンプが押されていた。
事件は二五年前。被害者は副町長の秘書の若い女性。犯行現場はダムの建設現場の事務所、そのダム工事の反対派の中心人物が容疑者の男だという。
犯人は、事件から1週間後、現場に残されたDNA鑑定により、逮捕された。
「ふーん……」
中を覗くと、毛髪が数本、丁寧に封入されていた。
未来は首をかしげる。
「ええと事件記録だと、被疑者は一度も現場に行ってなくて、被害者との面識もないって主張してるけど……アリバイもないし、、、こんなの出てきたらアウトじゃん」
『これだけ証拠が揃ってたら、無罪を主張しても、、、ダメね』
彼女は封筒を掲げ、証拠品を透かしてみせる。
「ちゃんと罪を自白すればいいのに。私が当時の調べ官なら、こんな証拠見せられたらすぐに追い詰められるはず!スピード解決!」
ビシッ!と、拳を突き上げて息巻いたその瞬間、背後で扉が強く閉まった。
ひやりと風が吹き込み、封筒がふわりと宙を舞う。
「あっ!」
慌てて追いかけようとした未来の足が、床の段差に引っかかった。
体が宙を舞い、視界がぐるりと回転する。
「きゃっ――!」
深い暗闇に落ちていく感覚。
意識が遠のく。
次に目を開けたとき、そこは――
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