体験日記(睡眠薬)

@sikuhakku717

第1話 体験日記(睡眠薬)

📓 体験日記


昨夜、ついに睡眠薬を飲んでみることにした。

寝付きが悪い日が続いていて、「これで眠れるなら」と期待と不安を半分ずつ抱えながらの挑戦だった。


飲んでからしばらくは、「絶対に寝ないでおこう」と妙な我慢をしていた。効き目を実感してみたい、そんな気持ちもあったのかもしれない。ところが、服用して15分ほどで体に変化が現れた。そんな短時間で効くはずがないと頭では否定しているのに、意識が急にぼんやりしてくる。


少し意識はあるのに、体がまったく言うことをきかない。まるで金縛りにあったかのようだった。腕や足を動かそうとしても重く、頭で「動け」と指令を出しても伝わらない。このギャップが恐ろしく、胸の奥がざわついた。


何とか必死に力を込め、少しだけ体を動かすことに成功したが、それだけで強いストレスを感じた。その動作を4回ほど繰り返すうちに、「いっそ、このまま落ちてしまったら楽なのかもしれない」という思考がよぎる。しかしすぐに「このまま目が覚めなかったらどうしよう」「心臓まで止まってしまったらどうなるんだろう」と恐怖が押し寄せてくる。


意識と身体が分離したような不思議な感覚に翻弄されながらも、結局のところ抗えず、ふっと意識が途切れた。その瞬間、何も考えられなくなり、ただ眠りに引き込まれていった。


翌朝、ちゃんと目覚められたことに心底ほっとした。夜のあの不安が嘘のように、いつもの朝がそこにあった。

けれど、昨夜の体験は忘れがたい。効き目の速さ、体が動かなくなる恐怖、そして「眠ること」そのものへの新しい怖さ――。薬に頼ることの重さを実感した夜でもあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る