第24話 封印体
泰平さんは部屋に残った封印体だと思われる二人に近づいた。
「二人が封印体ってことでいいのかな?」
泰平さんがそう尋ねると、和服を着た女性が答えた。
「もちろんでございます。失礼ながら、泰平様はすでに知っていたのではありませんか?」
「ああ。知ってたよ。でも、邪魔者が少ないほうが話しやすいだろ?」
泰平さんが少し悪い顔をして言った。
「そうでございますね。」
彼女は口元を押さえて上品に笑った。
そして、彼女は俺の方を向いた。
「勇者様。
紬さんは深いお辞儀をした。
その時に彼女の結んでいる亜麻色の髪が揺れるのを見た。
彼女が身に着けているのは落ち着いた
そこには優雅に舞う鶴と、咲き誇る梅の文様が丹念に描かれている。
金糸が織り込まれた豪華な帯は、彼女の細い腰を引き締め、背筋を伸ばした立ち姿に凛とした気品を添えていた。
いいところのお嬢さんといった感じか…。
「ちなみに彼女は湊の持つ破壊の魔法の反対である、修復の魔法を持ってるんだ。」
泰平さんがそう言うと、紬さんは黒い手袋をつけた自身の右手を見せてくれた。
「湊は包帯なのに、紬さんは手袋なんですね。」
「湊様が包帯が楽しそうだとと仰るので、私めが手袋になったのです。」
「確かに選んだ最初は楽しかったけど、今となってはめんどくさいんだよね…。」
ぐーんと伸びをしながら、湊が言った。
「湊様。集会中はずっと寝ていたようですが、お疲れなのですか?」
紬さんが心配そうに尋ねると
「ふわぁ…。期末考査の勉強を頑張りすぎて眠いんだよね…。」
湊はあくびをしながら答えた。
「そうでございましたか。大変お疲れでございましたね。」
俺たち三人が楽しく話していると、横からの視線を感じた。
視線の方向を見ると、帳くんが助けてほしそうにこっちを見ていた。
「ちょっと…。この人を剥がしてくれませんか。」
帳くんにもう一人の封印体の女性がくっついていた。
帳くんは嫌がっているのか、上半身がのけぞっている。
学校でも同じ光景を見たのですが…。
「ねぇ、泰平さん。やっぱり、帳くん。私にくれませんか?」
彼女はにっこりと笑いながらそんなこと言った。
「ダメだよ。帳先輩が嫌がってるじゃん!離してあげなさい!あと隼人くんに自己紹介しなさい!」
彼女は渋々、帳くんから離れた。
そして、僕の方に向き直った。
「ちえっ。はいはい。私は
まず目に入ったのは、恋歌さんの緩やかにうねる深い青色の髪だ
まるで真夜中の海をそのまま掬い上げたような色合いが、彼女の白い肌をいっそう際立たせている。
その長いウェーブの合間からは、小さなハートのピアスが時折いたずらっぽく顔を出した。
そして、鮮やかな
「あ、はい。」
いきなり面食い宣言されてビビったせいで、中身のある返事ができなかった。
「よし。これで封印体全員と挨拶したね。あとは仮面さんだけかな。」
泰平さんがそう言うと、仮面さんがこちらに近寄ってきた。
「初めまして。勇者さん。私は怪異課のエース兼聖王様の護衛をしています。私のことは仮面さんとでも呼んでください。」
なんて覚えやすい名前なんだ!
こういうのでいいんだよ、こういうので。
「えっとちなみに、本名じゃないですよね?」
念のために聞いてみた。
「はい。色々あって妹が本名を名乗るのを嫌がってるので、それに合わせているんです。」
「ちなみに、仮面さんの妹さん二人も怪異課のエース兼聖王様の護衛なんだよね。」
泰平さんがそう付け加えた。
つまり、兄弟全員優秀ってこと?
「これで全員の自己紹介は終わりだ。今度からはこのメンツで集会に集まってもらう。それにしても、戦いにも参加しないで、口喧嘩ばっかりするおじさんがいなくなってよかったよ。」
泰平さんは心底嬉しそうにに微笑んだ。
「そうですね。聖王様もうんざりしていましたから、いなくなってよかったと思いますよ。」
仮面さんもそれに同調した。
「これで解散でよろしいのですか?」
「うん。話は終わり。魔王について何かあったら呼ぶからそのときはよろしく。」
泰平さんは手を振って、部屋を出て行った。
俺たちも軽くお辞儀をしてから足早に部屋を出た。
そして、車に乗り込んだ。
車が出発してすぐ泰平さんは僕たちの方に振り返り
「集会が早く終わってよかったよ。僕頑張ったよね帳先輩!」
とまるで飼い主に飛びつくワンコみたいに褒めてほしそうに帳くんにくっついた。
「はいはい。頑張りましたね。」
帳さんはよしよしと泰平さんの頭を撫でてあげた。
「運転中ですよ。助手席から抜け出すのは止めてください旦那様。」
詠悟さんはムッとして言った。
「あともう少しだけ…。」
泰平さんは全くやめる気はなさそうだ。
僕は大量の人と接したことで疲れ果て、また寝ることにした。
目が覚めると車の中ではなく、家の中でベッドに寝かされていた。
窓の外を見ると日が落ちていて、完全に寝過ぎたと思った。
とりあえず、誰かがいそうなリビングに行くことにした。
リビングに入ると、テレビでゲームをしている帳くんと湊がいた。
その後ろに応援をしている泰平さん、雛菊さん、暦さんがいた。
「いけぇ!湊!ぶち殺せぇ!こっちは一万円賭けてるんだよ!」
「湊様!ファイト!帳さんなんてぶっ飛ばしてください!」
「湊様、頑張れ!コンボを決めるんです!そこでスマッシュです!」
なんか盛り上がってるみたいだ。
「何やってるの?」
俺が声を発すると、湊がすぐに気づき
「おはよう、隼人!よく寝てたね。」
とこちらを見てニコニコと挨拶をしてくれた。
その刹那
「湊様。よそ見はいけませんよ。」
帳くんがそう言い、スマッシュを繰り出すと湊の操作するキャラを場外にふっとばし帳くんは勝った!
「やっちまったぁ〜。」
湊はその場に崩れ落ちた。
「隼人くんが来なかったら負けてるところでしたよ。助かりました。」
帳くんは俺に感謝しているようだ。
「大乱闘でスマッシュなブラザーズゲームしてたんだね。」
「そうです。湊様がやりたいと言うので。」
「隼人もやる?楽しいよ。」
「やろうかな。湊って強いの?」
「ふん。最強さ★」
「スマッシュ攻撃しか出してこないから弱いですよ。」
「いや、湊は可愛いからさ!強いよ!もう最強。僕、勝ったことないもん。」
泰平さんの謎の叫びを聞きながら、コントローラーを受け取り一緒にゲームをした。
明日から地獄の特訓があることを知らずに…。
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