第20話 真の転校生

 偽星音を湊が圧倒的な暴力でボコボコにしてから数日後…。

 

 今までこの学校に来ていた偽星音は怪異課に引き取られたため、学校をずっと休んでいた。


 クラスメイトは急に星音が休むようになったことに疑問を覚えているようだった。


 なぜ席が残っているのかは疑問だったが、いつもと変わらない朝を過ごしていた。


 そんな朝をぶち壊すように男子生徒の廊下を走る音が聞こえ、俺たちの教室の扉を勢いよく開け


「転校生だぁ!」


 と叫んだ。


 教室はざわざわと騒がしくなった。


「また転校生?さすがに多くない?」


「星音さん最初は可愛くていい子だと思ってたけど、途中から酷かったよね…。」


 周りの話を聞きながら、湊に話しかけた。


「転校生だってさ。誰が来るんだろうね?」

 

「誰でもいいよ。魔王の仲間だったらぶっ飛ばすだけだし。」


 湊はニコニコと微笑んで拳を握りしめたが、ビクリと手を跳ねさせてすぐに手を開いた。 


「痛かった…。怪我したときは痛くなかったのに…。シャーペン握れなくなったし…。」


 湊は元気がなくなり、机に突っ伏した。


「怪我したすぐはアドレナリンが出ているので痛くないらしいですよ。時間が経つとそれがなくなって、痛くなるらしいです。」


 帳くんが雑学?を教えてくれた。


「あと今日来る転校生も、お二人がよく知っている人ですよ。」


 帳くんは不敵な笑みを浮かべた。


 俺はどういうことかと尋ねようとしたが、藤野先生が教室に入ってくるのを見て、自分の机に戻った。


「また転校生が来ました!」


 藤野先生がそう宣言すると、クラスメイトがそれぞれに口を開いた。


「このクラス転校生多すぎじゃないですか?」


「ホントだよ!悪いことじゃないけど、なんか多いと思います!」


「まぁまぁ、みんな見たら驚くわよ。」


 藤野先生はみんなを嗜めて、廊下に合図を出した。


 教室に入ってきたのは驚くべき人物だった。


 日差しを浴びて淡い輝きを放つ、プラチナブロンドの長い髪は、まるで絹糸のように背中まで豊かに流れ落ち、その髪を飾るささやかな花飾りが、一層、彼女の透明感を際立たせた。


 ​光を宿した藤色の瞳は、どこか夢見がちな優しさを湛えながらも、奥底にはまっすぐな強さを秘めている。


 小ぶりで整った顔立ちには、美しさが漂い、わずかに微笑む口元が、見る者を惹きつけた。


 プラチナブロンドの髪、アメジストの瞳を持つ転校生は御堂星音だ。


「初めまして。御堂星音みどうせおんです!」


 彼女は緊張したような口ぶりで自己紹介をした。


 クラスメイトは再びざわめいた。


「どういうこと?星音ちゃんが転校生?2回目の転校?」


 俺も当然動揺した。


 数日前に湊がボコボコして、怪異課に連れて行かれたはずだ。


 どうしてここにいるんだ?


 混乱しているクラスメイトを藤野先生が落ち着かせた。


「えっとね…。前に転校してきた御堂さんは星音さんじゃなくて、双子のお姉さんだったらしいのよ。星音さんが本来転校してくるはずだったんだけど、間違えて双子のお姉さんが来てしまったみたいなの。だから、また仲良くしてあげてほしいわ。」


 藤野先生の話を聞くとみんな納得した様子だった。


「本物か…。」


 俺は小さな声で呟いた。  


 帳くんが言ってたのはそういうことが。


 偽物の星音がいるということは、本物の星音がいるということだ!


 どうして気づかなかった…。


 俺は今まで偽物の星音に惚れていた。

 そして、それは魔王の手先だった。

 だが、彼女は本物の星音だ!


 正直、俺は彼女の見た目が好きだ!

 告白したらワンちゃんいけるのでは?


「じゃあ、東雲くんの隣の席に座ってね。」


 藤野先生の一声で彼女は俺に近づき


「これからよろしくね。東雲くん。」


 と笑顔で言った。


 俺はすぐに


「ああ。よろしく星音。」


 とイケてる低い声で言った。


 このようにイケイケの行為を繰り返していけば、前のように俺に惚れるはずだ!


 そう思った俺の考えは見事にぶち壊された。


 SHRが終わると彼女は席を立ち、真っ先にどこかに向かった。


 俺が彼女を目線で追うと彼女は帳くんの席の間の前に止まり


「帳様♥大好きです…。」


 と言い、抱きついた。


 俺の脳は破壊された。


 これがNTR(寝取られ)なのか?


 それともBSS(僕が先に好きだったのに)なのか?


 そんなことより、俺は帳くんをぶん殴りたかった。


 俺はズンズンと帳くんに近づいた。


「帳くん。星音とはどのような関係で?」


 帳くんは雑に星音を引き剥がして


「ただ保護しただけなんですけど…。謎に懐かれました。」


 と困惑した様子で答えた。


「保護ってどういうこと?」


「家に帰ったら話しますよ。」


「そんなぁ…。帳様とボクは運命の赤い液体で繋がっているんですよぅ!」


「赤い液体って何ですか?私に湊様がいるので、星音さんと付き合うのは無理ですよ。」


「赤い液体は血ですよ。運命の赤い糸って意味わかんないですよ!なんで糸で繋がるんですか?血で繋がった方が良いと思うんです!」


 彼女の意味のわからない言葉に俺は頭を抱えた。


 見た目は好きだけど…。


 告白の件はどうしよう…。


「帳は僕のものだ!お前には渡さんぞ!」


 湊も乱入して事態が悪化した。


「お前が湊か!帳様をボクのものだ!ボクと結婚するんだよ!」


「人をモノ扱いするな!帳は僕のモノなんだよ!」


「お前もモノ扱いしてるじゃないか!ボクのものだって!」


 その後も同じような内容を言い合っていた。


「はぁ…。もうやめてください。私は湊様のモノなんですよ。星音さんは諦めてください。」


 帳くんが2人を制すると湊はドヤ顔をした!


「ふん!僕のモノだもん!」


「帳様なんでぇ…。」


 星音は悲しそうに帳くんにすがり始めた。


「結婚したいって言いますけど、私と星音さんではまだ出来ませんよね。」


 帳くんがそう言い放ってクラスがまたまたざわめいた。


「えっ?もしかして…。星音さんって…。」


 俺はどういうことか全くわからなかった。


「どういうこと?」


 俺が尋ねると帳くんは俺から目を逸らした。


「えっと…。結婚って同姓だとまだ出来ませんよね。ちなみに私は男です。あとは察してください。」


 全てわかってしまった。


 もう終わりだよこの世界…。


「おう…。えっと、隼人ドンマイ?」


 湊も察したようで俺を気にかけてくれている。


 その日、俺は朽ちていた…。


 湊のよしよしがなければ危なかったよ…。


 家に帰ると帳くんが全ての事情を話してくれた。


 御堂星音は元々この学校に転校するはずだったのだが、色々あって延期になっていたところに魔王の手先がやってきて先生たちは勘違いして受け入れてしまったらしい。


 ちなみに帳くんはその事を知っていてわざと泳がせてたらしいです…。


 それで、星音がこの学校に転校してきたのは魔王に有効かもしれない魔法を発現したからで、いつでも魔王と戦えるように来栖家の近くにある俺たちの学校に来たわけだ。


 最初、星音は転校することを拒んだので、困った怪異課が帳くんを呼んで星音と話してみたら転校してもいいよ!ってなったらしい…。


 その時になぜか星音に惚れられたみたい…。


 どういうことでしょう?









 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る