第19話 仲直り
返り血まみれでボロボロの湊と一緒に帰った。
さすがにそのままにしておくと、周りの人の目線が痛いので俺のハンカチで拭けるところは拭いて、俺の制服の上着も着せた。
「ありがとう。隼人。」
さっきまで無表情で人をぶん殴っていたとは思えないような可愛らしい笑顔を俺に向けてきた。
俺は酷いことをたくさんしたのに、どうしてそんな笑顔を向けてくれるのだろうか。
「湊はずっと俺のために動いてくれてたんだよね…。あの人は魔王の仲間だって気づいてそれなのにひどいこと言ってごめんね。」
俺は自然に言葉が溢れていた。
「僕の方こそごめん。隼人の両親の記憶を奪った件について冷たく伝えてしまったし、君があの女に盲目的になる前に早く動けばよかった。」
俺は湊の言葉を聞いて確信した。
湊は俺を大切にしてくれている。
偽星音に圧倒的な暴力を振るったのも俺のためだ!
「俺の両親の記憶の件は誰も悪くないよ。みんな嫌嫌やったんだ。それを分かってたのにそれを整理できなくて湊に当たった俺が悪いんだよ。」
「誰でも家族から自分に関する記憶を消されたら怒るに決まってる。君は悪くない。なんて言っていいか分からないけど…。」
「もうこの話はいいよ!仲直りしよう。どっちも悪かったってことでいいじゃないか。」
俺がそう言い湊に手を差し出すと、湊は頷き俺の手を握った。
「仲直り!」
俺の手には生暖かい血の感触が広がった…。
「手の甲しか出血してなかったはずなんだけど、血がたれて隼人の手が真っ赤になっちゃった…。」
「出血死はしないと思うけど、早く家に帰ろう!」
走ったりすると血が余計に垂れそうだ…。
俺は思い切って湊をお姫様抱っこした。
湊はギリお姫様抱っこできるぐらいの重さだった。
おんぶにしたら俺の背中に血がつくし、お姫様抱っこが最善策だな。
「ひゃぁ!」
驚いた湊が声を上げた。
「ちょっと重いけどギリ行ける!走るぞ!」
俺は湊のことを気にせず走り出した!
湊は怖いのかよくわからないけどずっと叫んでた。
家に着き、玄関の扉を開けると救急箱箱を持った暦さんと雛菊さんがいた。
「湊様!早く治療しますよ!帳さんから大体聞きました!喧嘩?をしたとか。」
湊の姿を見ると雛菊さんは泣きそうになっていた。
「ぴぇー。湊様がボロボロに…。可哀想に喧嘩相手にボコボコにされてしまったんですね…。」
「喧嘩じゃなくて一方的にリンチしたんだよ。」
「とりあえず、お洋服を変えて傷を水で流しましょう。」
湊は動きやすい私服に着替えさせられ、傷口を水で洗われた。
まだ怪我したばかりなので痛くないようで傷口が水に触れてもじっとしていた。
「消毒させて頂きますね。」
暦さんは慣れた手つきで湊の傷口をアルコールで消毒し始めた。
それが終わると雛菊さんが妙に力が入った様子で
「ではやらせてもらいます!」
と言うと、傷口に手をかざした。
「ふんぬー。」
険しい表情をして何かをやり始めた。
少しすると傷口がキラキラし始め、それを確認すると雛菊さんは手を下ろした。
「これで大丈夫なはずです!」
その言葉を聞くと暦さんは傷に絆創膏を貼った。
「これで終わりですね。これからは安静にお願いします。雛菊ちゃんの魔法がありますけどすぐに傷がふさがるわけではないので。」
「雛菊さんって魔法が使えるんですか?」
「はい!私は自然治癒能力?を上げる魔法が使えるらしいので誰かが怪我をしたときに使っているんですよ。」
「そうなんですか凄いですね。治療系の魔法っていいですね…。」
「そんなことないですよ。他の治癒魔法と比べて効力が分かりにくいですし…。」
雛菊さんは元気がなくなり、うつむいてしまった。
「でも、治療系の魔法って珍しそうじゃないですか!人を治せるってすごい!」
俺がさらに褒めると雛菊さんは顔がとろけて照れだした。
「えへへ。そうですか。」
「とりあえず、湊様はお部屋で安静にしていてくださいね!」
暦さんと照れてる雛菊さんを連れて部屋をあとにした。
「はーい。部屋で一人は暇だから隼人とお話したいな〜。」
湊の上目遣いを受けて俺は湊の部屋に行くことにした。
部屋は前と変わらず真っ白だった…。
「なんでこんなに部屋が真っ白なの?」
俺は抱いた疑問を湊にぶつけた。
「白は綺麗だから。白い物ってなんか良くない?清潔感に溢れてるし。あとは黒の反対だからかな。」
「黒の反対?」
「うん。黒は魔王だね。魔王は漆黒なんだってさ。それで、僕たちはその反対の純白!みたいな。」
「よく分からないけどいっか。話って何かあるの?」
「いや、特にないけどさ…。雑談的な?偽星音が来てからほとんど話してなかったから。」
「そうだったね。そういえば、そろそろ期末考査だけど大丈夫なの?前回の中間考査はすごい点数だったけど…。」
俺が考査という言葉を発した時、湊の顔色が明らかに悪くなった。
確か、帳くんが転校してくる前ぐらいに中間考査があって、その時の湊の点数はほとんどが赤点の30点数未満だったはずだ…。
「そんなこともありましたな…。勉強しないとダメかな?」
湊はさっきと同じ上目遣いをしてきた。
だが、さっきの状況が違いすぎる!
「ダメだね。帳くんに前回の点数言ったの?」
「言ってないよぅ!言ったら確実に勉強させられるもん!僕は勉強はしない派でね★」
湊はキラッとウィンクをした。
「そんなことよりお話しようよ〜。手が痛くてゲームはできないからさ、お話するぐらいしかすることがないんだよ〜。」
湊は手足をバタバタしながら俺に懇願してきた。
俺はどうしてもその願いを受諾することはできなかった。
湊には聞こえてないみたいだが、湊の部屋に近づいてくる足音が聞こえる。
トントン
扉をノックする音が部屋に響いた。
湊はピタリと動きを留めて、冷や汗をかき始めた。
「湊様。帳です。入っていいですか?」
「すぅ…。ちょっとね。察してくれるかな?」
湊は汗をかきながら、なんとか帳くんを部屋にはいらせないように言葉を選び始めた。
「察しろと言われましても。さっきまで隼人くんとお話してましたよね。中間考査がどうとか。そういえば、テストの結果見せてもらってませんでしたよね?」
「いや…?見せたよ。多分…。」
「いや絶対に見せてもらってません。もう入りますからね。」
「いや、ちょっと待って…。ブワァ!」
湊は急いで立ち上がり、部屋の扉を押さえようとしたが、開かれた扉にぶつかって倒れた。
「失礼しますよ。湊様が隠し場所として使う場所はだいたい同じですからね。」
帳くんは勉強机の引き出しを引き抜くと、引き出しがあった空間の中を探り始めて見事にテストの紙を見つけた。
「これは凄いですね…。勉強しましょう。次のテストは最低でも赤点を超えるようにしないと。」
「あの糞女をぶん殴りすぎて手が痛いんだよね…。僕もやりたいのは山々なんだけど、無理かな。」
湊は手に怪我をしていることをいいわけに勉強を回避しようと試みた。
「確かに書いて勉強するのは無理かもしれません。しかし、最近は動画で勉強できるものもありますし、私が湊様の代わりにに書くことができます。」
しかし、勉強というものは書くことだけではないということを帳くんは知っていたのだ。
湊の試みは見事に失敗し、期末考査に向けて必死に勉強する羽目になった…。
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