第15話 鏡騒動
そのような日々を過ごしているとある日
家で晩御飯を食べ終わると
「明日、学校の屋上で話したいことがあります。」
帳くんから言われた。
「別にいいけど。家で話せないようなことなの?」
帳くんは少し俯いて答えた。
「まぁ、そうですね。二人きりで話した方がいいと思いますよ。隼人くんのためにも。」
「わかった。明日、話そう。」
俺がそう答えると帳くんは微笑んだ。
次の日
まだ人が来ないような早い時間に学校に向かった。
湊は教室に置いていき、帳くんと二人で屋上に上がった。
屋上に入ると爽やかな風が吹いた。
ふと空を見上げると雲一つない青い空が広がっていた。
外の景色を見るのは久しぶりな気がする。
通学の時もずっと星音と話すためにアニメとか映画を観ていたから…。
「私が隼人くんをここに呼んだのはまわりを見てほしかったからです。」
「まわり?」
「最近の隼人くんはずっとスマホや星音さんを見てばかりでまわりが見えていないと感じました。」
「確かに。スマホと星音ばっか見てたかも。」
「それだけではないです。星音さんに対してストーカーみたいなことをしていますよね。」
帳は鋭い瞳で俺を睨んできた。
「いや、星音が好きそうなアニメとか映画を知るために聞き耳を立ててるだけだよ。」
俺は慌てて弁解をした。
「やっぱり、隼人くんはまわりが見えてないんですね。まわりからはストーカー扱いされますよ。」
俺は衝撃を受けた。
恋は盲目というが、本当にまわりが見えてなかったのか…。
もしかしたら、星音からもストーカーだと思われてるかもしれない…。
「とりあえず、これからは行動に気をつけてください。あと湊様の件はどうなっているんですか?」
「湊の件?」
この時の俺は全く心当たりがなかった。
「まだ湊様と仲直りしてないんですよね?」
帳くんに言われてようやく思い出した。
「ああ…。そういえばそうだった。後でやるよ。」
「後で?」
帳くんの声が少し低くなった。
「隼人くん。星音さんと湊様どっちが大切なんですか!」
どこかの恋愛アニメやドラマでしか聞いたことのないようなことを聞かれた。
若干、違うけど。
しかも、本人じゃないし…。
ここで「どっちも大事だよ!湊も星音も俺にとって必要不可欠な人だ!」
とか言ったら
「何ヶ月も過ごして、最近は同じ屋根の下で過ごしている湊様よりも、たったの数日過ごしただけの星音さんが大切なんですか。」
とか嫌味を言われるだろうな…。
「星音が一番大事だ」
と言っても同じだろう。
つまりベストアンサーは…
「もちろん湊が一番大切だよ。」
俺は声に出して答えた。
帳くんは俺の答えを聞くと、にっこり笑ったまま、しかし声のトーンを落として
「それなら湊様と仲直りすることを最優先してもらっていいですか?」
と圧をかけられた。
クソ!選択を誤った…。
選択肢の中で一番、帳くんが納得しそうな選択肢に誘導されたのか…。
嘘でも湊が一番大切だと言わせることで言質を取ったんだ…。
「じゃあ、これからは湊様と仲直りすることに精を出してもらうということで教室に戻りましょう。」
俺は帳くんにしてやられたと思いながら教室に戻った。
俺たちの教室がある4階に降りると何やら騒がしかった。
「乱闘でも起きてるのでしょうか?行ってみますか。」
音のする方に行ってみると、女子トイレの前に大量の人が集まっていた。
大勢の人が集まっている中心には向き合う湊と星音がいた。
「これってどういう状況?」
俺がそう呟くと近くにいたクラス長が教えてくれた。
「なぜか女子トイレの鏡が全部割れてて、その犯人が星音じゃないかって話し合い?してるっぽいんだよね。」
女子トイレの中を少し覗いてみると地面に鏡の破片が散らばっていた。
「湊くん。どうしてそんなひどいことをいうの…。私は鏡なんて割ってないわ…。」
星音が今にも泣き出しそうなか弱い声で言った。
「そう言っても、状況的に星音さんしかありえないと思うんだけど。」
湊は堂々とした態度で言った。
「僕が教室で本を読んでいたら女子トイレの方から凄い音が聞こえたんだ。それで行ってみたら君がいた。」
「それは私も音が聞こえたので行ったんですよ。それで割れた鏡を確認してたら湊くんが来たんですよ。」
「そもそも君は鏡が割れる前にどこにいたの?音が聞こえたから来たって言うけど、女子トイレから鳴ったってどうして分かったの?」
湊は冷静に淡々と星音を問い詰めていった。
「湊くんこそどうして女子トイレから鳴ったってわかったの?」
「僕は教室で本を読んでいたからだよ。女子トイレは教室のすぐ近くにあるから多分そこから鳴ったんだろうなって思った。」
「君はどうしてわかったのかな?きっと4階以外でも音は聞こえただろうけど、具体的な場所は分からないはずだよ。」
星音は口を閉ざした。
「どうしたの?何もやましいことがなければ言えるよね?それとも音が鳴った時に女子トイレにでもいたのかな?」
唇をかみしめて彼女が何か発言しようとした時…。
「ちょっとどうしたの?」
藤野先生がやってきた。
「なんか、女子トイレの鏡が割れたみたいで。その犯人探しをしてる感じですね。先生は何か聞きませんでしたか?」
クラス長が答えた。
すると、藤野先生は慌てだした。
「えっ、そうなの!確かに何かが壊れるような音は聞こえたけど職員会議をしてたから忘れてたわ…。とりあえず、もうすぐSHRが始まるから教室に戻ってちょうだい。」
先生に言われて俺たちは解散した。
教室に戻っていると誰かに服を引っ張られた。
振り返ると星音が目に涙を溜めて俺の服を掴んでいた。
「隼人くんは私が犯人じゃないって信じてくれてるよね?私やってない。湊くんが嘘をついてるの。」
「もちろん信じてるよ。」
俺は半分嘘をついた。
湊が嘘をつくはずない、でも、星音を信じたい。
だが、俺は見たんだ。
彼女の手のひらにまるで何かに切られたような切り傷があったのを。
きっと鏡を割った時に手を切ったのだろう。
それでも、俺は彼女が好きだから信じた。
周りの反応を見る限り、クラスメイトは星音が犯人だとは思ってないみたいだ。
結局、鏡騒動は犯人を解明しないまま終わった。
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