第7話 湊の過去
次の日
朝、学校に向かう準備をしてるとメールが届いた。
『隼人!学校に着いたら屋上に行って!』
闇夜くんの件だと思うけど、説得できたのかな?
『闇夜くんを説得できたの?』
『行ってからのお楽しみだよ!』
『僕は未来路兄ちゃんの教室にいるから、終わったら来てね〜。』
湊のことだし、大丈夫だと思う!
ていうか、未来路兄ちゃんって誰なんだ!
まぁ、闇夜くんに聞いてみたらわかるだろう…。
学校に着くと、湊に言われた通りに屋上に向かった。
屋上に入るとフェンスに寄りかかり、遠くの方を見つめている闇夜くんがいた。
「おはよう。闇夜くん。」
とりあえず挨拶をしてみた。
闇夜くんはこちらに気づくと無表情のまま
「おはようございます。近くに来てください。話したいことがあるので。」
と言い、手招きしてきた。
俺が闇夜くんの隣に行くと
「まずは湊様が昔、傷ついた話をしましょうか。」
彼は暗い表情でポツリポツリと話し始めた。
湊は小学校の時にとても仲が良い友人がいた。
その友人はいつでもどこでも湊と一緒にいてくれて、寂しさなんて感じさせる余地もなかった。
そしてお互いに親友だと思っていた。
しかし中学校に入ると湊は魔王の力を体に封印することになり、左手に包帯を巻くようになった。
その姿を見た彼は湊から離れるようになった。
それでも湊は彼のことを親友だと思い小学校の時と同じようにずっとそばにいた。
その日もいつもと同じように近くにいると彼から言われた。
『いい加減にしろよ!俺の気持ちを考えてくれよ!中二病のお前がずっと近くにつきまとってる俺の気持ちを!お前が近くにいるだけで俺も仲間だと思われてハブられんだよ。もう話しかけないでくれ。』
湊は彼の親友だった。
だから彼が言っていることが本心だってわかった。それから湊は体調を崩すようになり、不登校になった。
中学校はそれから一度も行っていない。
闇夜くんは話し終わると大きく息をついた。
俺は何も言葉を発することができなかった。
「隼人くん。この話を聞いて何か心当たりはありませんか?」
心臓が跳ねる。
「あります…。湊に中二病はほどほどにしろって言いました…。でも、本心じゃなかったんです…。」
声を震わせながらなんとか言葉を絞り出した。
「わかってます。魔が差して言ってしまったと。ですが、その言葉でどれほど湊様が傷ついたか知ってますか?」
俺は何も答えられなかった。
「湊様から早退をすると連絡が来たので、車を飛ばして迎えに来てみれば泣きじゃくってるんですよ。家に帰ってからもずっと泣いててもう可哀想で…。」
俺は泣きじゃくる湊の姿を想像して心臓が潰されたように苦しかった。
「私は貴方がこのときと同じように湊様を傷つけるのではないかと心配なのですよ。もう一度湊様を傷つけることがあれば物理で消します。」
闇夜くんに睨まれて俺の体は反射的に動いた。
「本当にすみませんでした!今後はこのようなことはしません!」
俺は地面に頭を擦り付けて謝った。
「わかってくれたらいいんですよ。そもそも湊様が許してるので終わった話ですし。あとついでにいいですか?」
「はい!」
気高く力強い声で俺は答えた。
「苗字で呼ばれるのは嫌なので名前で呼んでください。あと友達になってください。」
俺は予想外の発言に動揺した。
「名前で呼ぶのはわかるんですけど、どうして友達になりたいんですか?」
「湊様になれって言われたので。」
「アッ。ソデスカ。」
帳くんは袖をまくり腕時計を確認した。
「そろそろ湊様のところに行ったほうが良さそうですね。一緒に未来路様の教室に行きましょう。」
帳くんについていく形で未来路さんの教室に行った。
無機質な廊下を無言で並んで歩く。
俺は沈黙に耐えられず、帳くんに話しかける。
「帳くんって湊の執事なんだよね。いつからやってるの?」
「湊様が生まれたときからですね。」
「湊が生まれたときって…。帳くん何歳なの!」
俺は頭の中で導いた答えに驚愕した。
湊が生まれたのは15年前だ。
帳くんは湊が生まれた時にはもう執事として働いていたから、多分20歳は超えているはず。
つまり、35歳?
でも、見た目は大人びてるけど、35歳には見えない。
困惑している俺を横目に、帳くんは少し微笑んで言った。
「秘密です。」
「そっか。じゃあ、そもそも帳くんは何で湊の執事になったの?」
とりあえず、今のことは忘れて次の質問を投げかけた。
「なんか誤解されそうなんですけど、一目惚れですね。」
「ひ、一目惚れ?どういうこと?」
「そのままですよ。湊様が生まれたときに立ち会わせてもらって、その時に運命感じちゃったってやつです。」
「はぇー。」
全く意味がわからない。
帳くんは何を言っているんだ?
いや、言っていることはわかるんだけど理解ができない。
「意味わかんない。みたいな顔をしてますね。」
「いや、わかるけどわからないみたいな。」
「そうですか。低俗な貴方には分からないようですか。この崇高な気持ちが。」
帳くんは俺の顔を見てわざとらしく笑っていた。
「わかるよ!わかるんだけど、理解できないだけ!煽らないでよ!」
帳くんが煽ってきたことに俺は腹を立てるどころかとても嬉しかった。
多分、こんな生活を望んでいたんだろうな。
家族が俺に軽口をたたいて、俺が反論して言い合いになり、それでみんな笑うみたいな生活を。
「隼人くん。どうかしましたか?悲しそうな顔をしてますよ?」
帳くんは立ち止まり、俺の顔を覗き込んでいた。
俺は我に返り、急いで答えた。
「あっ、いや。大したことはないよ。ちょっと嫌なことを思い出しただけ。」
「そうですか。ところで、未来路様の教室につきましたよ。」
立ち止まった2年F組の教室から、湊ともう1人の話し声が聞こえてくる。
「じゃあ、入りますよ。」
帳くんは扉を3回ノックしてから教室に入った。
俺も帳くんに続いて入った。
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