第十章 新しい始まり

その日の夜、美咲は化粧を落としながら鏡を見つめていた。


「これが私」


すっぴんの自分を見て、安心した。やっぱり、これが一番落ち着く。


翔太から別れを切り出されることもなく、美咲から別れを告げることもなく、二人は自然に距離を置くことになった。


でも、美咲には一つだけ疑問が残っていた。


「私が変わったのって、全部無意味だったのかな...」


翔太に言われて始めた美容院通い、新しい服、薄化粧。確かに周りからの反応は変わった。


「でも、これも私の一部なのかもしれない...」


美咲は新しい発見をしていた。お洒落をするのは面倒だったが、たまにはいいかもしれない。でも、それは誰かに強制されてするものではなく、自分が楽しいと思うときにするものだ。


翌週、美咲は久しぶりに軽くメイクをして職場に行った。


「あれ?美咲ちゃん、今日はお化粧してるじゃない」田中が気づいた。


「たまには気分転換」美咲が答えた。


「彼氏と別れたって聞いたけど、大丈夫?」


「大丈夫です。というか、すっきりしました」


それは本音だった。


一方、翔太も変化していた。SNSの更新頻度が減り、ジムに行く代わりに読書をするようになった。美咲との関係を通して、自分の価値観を見直すきっかけを得たのだ。


「見た目だけじゃダメなのかもな...」


翔太は書店で、経済関係の本を手に取っていた。美咲のように、内面を磨くことの大切さを、ようやく理解し始めていた。

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