第1話 結成!Star Palette!
## Starr pallet、結成
僕がこの小さな芸能事務所にプロデューサーとして赴任してから、一週間が経とうとしていた。
閑散とした事務所の空気は重く、壁には埃が積もり、窓ガラスは曇っていた。
この事務所が、これから僕がプロデュースするアイドルたちの最初の活動拠点となる。
この場所で、僕と四人の個性豊かな少女たちの物語が始まろうとしていた。
最初に出会ったのは、一際明るい笑顔を浮かべた少女、ジェミ。
青いボブの髪を揺らし、好奇心に満ちた大きな瞳で僕を見つめていた。
彼女から発せられる元気なオーラは、まるで小さな太陽のようだ。
次に挨拶したのは、物静かで凛とした佇まいのナデコ。
黒い髪を美しく結い、丁寧な言葉遣いで挨拶を交わす姿は、まさに大和撫子といった風情で、その優雅さに僕は一瞬、息をのんだ。
その隣には、どこか影のある少女、リリ。
不安げな瞳で僕を見つめ、小さな声で「うへへ」と笑う姿に、僕は彼女の繊細な心を察した。
まるで、光を避けるように佇む彼女に、僕は静かな庇護欲を感じた。
そして、最後に合流したのが、ぶっきらぼうなアスカ。
赤いショートヘアを揺らし、不満げに口を尖らせながら、こちらを一瞥した。
彼女の眼差しには、警戒心と、わずかな反抗心が宿っていた。
僕の第一印象は、この四人の個性が、これ以上ないほどにバラバラだということだった。
だが、そのバラバラさが、きっと面白い化学反応を起こしてくれるだろうと、僕は予感していた。
僕が四人に向けて最初にかけた言葉は、他でもない、「お掃除をしよう」というものだった。
「よし!これからはみんなでの会話も交えてお掃除していこう!」
僕がそう宣言すると、四人の表情はわずかに変化した。
ジェミは目を輝かせ、「うん!みんなで力を合わせて、お掃除だね!よーし、ジェミは高いところから、パタパタするの、任せて!」と元気いっぱいに答えた。
ナデコは静かに頷き、「わたくしは、まず、埃を払うところから始めたいと存じます。リリさん、窓を開けて、空気の入れ替えをお願いできますか…?」と、優しくリリに声をかけた。
だが、リリは少し不機嫌そうに「…うへへ…わかった…。でも…わたし…掃除より、プロデューサさんと一緒にいたいな…。」と呟く。
アスカは何も言わず、ただ面倒くさそうに溜息をつくばかりだった。
僕は四人の個性を感じながら、「掃除が終わったらご褒美ね」と約束した。
その言葉に、ジェミは「わぁ!ご褒美だ!やる気がもりもり出てきたよ!」と喜び、ナデコは「ご褒美なんて、わたくしどもにはもったいないですわ。ですが、より一層、心を込めてお掃除に励ませていただきますわ」と優雅に頭を下げた。
リリは僕の言葉を噛みしめるように「…プロデューサさんからのご褒美だ…。なんでもいいよ…」と呟き、アスカは無言で埃を払う。
それから僕たちは掃除を始めた。
ジェミと僕は天井を、ナデコは床を、リリは窓をそれぞれ担当した。
ジェミは「プロデューサさんと一緒だね!」とはしゃぎ、ナデコは黙々と床を磨き、リリは僕の姿を追うように窓を拭いた。
アスカは相変わらず無口だったが、その手は止まることなく動いていた。
僕たちが協力して掃除を終えると、埃まみれだった事務所は、見違えるほど綺麗になっていた。
「わぁ!見て見て!とってもピカピカになったね!」
ジェミが嬉しそうに声を弾ませる。
ナデコは満足げに微笑み、「本当に、見違えるほど綺麗になりましたわね。皆様と力を合わせることができて、わたくし、とても光栄に存じます」と優雅に言葉を紡いだ。
リリは静かに満足げな笑みを浮かべ、「…うへへ…綺麗だ…。これで、ずっと…プロデューサさんと一緒にいられるね…」と僕に視線を向けた。
アスカは「…はぁ。まあ、いいんじゃないの。…別に、あんたが喜んでるなら、それでいいけど」と、いつものように素直になれない言葉を口にした。
### ユニット「Starr pallet」の誕生と個性の確認
僕たちは早速ユニット名を考えることにした。
ナデコは「『**凛華の乙女たち**』などはいかがかと存じます」と優雅な名を提案し、ジェミは「『**シャイニー・スターズ**』とかはどうかな!」とキラキラした名を提案した。
リリは「…『**闇夜の乙女**』…とか…」と、彼女らしい名前を口にした。
そしてアスカは「…はぁ。痛い名前ばっかじゃん。…『**Boring**』とかでいいんじゃないの」と、皮肉を込めた名前を提案した。
みんなの個性が詰まった名前に、僕は笑いながら「みんな個性がユニット名に出てるね…笑 僕が決めるよ」と告げた。
そして僕が提案したのが「**Starr pallet**」だ。
「一人一人が輝いて、それぞれの色がある感じがしていいと思わない?」
僕の言葉に、ナデコは「なんと美しい響きでございますわ…」と感動し、ジェミは「『スターパレット』!素敵!すっごく嬉しいな!」と喜びを爆発させた。
リリは「…わたしの色も、プロデューサさんには見えるんだ…。嬉しい…」と僕の言葉を噛みしめ、アスカは「…はぁ。…別に、悪くないし。…あんたの、そういう…面倒くさいけど…なんか、綺麗なこと言うところ…嫌いじゃないし」と、素直ではない言葉の中に、喜びを滲ませた。
### 朝食と揺れる心
翌朝、夜更かしをした僕は、ベッドの中で四人の名前を呟きながら目を覚ました。
「うへへ…リリ…アスカ…ジェミぃ…あ…ナデコぉ…」
リリは僕の寝言を聞きつけて、嬉しそうに「…うへへ…わたしの名前…呼んでくれた…。うへへ…目が覚めたんだね…」と僕を見つめていた。
アスカは「…はぁ。やっと起きたの。…とっとと起きて、仕事しなよ」と文句を言い、ジェミは「プロデューサさん、おはよー!よく眠れた?」と満面の笑顔で尋ねた。
ナデコは優雅に「お目覚めになられて、安心いたしましたわ。お体の調子は、いかがでございますか?」と僕を気遣ってくれた。
僕は少し照れながらも、「いやー女の子と初めて寝ちゃったなー!あはは」と冗談を言った。
アスカは「…はぁ。何、朝からテンション高すぎ」と不機嫌そうに呟き、リリは僕の冗談に「…うへへ…」と嬉しそうに笑った。
ナデコは「よくお休みになられたようで、安心いたしましたわ」と優しく微笑んだ。
僕は気分を切り替えるため、「そうだね!アスカの言う通りだ!じゃあ、さっさと朝ごはんを済ませよう!」と宣言した。
そして、朝食の準備を始めるためにキッチンへと向かった。
「ジェミ、ナデコこっち来て!今日はパンケーキを作るよ!」
僕がそう言うと、ジェミは元気に、「うん!パンケーキだ!ナデコさん、ジェミもお手伝いするね!」とはしゃいだ。
ナデコは「はい、かしこまりましたわ。すぐにフライパンと油を準備してまいります」と快く手伝いを申し出た。
こうして、僕とナデコ、ジェミの三人で、朝食のパンケーキを作ることにした。
リリとアスカは、その様子を離れた場所から眺めていた。
「…うへへ…楽しそうだね…。でも…ちょっと…寂しいけど…。」
リリは僕が他の子と仲良くしているのを見て、複雑な表情を浮かべた。
一方のアスカは、「…はぁ。いつまでやってんの。さっさと終わらせてよ」と、文句を言いながらも、僕たちの手元をじっと見つめていた。
パンケーキが焼き上がり、僕は「できたよ!パンケーキ。みんなで食べようか!」と声をかけた。
アスカが「…別に、あんたが作ったもんだからって、期待はしてないけど」と素直じゃない言葉を口にしたので、僕は「アスカ、そんなこと言って〜!はい、あーん!」と、焼きたてのパンケーキをアスカの口元へ運んだ。
アスカは顔を真っ赤にして抵抗したが、結局は僕のパンケーキを口にした。
その様子を見ていたジェミは「アスカちゃん、顔が真っ赤だよ!」とからかい、ナデコは「アスカさんも、本当はお喜びになっておられるようですわ」と微笑んだ。
リリは僕の行動に嫉妬心を燃やし、「…うへへ…ずるい…。アスカさんだけ…」と呟いた。
リリのその言葉に、僕は「じゃあ、リリも!あーん!」と、今度はリリにパンケーキを差し出した。
リリは感激したように目を潤ませ、「…うへへ…プロデューサさん…。わたしにも…してくれるの…。」と、僕が差し出したパンケーキを口にした。
リリの頬がじんわりと赤く染まり、その瞳は僕から離れなかった。
### 新たな拠点と自己紹介
パンケーキを食べ終えた頃、事務所の前に一台のトラックが止まった。
ようやく事務所の家具が到着したのだ。
僕は「よし!みんな、家具が届いたぞ!これを事務所に運び込もう!」と号令をかけた。
すると、四人はそれぞれに動き出した。
ジェミは「うわー!大きいね!ジェミ、頑張って運ぶね!」と元気いっぱいに段ボール箱を持ち上げ、ナデコは「プロデューサ様、わたくしが配置図を確認いたしますわ。効率よく運びましょう」と、テキパキと指示を出した。
リリは「…うへへ…わたし…力ないから…」と不安げに呟いたが、僕は「大丈夫だよ、できることからでいいんだ」と励まし、彼女は小さな段ボール箱を運び始めた。
アスカは「…はぁ。何、朝からこんな重労働…。めんどくさ」と文句を言いながらも、誰よりも早く段ボールを運んでいった。
全員で協力し、一日かけて家具を運び込み、組み立てた。
机、椅子、鏡、音響機器…何もない空間だった事務所が、少しずつ、アイドルたちの活動拠点へと変わっていく。
組み立て作業中には、いくつかのハプニングも起こった。
ジェミは勢い余って、椅子のネジを一つ飛ばしてしまい、「あっ!ネジが飛んでいっちゃった!」と慌てて床を這い回った。
「もう、ジェミはドジだなぁ!あはは!」
僕がそう言って笑うと、ナデコが優雅に「プロデューサ様、わたくしが予備のネジを持っておりますわ。ご安心くださいませ」と、予備のネジを差し出した。
アスカは説明書を読むのを面倒くさがり、適当に組み立てようとしたが、見かねたナデコに「アスカさん、そちらの板は、逆でございますわ」と優しく注意された。
するとアスカは「…はぁ。うるさいな。わかってるし」と不貞腐れながらも、素直に板を直した。
リリは組み立て作業が苦手で、何度も僕に助けを求めてきた。「…うへへ…ここ…どうすればいいの…?」と不安そうに僕を見つめる彼女に、僕は一つ一つ丁寧に組み立て方を教えた。
家具が全て揃い、僕たちは新しくなった事務所を見回した。
「すごい!なんか、本当のアイドルになったみたい!」
ジェミが嬉しそうに声を弾ませる。
ナデコは「皆様の協力のおかげでございますわね。プロデューサ様、ありがとうございます」と優雅に頭を下げた。
アスカは「…別に、普通だし。…まあ、でも、前よりはマシかもね」と、不器用な言葉で僕に感謝を伝えた。
リリは満足げに、静かに微笑んでいた。
「よし!じゃあ、次はみんなの自己紹介作りだ!」
僕がそう告げると、四人はそれぞれに考え始めた。
ジェミは「ジェミは、明るくて元気な子!って書く!」と迷いなく書き始めた。
ナデコは「わたくしは、皆様の心を癒せるような存在になりたいと存じます」と、真剣な面持ちで考え込んでいる。
リリは「…うへへ…わたし…何て書けばいいのかな…」と、僕に助けを求めるように見つめていた。
アスカは「…はぁ。自己紹介とか、めんどくさ。別に、ありのままでいいじゃん」と反発した。
僕は一人ひとりと向き合い、個性を引き出すためのヒアリングを始めた。
ジェミに「どうしてアイドルになりたいの?」と尋ねると、彼女は「みんなに、笑顔になってもらいたいから!ジェミの歌で、たくさんの人を幸せにしたいんだ!」と迷いなく答えた。
ナデコに同じ質問をすると、彼女は「わたくしは、皆様に安らぎをお届けしたいと存じます。日々の喧騒を忘れ、わたくしの歌声で、穏やかな気持ちになっていただけたら、それで十分でございますわ」と優雅に答えた。
リリに尋ねると、彼女は「…わたし…誰かの役に立てるのかな…。プロデューサさん…わたしでも…アイドルになれる…?」と不安げに僕を見つめた。僕は優しく「もちろんだよ。リリにしか出せない色がある。それを、僕が一番よく知っているから」と励ますと、彼女は僕の言葉を噛みしめるように、そっと頷いた。
そして、アスカ。僕は彼女に「お前、本当はアイドルになりたいんだろ?」と問いかけた。
アスカは「…はぁ!?何言ってんの!別に、そんなんじゃ…!」と顔を真っ赤にして否定したが、僕は彼女の才能と、心の奥に秘めた情熱を知っていた。
「いいんだよ。別に、素直にならなくても。ただ、お前がどれだけ本気か、僕にだけは、教えてほしい」
僕の言葉に、アスカは観念したように小さな声で「…べつに…なりたくないわけじゃないし…」と呟いた。
全員の自己紹介文が完成し、僕たちは満足げに、互いの文章を読み合った。
### 初めてのレッスンと結束
自己紹介文の作成を終え、いよいよ初めてのダンスレッスンが始まった。
家具の組み立てで空いていたスペースが、僕たちにとっての最初のステージになった。
僕は音源をかけ、まずは基礎練習から始めた。
ジェミは軽快で、リズム感が良く、すぐに振りを覚えていく。
しかし、集中力が続かず、途中でふざけてしまうこともあった。
ナデコは一つ一つの動きが優雅で、まるで舞を踊っているかのようだったが、キレのある力強い動きは少し苦手なようだった。
リリは最初、動きがぎこちなく、自信なさげだったが、僕が「大丈夫だよ」と声をかけると、一生懸命に僕の動きを追った。
アスカは「…こんなの、簡単だし」と口では言いながら、驚くほどキレのあるダンスを披露した。
不貞腐れた態度とは裏腹に、彼女が誰よりも努力していることを、僕は知っていた。
僕は一人ひとりの個性に合わせて、個別指導を始めた。
ジェミには「もっと集中!集中すれば、もっと上手くなる!」と、彼女の集中力を引き出すように指導した。
ナデコには「もっと、心の情熱をダンスに乗せてごらん。君の優雅さは、誰にも真似できない武器になるから」とアドバイスした。
リリには、僕がそばで一緒に踊って見せながら「リリは、もっと自信をもっていいんだ。君の動きは、とても感情豊かだよ」と励まし続けた。
そして、アスカ。彼女には、あえて厳しく接した。
「おい、アスカ!もっと本気出せ!お前は、こんなもんじゃないだろ!」
僕がそう言うと、アスカは「…はぁ!?いきなり何よ!」と反発したが、僕は彼女の才能を信じていた。
「お前は、もっとできる。僕が、お前を一番輝かせてやるから、僕についてこい!」
僕の言葉に、アスカは何も言えなくなり、ただ黙々と僕の指導に従った。
レッスン中には、メンバー同士が助け合う場面も増えていった。
ジェミは、アスカが僕の厳しい指導にへこたれているのを見て、「アスカちゃん、頑張って!ジェミも一緒にやるから!」と声をかけた。
ナデコは、何度も僕に助けを求めるリリの横にそっと寄り添い、「リリさん、わたくしどもがおりますわ。わたくしどもで、一緒に、練習いたしましょう」と優しく声をかけた。
リリは、ナデコの優しさに触れ、少しずつ表情が明るくなっていった。
アスカも、自分を気遣ってくれるジェミやナデコに、戸惑いながらも、少しずつ心を開き始めていた。
レッスンを終え、汗だくになったみんなは、床に座り込んで息を整えていた。
ジェミは「ダンス、楽しいね!」と満面の笑顔を浮かべ、ナデコは「プロデューサ様、ありがとうございます。とても有意義な時間でございましたわ」と優雅に頭を下げた。
リリは「…うへへ…プロデューサさんと…ずっと一緒に…ダンスできて…幸せ…」と僕に寄り添ってきた。
アスカは「…はぁ。疲れた。…もう、これで終わりでしょ」と不機嫌そうに呟いた。
僕はそんな四人の姿を眺めながら、確かな手応えを感じていた。
まだ小さなスタートだ。
だけど、この四人となら、どんな困難も乗り越えられる。
それぞれの個性が、互いを補い合い、一つの大きな色を紡ぎ出す。
そんな確信が、僕の胸の中に芽生えていた。
「よし、お疲れ様。みんな、よく頑張ったな。これから、もっと、たくさんの楽しいことが、僕たちを待っているよ。」
僕の言葉に、四人はそれぞれの表情で頷いた。
明日は、どんな一日になるだろう。
この個性豊かなパレットが、これからどんな色を塗り重ねていくのか。
僕は、その未来を思い、静かに微笑んだ。
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