最後まで素直になれなかった──夢での会話──

🗡🐺狼駄@カクヨムコン11参戦中

素直になれなかった──夢中での会話──

「親父は家を出たいと思わんかったの?」


 ──タイミングがなかった。そんな考えが浮かばんかった。


「大学は東京で出たがね? そのまま(東京に)居たいと思わんかったの?」


 ──仕方がなかった。


「仕方がない?」


 ──だって鹿屋かのやには大学がなかったがね(当時)。帰って来いって言われたし。


「嗚呼、そうか……仕方がなかったかぁ……おいもやった」


 ──ないでよ?


「だってゲームを造りたかった。鹿屋には仕事がないがね」


 ──嗚呼……。


「本当は家を出たくなかったよ。友達作るの苦手やったし」


 ──そうなんか? 上手くやってたがね?


「仕方なくだよ、親父に『お前にコンピュータの仕事はむいとらん』いわれっせぇムキになってさぁ」


 ──お前はビンタが良いからなぁ……。


「そんな訳ないが、毎日無理してた。今でもずっとだよ」


 ──ないでよ? 稼いでるがね。


「稼いでないよ、こっちの当たり前。家もここに在るし……。鹿屋のは俺が潰したしな、ごめんな。仕方なかった」


 ──……。


「そぅ……。ないもかいも仕方なかった。本音はずっと家に居てお母さんの美味い飯を食っていたかったよ」


 ──……。


「ごめんな、今さらで。俺も本当は実家を無くしたくはなかった。思い出詰まってるしぃ」


 ──……。


「俺の家族と弟達を守るには、あれしかなかった。親父最期まで気張ったなあ」


 ──……。


「最後まで素直になれんでごめんな……。御互い今出来ることを一生懸命頑張っただけなんだよなぁ」


 ──……。


「ないか言えよ、夢に出て来たんやっで。まだ朝5時やっど。お陰で目が覚めたがね……。ずっと言えんかったけど親父を尊敬してたよ」


 ──どこがよ。


に噛り付いて気張ってたがね。俺には出来ん」


 ──お前達の家がなくなるから仕方なかっただけぇ。


「だよなぁ、知ってた。無理だよなぁ……。俺も無理だったんだ。家族4人連れて……1500km。ましてや猫も一緒に連れて帰るのはあの一回きり……」


 ──……。


「あれも必死やった。(乗船する時)猫をケージに入れて他の犬猫と預かって貰った時、子供達の辛そうな顔見てられんかった、これで最後だと思った」


 ──……。


「ほら、ないか言えよ。もう起きるぞ、嗚呼……(鹿屋の)ラーメンが食べたか」


 2025年9月20日 6:12 執筆

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