第8話 初めてのキスと屈服


 「んんっ……!!❤️」


 詩織が上げた、甘く、切ない嬌声が、湯気の立ち込める狭いバスルームにこだました。それは、羞恥と快感が入り混じった、初めての音色。その声を聞いた瞬間、俺の中で何かが、ぷつりと切れた。もう、躊躇う必要はない。彼女は、俺の支配を、その全身で受け入れている。


 俺は、彼女の豊満な乳房を揉みしだいていた手を離し、その華奢な肩を掴んで、ゆっくりとこちらへと向き直らせた。彼女は、潤んだ瞳で俺を見上げている。その瞳は、もはや抵抗の色を浮かべてはいなかった。ただ、これから俺が何をしようとしているのか、その全てを受け入れるという、濡れた光をたたえている。頬は上気し、桜色の唇は、快感の余韻で微かに開かれていた。その無防備な姿は、俺の欲望をさらに強く煽った。


 俺は、彼女の濡れた顎にそっと手を当て、親指でその柔らかな輪郭をなぞった。彼女の身体が、俺の指先の動きに合わせて、びくりと小さく震える。その反応すら、今の俺にはたまらなく愛おしい。俺は、ゆっくりと顔を近づけていく。俺たちの吐息が混じり合い、シャンプーと石鹸の甘い香りが、俺の鼻腔をくすぐった。嗅覚が刺激されるたびに、脳の芯が痺れるような快感が走る。


 そして、俺たちの唇が、そっと触れ合った。初めてのキス。それは、想像していたよりもずっと柔らかく、そして、熱かった。俺の心臓が、破裂しそうなほど激しく高鳴る。これが、キス。今まで、画面の中や本の活字でしか知らなかった、現実の感触。詩織の唇から伝わる熱が、俺の全身を駆け巡っていく。


 最初は、ただ唇を合わせているだけだった。だが、俺が少しだけ強く押し当てると、詩織の唇が、それに応えるように、わずかに開かれた。俺はその隙間から、自分の舌をそっと滑り込ませる。すると、驚くべきことが起こった。詩織は、抵抗するどころか、むしろ、俺の舌を探すかのように、自らの舌を、おずおずと絡めてきたのだ。その初心で、しかし、本能的な反応に、俺の理性の最後の砦は完全に崩壊した。


 俺は、詩織の腰を引き寄せ、彼女の柔らかな裸体を、自分の身体に強く押し付けた。湯気とシャワーの雫で濡れた肌が、隙間なく密着する。彼女の豊かな乳房が俺の胸板に押し付けられ、その官能的な感触に、俺の下腹部がさらに硬く熱を帯びるのが分かった。俺は、貪るように彼女の口内を味わい、彼女もまた、俺の全てを受け入れるかのように、深く、何度も舌を絡ませてきた。


 どれくらいの時間、そうしていただろうか。俺たちが唇を離した時、二人の間には、銀色の糸が、きらりと光って引かれていた。詩織は、はぁ、はぁ、と荒い息を吐きながら、俺の胸にぐったりと額を預けている。その身体は、快感の余韻で、小刻みに震えていた。もはや、彼女の中に、理性の欠片は残っていないだろう。キスと愛撫によって、快感に身を委ねるだけの、無垢な雌と化していた。


 俺は、そんな彼女の濡れた髪を優しく撫でながら、その耳元に囁いた。


 「……気持ち、よかった?」


 俺の問いかけに、詩織は、こくりと小さく頷いた。そして、顔を上げずに、俺の胸に顔を埋めたまま、消え入りそうな声で、こう呟いたのだ。


 「……うん……❤️ こんな、エッチなこと……❤️ させてもらっちゃって……ありがとう……」


 その、感謝の言葉。俺が与えた快楽に対する、純粋な感謝。その言葉は、俺の支配欲を完全に満たし、彼女を完全に俺のものにしたという、揺るぎない確信を、俺に与えたのだった。

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