侵食型

「まず、魔物には二種類あるんです」


「はい」


「汎用的なのが前に戦った徘徊している奴。そして、もう一種類がこれから戦いに行く奴なの」


 女装した状態の僕は早見さんと共に市街地を駆け抜けていく……なんかこう、市街地を駆け抜けるとなれば、当然ビルとビルを飛んで進んでいくことになるわけだけど……うん。

 下からの注目が凄い。

 和服着ている奴がパルクールしているんだからそりゃ視線は行くだろうけど……うぅん。気恥しい。

 女装している僕を出来れば見ないで欲しいっ。


「侵食型。そう、奴らのことを私たちは呼んでいるわ。魔法でもって世界を自分の領域に変える魔物というのも存在するのよ。街のど真ん中に現れ、そのまま辺りを森林に変えだすような魔物がね。彼らが生み出す異界は私たち人類から生存圏を奪う。早急に退治しなければならない相手よ」


「……えっ、何それ」


 何だその化け物。

 意味わからないくらいの化け物じゃないか。世界を侵食する魔法を使うとか……いや、何奴?そんなの異世界にもいなかったよ。

 そんな化け物がこの世界にはいるのか?こっわ。


「侵食型と戦う時は色々と気をつける必要があるわ。特にやつらが魔法でもって世界の侵食を始めるその瞬間。相手に精神を飲まれる可能性があるわ。だから最大限の注意が必要なの」


「えぇ……」


 しかも、精神汚染付き。

 トンデモナイ化け物じゃないか。能力が色々と怖すぎるんだけど。


「ただ、当人の強さそのものは徘徊型と比べて飛びぬけて高いというわけではないわ。だからある程度は安心してくれていいわよ……何ていう話をしていたらついたわね」


「うわっ、すごっ」


 大都会の東京の一角。急に忽然と姿を現した毒々しい色の森林に目を見張る。


「マジであるじゃん」


 信じられないほど強烈な魔力を垂れ流しながら徐々に、本当に徐々にではあるけど着実に周りの景色を取り込んで大きくなっていっている。

 

「これは、危険だね」


「えぇ、そうね。これを放置するわけにはいかないこと、蓮夜くんにもわかっていただけたようで嬉しいですよ。それじゃあ、行こうか」


「はいっ」


 ビルの上から毒々しい色の森林を眺めていた僕と早見さんは一緒にその場から飛び降りて下の方に向かう。

 向かう先には既に森林の前でスタンバイしている派手な格好をした魔法少女たちの姿があった。


「援軍……あぁ、第三課の」


「……?」


 その魔法少女の人たちは僕たちを見た瞬間、ちょっとばかり落胆したかのような表情を見せる。

 ふぅむ……もしかして、公安魔法少女第三課って周りからの評価低いのか?よくよく考えてみれたら第三課とか名乗っているのに早見さんと土御門さんしか見たことないし……就職先間違えた?


「あー、よし!今回の作戦に参加する者たちが揃ったな」


 なんてことを考えていた中、この一団の先頭にいた魔法少女が声を張り上げる。


「本作戦の指揮を執る公安魔法少女第一課、魔法少女ランキング第十五位の鈴木安奈だ。よろしく頼む」


 魔法少女ランキング……!?えっ!?ランキングとかあるの!?ランキングで評価するシステムなの!?嘘でしょ?何をどう考えたら魔法少女にランキングをつけようってなるの?

 正気の沙汰じゃないでしょ!……えぇ、国の為に戦っていると思われる魔法少女を順位付けしようとか性格悪すぎるでしょ。


「本作戦は公安魔法少女第一課の魔法少女九名。それと公安魔法少女第三課の魔法少女二名。合計十一名でもって侵食型の魔物を討伐し、彼が生み出す異界を我々で取り戻すのだ」


 ……魔法少女はいないな。公安魔法少女第三課に。

 

「公安魔法少女第三課の方々が到着してさっそくだが、時間も押している。早速突入するぞ。隊列用意っ!」


「「「はいっ」」」

 

 鈴木さんの号令がかけられると共に、第一課の人たちが隊列を組み始める。


「……?」


「あぁ、私たちはそんなのないから。好きについていきましょう?」


「あっ、はい」


 うちにはないのか、隊列。改めて思うけど、就職先ミスったかもしれない。

 公安魔法少女第三課。なんか公安魔法少女の中でも普通じゃない立ち位置だ……いや、まぁ、女装している変な奴を受け入れてくれるのは第三課しかないのかもしれないけど。


「……」


 それにしても、誰も僕の格好についてツッコまないな……僕が女であると誰も疑っていないように見える。

 声とかちょっと高いのを意識している程度なんだけど。

 いや、うん……ショックだわぁ。


「よし……油断はするなよ。それでは、突入する」


 誰も僕の格好に疑問を抱かない……その事実に落ち込みながら、僕は異界に入っていく魔法少女たちについていくのだった。

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