あさひとゆうひ
@n01-
第1話
出会いは突然だった。
_________ でも、運命だったと思う。
その日はえらく風が強くて、俺たちがこれから3年間通う学校へ続く桜並木は、大きくざわざわと音を立てていた。
ピンクの花びらがひらひらと舞い落ちる中で、俺は一際目立つ色を見つけた。
- あさひとゆうひ -
「オレンジ。」
思わず声に出していた。
俺の声に反応して、鮮やかなオレンジがゆっくりと揺れた。少し色素の薄い、大きな瞳がこちらを向く。
やべ。聞こえてた。
黒髪や暗めの茶髪の新入生が歩く桜並木で一際眩しいオレンジ色の髪の少女は、俺と同じく胸元に緑色のバッジをつけている。あ、この子も新入生だ。
ぼけっとそんなことを考えていると、"オレンジちゃん" は俺をぎろりと睨みつけた。
でもこちらを睨む栗色の大きなつり目とふわりと柔らかそうなオレンジ色の髪は、姉が一人暮らしの家で飼っている猫の「みかん」によく似ていて、あまり怖くない。
「すごく、綺麗だね。」
思ったことがそのまま、口をついて出た。
俺自身も、俺の口から出た素直な言葉になんだかびっくりした。
" オレンジちゃん " は、大きな目を何度もパチパチと瞬きする。本当に猫みたいでなんだかかわいい。
「、、、綺麗?」
ふにゃりと、" オレンジちゃん " の表情が緩むのがわかった。綺麗って言われるの、嬉しかったのかも。
「うん、夕焼けみたいな色。俺好きだよ。」
そう言うと、" オレンジちゃん " はとても驚いたような顔をして、それから恥ずかしそうに並木道を進み始めた。
なんとなく、もう少し話したくて、俺も彼女の横を歩き出す。俺がついてきたことに少しびっくりしながらも、ぽつりぽつりと彼女は話し始めた。
「私が、生まれた時、夕方だったんだって。」
「へえ、そうなの。」
「病院の窓から見た夕焼けが、嘘みたいに綺麗だったから、私の名前、夕陽になったの。」
そう言われて今度は俺がびっくりして。
鳩が豆鉄砲を食らったような顔、というのがどんなものなのか俺は知らないけれど、きっとそんな顔をしていたと思う。
「え、どうしたの。」
「俺、生まれたのが、スッゲー朝でさ。」
「うん?」
「その時、病院の窓から見た朝日が綺麗だったからって、旭って名前になったんだ。」
お互いに、顔を見合わせる。
一拍置いてから、2人して笑った。
「あっははははは!!!
待って!?すごくない!?」
「やべー、すげー、そんなことあるんだ!?」
「もう絶対あんたの名前忘れない自信ある!」
「俺ももう絶対忘れねーよ!!」
そう言いながら歩き進め、
とうとう校門をくぐった。
「はー、おかしかった、ごめんね、初対面なのに一緒に登校しちゃって。」
そう言って " オレンジちゃん " いや、" 夕陽ちゃん " は俺に向かってにこりと笑った。
「これからよろしく、" 旭 " !」
オレンジ色の髪よりも、
その笑顔が俺の目には眩しく映った。
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