第19話 妹よ、夫と愛人の罰は兄に任せろ
「お兄様さっきから少しお戯れが過ぎますよ?」
イリスは兄の顔をじっと見つめて申し訳ない程度に怒ったように言った。
「そうだな。私は悪乗りしてしまっていた……」
妹からやんわりと
「さすがお兄様、ご理解いただいたようですね」
兄が泣きそうな顔で深く反省しているので、イリスは心の負担が軽減してほっと安心した気持ちになる。
「ふふっ」
その時シモンは何とはなしに遠慮がちに笑う。
「ん? お兄様何を笑っているのですか? 人が真面目に話しているのに……このままではお兄様の目を覚ますために頬を叩かなくてはいけなくなりますよ」
イリスは戸惑ったような表情を見せてから、ムッとした顔を浮かべて兄を睨んでから話した。
口で何度言っても言うことを聞かないなら、体で分からせる必要がありそうですねとやり場のない感情を向ける。
「イリス解誤だ! いや勘違いさせた私が全て悪かった」
徹底的に溺愛している妹から怒られて、シモンは弁解するような口調で切り出し大慌てで頭を下げた。
「え?」
イリスは半ば当然のように驚きの声を発しますが、混乱している妹をよそにシモンは自分の本心を明かし始める。
「私は本当に嬉しかった。イリスがすっかり大人らしく洗練された女性になって幸せを感じていたんだよ」
小さかった妹がなかなか立派に意見を言えるようになったなと、シモンは愛情のある瞳で眺めて妹の成長を喜んでいた。
妹に少し怒った顔で真剣に見つめられている間は、兄からしたら睨まれても食べてしまいたいほど愛しくて、無上の歓喜と無限の幸福を存分に味わっていた。
兄は言い知れぬ心地良さに妹には秘密だが、恥ずかしながら数回は幸福の絶頂感に達した。
「お兄様どういうことですか? どうか理由を細かくご説明してください!」
自分は兄に子供扱いされたと感じたイリスは、心情的に納得いかなくて目をつり上げると、鼻と鼻が触れそうなほど迫って兄を睨み続けました。
「イリスそのくらいにしてくれ。私はもう充分だよ」
また元気に復活してシモンの大砲が火を吹く準備をする。これ以上は限界で体がもたないので、いい加減にしなさいという思いで強く声を出すしかなかった。もう少し遅ければ遠くに行って戻れなかったと自分でも感じる。
そうなればシモンは意識が飛んで、その場に倒れて肩身の狭い思いをすることになる。イリスにも頼りにならない兄だと悪口を言われて、お前は何しに来たのか? と役立たずと思われるところだった。
「ふーっ、ひっ・ひっ・ふー、ひっ・ひっ・ふー」
「――お兄様?」
シモンは大きく深呼吸を一つした。それから鼻から息を吸って何度か同じ呼吸を繰り返す。シモンがいつもやっている意識を集中させる呼吸法だった。
「イリスここまでよく一人で耐えて頑張ったな」
シモンは愛する妹に優しく言葉をかけた。
「はい……本当はとても怖かった。早くお兄様が来てくれないかと不安で仕方ありませんでした」
「遅れてすまなかったな。だが私が来たからには心配はいらないよ。あの二人は私が制裁を下すから、あとは任せてイリスは何もしなくて後ろで見てるだけでいいからね。イリスはいるだけで価値がある女性なんだからね」
シモンは妹をもう一度抱きしめてキスをしたかったが、これ以上の興奮を許してしまえば、これから一戦を交えるレオナルドとエレナに体力を消耗しつくした状態で戦うことになる。
今はエネルギー残量への注意が重要となると思いながら、シモンは顔を引き締めてエレナに厳しい視線を向けた。兄と妹は同じ希少な緑色の眼をしている。
完全に戦闘モードの顔に切り変わり、シモンは瞳をキラリと輝かせて一歩を踏み出した。
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