第18話 兄と妹の意見交換と時々キスに抱擁
「はぁー、お兄様ったら相変わらずですね」
イリスはため息をついて言葉を返した。兄の溺愛ぶりには昔から頭を悩ませていたが、数多くの人々を天災に巻き込むような危険をはらんだ思考はよくない。
「何がだ?」
どうしたの? という感じでシモンはぼんやりと首をかしげ不思議そうな顔で尋ねた。
「伯爵領を消滅させるなんて……冗談でもそんな物騒なこと言わないでください」
とても大切に思ってくれる兄にイリスはありがたく感謝していますが、だからと言って普通に生活を送っている人の生命を脅かすことは褒められない気持ちでいた。
「でもイリスがこの世からいなくなって二度と会えないと思うと私は悲しくて寂しくて……どうしようもなくなってしまうくらい追い詰められてしまう」
シモンは哀愁を帯びた悲惨な顔になり、妹が永久に姿を消してしまうなんて考えられないと言い、心が切なく苦しくなると悲痛な思いに沈んだ。
「お兄様この地に住んで平和に生きて暮らしている人は大勢いるのですよ? そんな人を困らせてはいけません!」
日頃から人として道徳的な感覚を持っているイリスは、むやみに人を傷つけることが正しくないと考えているので説得する口ぶりになった。
「確かにそうだな。イリスごめんよ。私が最初から最後まで間違っていた」
「ええっ!?」
イリスはふいに宙に浮かされて新鮮な驚きを感じ慌てた声を発した。すぐに兄に抱き上げられたのがわかった。シモンは妹を高く抱き上げると頬ずりを繰り返して、イリスは愛情のこもった所業を受け続けた。
「お兄様? 次は何を?」
戸惑うイリスにお構いなしに、シモンは抱っこからおんぶにスタイルチェンジした。蝶が飛ぶように動き回ってイリスを楽しませると、また抱っこに戻って幾度も首筋にキスをすると唇を奪った。
シモンは妹の髪の毛一本に頭のフケに皮膚の垢に至るまで愛して、ひたすらイリスを一途に愛情をこめて崇拝している。
そんな恋しくてたまらない妹に瞳を見つめ続けられ、心を熱くして説得されたら、シモンに否定的な意見を口にすることは出来るわけがない。
兄に思いのままに弄ばれて妹は怒ったのか? 眉間にしわを寄せて険しい表情で睨んでいた。その時イリスの顔がぱっと明るく眼はきらきらと輝きました。
「――さすがお兄様! 私の気持ちをご理解いただけると信じていました」
どうやらイリスは、兄にそうしてほしかったらしく満足していた。自分の気持ちを察してもらえて、救われたような喜びを感じて晴れ晴れとした声で言う。
「私はいつでもイリスと同じ気持ちだよ」
「私の気持ちは何でも分かるのですね」
「さっきの話はイリスがどんな反応するのか試してみただけさ」
「お兄様は常にクールで素敵です。先ほどの動きも素晴らしかった」
先ほどシモンは妹がいなくなったら、伯爵領の全てにおいて建物や草木に人も動物も何もかも無い取り払われた土地にするとかなり本気で言った。
でも妹に気に入られたくて嫌われたくなくて試したと格好いいことをとっさの判断で言ってしまう。二人は抱き合い再びキスを開始した。
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!周りにいるメイドたちから爆発的な拍手が沸き起こる。
「奥様ーーーーっ!」
「マダムーーーーーーーーー」
「麗しいマーム!」
「イリス様ーーーーーーー!!」
「デイム素晴らしい」
「ジェントルウーマン!!!」
「輝かしいレディー!」
メイドたちは一斉にアクセル全開で手を叩き歓声を上げた。感動の嵐が巻き起こり過熱するメイドたちの黄色い声援が飛び交う。
心を打たれずにはいられなくてポケットからハンカチを取り出し、誰もがみんな涙が止まらなくなり息つく間もなく感動にハンカチを濡らしていく。
雰囲気が落ち着いてくるとメイドたちは胸に手を当てて、尊い最高の女性であるイリス夫人の幸せな顔を眺めながら幸福に浸っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます