第7話 悲しみの妻に頼りになる兄が登場
「イリス何を怒ってるんだ? 出て行くまではエレナと一緒に仲良く生活しなさい」
「奥さんよろしくね」
レオナルドは不満や怒りで感情的になっている妻に意味がわからないという様子で、エレナと良好な関係を築くことを望んだ。
エレナは何事もなかったかのようにイリスに軽く挨拶をしたあと、後ろからレオナルドに抱きついてわざとらしく甘えていました。
「イリスはくれぐれもエレナを困らせるような事はするなよ? お前たちもエレナには手厚い待遇をするようにな」
レオナルドは妻にエレナに迷惑をかけてはいけないと注意するが、イリスは納得できない思いで苦々しい顔をしたまま何も言わなかった。レオナルドはエレナを丁重にもてなすようにとメイドにも指示していた。
「旦那様ちょっと教えていただきたいのですが、どういう事でしょうか?」
先ほどから話を聞いているうちに、疑問を抱きながらも慎重な姿勢を見せていたメイドの一人が代表して口にする。
夫人のイリスにぞんざいな態度を取り続けるレオナルドとエレナに、メイドたちは強い反感を抱き嫌悪感を募らせていた。
「私とイリスは、近いうちに離婚する」
「え?」
レオナルドは無表情な冷たい眼でメイドをじっと眺めてから口を開く。主人に厳しく見つめられてメイドは緊張感から自分の体温が上がっているのが感じられる。
イリスと離婚すると聞いて、思いがけない話にメイドたちはすっかり驚いてしまった。
「まだイリスとは離婚していないが書類上のことに過ぎない。エレナが妻、すなわち正妻として節度をわきまえて礼儀正しく振る舞うようにな」
夫婦はまだ正式に離婚していないのに、愛人のエレナの方が妻のイリスよりも立場が上で大切に扱えと宣言するように言う。
「わかりました」
メイドたちは互いに相手の顔を見て困った表情をして、心配しているような視線をイリスに向けていた。でも主人の命令なので受け入れるしかなかった。
「それより私お腹すいちゃった。朝ご飯まだなんだけど……」
ふと気がついたようにエレナは言う。まだ朝食をとっていないことに気づいた。エレナがやって来てレオナルドは嬉しくなり幸せそうな笑顔で迎えた。
その後、部屋に移動して陽気なおしゃべりをつづけて、二人は空腹も忘れて一緒に暮らせることを喜び合う。部屋にいるメイドの目も気にせず、ひたすら遠慮なしにべたべた触れ合って笑顔が絶えなかった。
レオナルドとエレナは両想いで互いに他の何よりも愛しい存在だと改めて認識していた。
「――イリス大丈夫か!? 妹よ兄が助けにきたぞぉぉおおお!」
その時、玄関ホールの広い空間に響き渡るような叫び声があがった。
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