第26話日常
「あれ、マチルダだ。魔王討伐終わったの?」
ニーナとアリスを連れてアルシア王国に魔王討伐を知らせるために、ギルドに歩いていると途中でグレイデンにあった。少しは気まずくてもいい拗れた関係なのに、彼は飄々としている。
「ええ、魔王は討伐したわ」
そう答えるとグレイデンは「ありがとう」と笑った。
「勇者パーティーだもの、当たり前よ。」
私はそう答えるとグレイデンは柔らかい笑みで暗い顔をするみんな【パーフェクトヒール】を施した。ニーナも素晴らしい魔法使いで、ヒールも使えるけれど、やはりグレイデンのギフトは凄い。骨の傷から皮膚のかすり傷まで全てを治してしまった。
「か、感謝しますわ…」
アリスはそれに頭を下げる、ニーナもそれに続いて頭を下げるがやはり二人とも元気はない。元人間を殺していたと知ったのだからそう簡単には立ち直れない。
それは少なからず私も一緒だった。
「いいの、いいの。そんなことよりさオリエン見なかった?」
グレイデンは二人に軽く手を振ると私に尋ねた。
「オリエン…?」
「そう…カルマダンジョンの依頼受注をキャンセルしに行ってから帰ってきてないんだよね」
「カルマダンジョン…!?」
私はその言葉に身体を飛び跳ねた。カルマダンジョンと言えば今エリアスが対処している、異常のあったダンジョンだ。
「何か知ってる?」
「ええ…」
私が説明をしていると、途中で二手に分かれていたエリックも合流してまた説明を加えた。私は焦って話すけれど二人は思ったよりも落ち着いている。
「エリアスがいるなら大丈夫だろうけど…傷がひどかったら危ないし、急いだほうがよさそうだね」
「一人で行くなんてどうしたんだよ…オリエン」
「え?」
私は二人の言葉に驚いた。二人はエリアスがオリエンに虐められていたことしか知らないはず、エリアスが今だオリエンを思っているなんて知らないはずだ。
オリエンがエリアスに殺されると思ってもおかしくない。ニーナとアリスに後のことは任せて、ダンジョンまでのワープ装置に急いで向かっている時に私がそれを聞けばグレイデンが笑った。
「ずっと思ってたんだけどさ、マチルダちゃんが昔言ってたけどエリアスの心って死んでるようなものなんでしょ?」
「ええ…」
それは確かだ私が何度聞こうとしても声が聞こえないのは、心が死んでしまった抜け殻のような人だけだ。
「これはオリエンから聞いた話なんだけど…オリエンには好感度てのが見えるんだって」
「好感度?」
意味がわからないけど、言葉のまんまの意味を受け取れば、自分に向けられている好意の度数がわかるのだろう。
「そうそう、それで平均が…確か60で今のエリアスは46なんだ」
「だからなに…?」
「心が死んだ人間が人にこんなに好意向けられるかな…。」
「え?どういうことだ?」
横を走るエリックも意味が分からずに首を傾げる。エリックは多分本能で大丈夫だと思っているだけなんだろう。
「つまりさ…本当に心が死んでるんならさ、実はエリアスってオリエンのことめちゃくちゃ好きなんじゃないかなぁて。まぁ、俺の推測だけどね」
◇◇◇◇
「…心臓が熱い、昔オリエンに拒絶されてからずっと冷たかったのに」
俺はエリアスに全てを話した。グレイデンやエリックに言ったことは勿論、俺が前世の記憶があることだったり、本当に全部。きっと話さなくて良いようなことも話してしまっただろう。でも考える頭がグシャグシャになっていて情報を整理することが出来なかったのだ。
「生き返った気分」
そして俺はそれから数分間エリアスにずっと抱きしめられているわけだ。
エリアスはこれでいいのか…?
「俺はどんな理由でもエリアスのこと虐めたんだぞ?その…復讐とかないのか?」
そう言うと頬を健康的な赤にさせてエリアスは俺を今度は真正面から抱きしめた。
「…じゃあ、オリエン俺のものになって」
「は…」
それは復讐になるのか疑問だし、なんで好感度46の相手にそれを言うのも疑問だ。そんなの復讐になるはずがない、俺はそれを嫌だと思わないんだから。俺が驚いて固まっていると、エリアスはネックレスに付けていた指輪を外して俺の左手の薬指にはめた。
「これはお願いじゃないよ?」
エリアスはニッコリと笑ってそう言った。これは強制らしい、でも嬉しさで涙が溢れた。
「あぁ…っ!」
そうして俺はまたエリアスの体温に包まれた。
◇◇◇◇
「オリエンは僕のだって何度言えばわかるの?」
「はぁ??別に付き合ったわけでもないだろ!!」
「いーや、もう結婚予定だから」
「は!?嘘だ!嘘だ!」
「嘘じゃない!だからもうオリエンにベタベタすんなよ」
「嘘だ!!!」
連日パーティーで依頼を受けていたせいで、爆睡していたのだが、どうにも二人の喧嘩で起こされてしまったらしい。
せっかく魔王討伐の祭りの雰囲気も薄れて日常が帰ってきたというのに…本当静かにしてほしい
「うるせーぞお前らー!!」
だからベッドから降りて二人が喧嘩しているであろう俺の部屋の前の扉を開ける。どうせどっちが起こすとか起こさないとかで喧嘩を始めたのだろう。
「オリエンおはよう!!!」
「あぁ…はよ」
「おはよう!オリエン聞いてよエリックが僕たちが付き合ってるのが嘘だとか言ってくるんだよ??」
二人は俺が現れるやいなや喧嘩はやめたが、それでも目線には火花が散っている。
「今日も喧嘩してるの…」
騒ぎに駆けつけたマチルダちゃんもそれを見てため息をついた。
「本当元気だね」
グレイデンはどさくさに紛れて俺に肩を組んできた。やっぱりジャラジャとついている耳飾りが擽ったくてしょうがない。
「あっ!クソ僧侶どけオリエンに近づくな!!」
「えー」
二人の喧嘩から三人の喧嘩になって、声量も上がる……
「お前らうるせぇーーーーー!!!」
俺は三人を振りほどくと初級水魔法で三人まとめてずぶ濡れにして、部屋にまた閉じこもった。
「本当困ったもんだよなぁ…」
あの後、みんな改めて話をすれば、それを信じてくれ俺達はめでたく仲間に戻れたのだが…それからはずっとあんな感じでまいってしまう。
偶に遊びに来る漫画の登場キャラクターである、アリスやニーナもあの子供のようなエリアスに驚いていた。
それも無理はない、漫画では一応ダークでクールなヒーローだもんな。
『…本当にどうにかしたほうが良いと思うぞ』
その時、パーフェストも呆れたように喋った。魔王が討伐された今でもこうやってちょくちょく喋りかけてくるのだ。
「ほんとほんと…」
『もう制限がなくなったからといって好感度を上げすぎだ』
(え…俺…?)
まさか自分のことを咎められていると思わずにそう言うとパーフェストはため息をついた。
『エリックが154、グレイデンが156、エリアスに至っては223…お主は何を求めているんだ』
パーフェストは今も廊下で揉めている3人の好感度を羅列する。
(いやぁ…勝手に上がるだけだから!!!何も求めてねぇよ!!!)
俺はそれに反論した。言い訳させてほしい、本当に何もしていない。エリアスはダンジョンから帰って一段落した頃、興味本位で見てみたら何故か200以上だっただけだし。エリックとグレイデンも、何も俺はしていなのに好感度が上がっていくのだからしょうがないだろう。止めようがない。
『まぁ、もう好きにすればいいが…我はお主の貞操の為に言っておるだけだしな』
(そうそう、黙ってろ……、ん?)
今聞き逃してはいけないことを言われた気がする。気の所為だよな…?
(今なんて…?)
『貞操の危険がある。』
(…………はは)
汗がダラダラと全身を伝う。
まだ少しの間好感度を下げる努力をしないといけないらしいです。
でも今度は…緩めに?
ザマァキャラに転生したから、好感度50を目指します チーズ @teezu
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