鉄拳ゴリスを叩き倒せ!第二戦

「おっと、勝ち逃げは許さねえぜ!」


観客席から歓声が響く。


光が点滅し、舞台を照らした。


「おお、鉄拳ゴリスだ!」


「イカサマ野郎をぶっ飛ばせ!」


リングに現れたのは、

鉄の籠手をはめた巨漢――鉄拳ゴリス。


唸るような声で吠えた。


「借金まみれのガキども、ぶちのめしてやる!」


ナナのスマホが自動で起動し、

相手の情報を解析する。


【対戦相手:鉄拳ゴリス】

【弱点:腹部の古傷】

【借金:+50万(勝利ボーナス待ち)】


「よし、弱点は腹部!」ナナが指差す。


「ただし、古傷だから最初にダメージを与えてよ」


「おお、ナイス! いけるな!」


俺は大きく頷いた。


銅鑼が鳴り、試合開始。


俺は真っ先に突撃――しようとしたが、

観客席に目をやって、借金傭兵に手を振る。


「おいリサ、今のうちに俺に賭けろ! 倍率三倍だぞ!」


「戦闘中にわき見するなぁぁぁ!」


その瞬間、ゴリスの拳が飛んだ。


ズドン!


地面に深い亀裂が走る。


砂煙が爆発的に上がり、

リング全体が低く振動する。


風圧が俺の頬を叩く。


シルクの体当たりにもびくともしない巨漢の体は、

微動だにしなかった。


「やばいやばいやばい!」


咄嗟に叫びながらスマホを連打する。


《敵の古傷:防御値低下中。あと20秒で回復》


「なんだ、効いているじゃねえか。腹だ!」


だがゴリスは重い拳を振り回し、

シルクを弾き飛ばす。


観客席からは野次と歓声が入り混じる。


「もっとやれ!」


「何度でも腹を狙え!」


リサが鋭く叫んだ。


「ミチル、あんた不正を疑われてるわ!


観客は金にしか興味ない!

ここは見世物として派手にやって!」


その言葉に、俺はにやりと笑う。


「つまり……演出込みで勝てってことか!」


俺はゴリスの巨拳を紙一重でかわし、

わざと派手にリングを転がる。


――ドサッ!


砂を巻き上げ、シルクが即座にフォローで跳び上がり、

観客の視線を一身に集める。


観客は一斉に沸き立つ。


「おいおい、ガキが転がってるぞ!」

「金かけろ、倍になる!」


野次が飛び交い、賭け金が飛ぶように積まれていく。


「おらぁぁぁ!」


ゴリスの拳が再度唸りを上げる。


鉄鋼で固められた凶器が頬をかすめ、血が滲む。


「痛ってぇな……! なら、倍返しだ!」


怒りを込めた前蹴りを、

古傷の腹部へ直撃させる。


衝撃でゴリスの体が宙に浮き、

リングへ叩きつけられた。


ドシン――鈍い音が鳴り響く。


大男はそのまま大の字に倒れた。


会場は一瞬の静寂の後、

割れるような歓声に包まれる。


「勝者、借金返済トリオ!」


場内は熱狂し、

金貨がキラキラと照明に反射して宙を舞う。


「残価マイナスがまた勝ったぞ!」


「鉄拳ゴリスを倒すなんて! ガキがやるじゃねえか!」


リサは大声で笑った。


「……悪くない、アンタら。

これなら本当に借金返せるかもね。


けど、熱くなりすぎだぜ――外の空気、重くね?」


俺はスマホを見やり、

ナナの笑顔を確認してから拳を握る。


「よし……これで二勝目だ」


「ふざけんな、くそガキ! 金返せ!!」


「ゴリスを倒したら本物だ! 次も頼むぜ!」


観客からの声援? に、

スマホを握った手を大きく掲げる。


地下闘技場の空気は、

ますます熱を帯びていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る