第28話 眠りと覚醒のあいだで
ローザは氷の薔薇の前に座り、爪に赤をのせる。小瓶にはもう、キシの血は入っていない。色は、彼女自身の誓いで発色する。
祈りに来た子どもが言う。「神さまはいるの?」
「いるよ。――あなたの心が置かれた場所に」
「どこ?」
ローザは微笑む。「眠れる氷の薔薇のなか。時々目を開けて、時々眠って、それでも、ここにいる」
夜がゆっくり降りる。不夜城にも、はじめて朝が来るだろう。猫の墓に草が生え、酒の匂いが風に散るだろう。ユラの涙は透明で、ローザの涙は赤いまま。違いは違いとして、抱きしめられる。
ローザは小さく呟いた。「神を探す夢は、終わらない。探し続ける限り、私は大人でいられる」
その指先が白鍵に触れる。アリレイの影が、そっと音を置く。
歌が始まる。祈りは、世界にゆっくりと溶けていく。
――神は眠れる氷の薔薇に。
――そして、あなたの胸のうちに。 終
神は眠れる氷の薔薇に @nana-yorihara
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