第3話 主人公目線「名前の消失」
業務の合間に、人事システムの360度評価を確認する機会があった。気になって検索欄に、あの端の席のおじさんの苗字を入力する。
結果はすぐに出た。対象者の欄に、昨日読んだのと同じ「評価不能」のコメントが並んでいる。
だが次の瞬間、画面がちらつき、対象者の名前が「私」に書き換わった。
「無口」「存在感がない」「いつも端に座っている」──見覚えのある評価が、自分の項目として表示されている。
最後の一文にはこうあった。
「昨夜、事故により死亡」。
血の気が引き、振り返る。そこには、私の席でキーボードを叩くおじさんの姿。机の上には、私の社員証が無造作に置かれていた。
慌てて自分のモニターを覗き込むと、反射した画面にはおじさんの顔が映っている。
呼吸が合わさるように曇る液晶の表面。映っているのは、私の身体に収まった“彼”だった。
端の席 彼辞(ひじ) @PQTY
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