第2話 ある時間

 優と凛は近くのカフェに来ていた。今後の未来の自分たちの話し合いをしに来ていたのだ。

 夏が近くなり始めているためか、店内は程よく冷えていた。しかし、それほどのことを考えている余裕も意識もできないでいたのだ。

 メニュー表を見た2人は視線を下に落とした。

 このメニュー表に載っているのは全部嘘であるのだろうか。


 いちごパフェ。フルーツてんこ盛りパフェ。チョコパフェ。


 サマザナパフェがずらりと綴られている。糖がすぐそこに来ているのだ。

 さて、今日は何を頼もうかと考えてみる。しかし、そういう考えはしてはダメだとも考えはみる。

 そして勝者は――



「すみません! いちごパフェとチョコパフェを一個ずつ下さい」


 一生懸命にメモをとっているバイト生らしきに人声をかけ終えた両者は見合った。


「さて、ダイエットは明日からやるとして!! 最近調子はどう?」

 すると現実から目を背けるためか、凛は口を開いた。そのボールを受けったのか優は水を飲み静かにコップを置いた。


「全然さ。クラスでは浮いているし、最近できた友達だって居ないよ」


 そうさ、俺には友達が居ない。と、いうよりできないのだ。話している時に感じるあの感情が邪魔をする。

 この人は信じてもいい人なのか。どういう人なのか。俺のことが嫌いではないのか。

 などと言った感情が邪魔してくるのだ。


「うわー、そっか! そういうもんだよね」

 節々に感じる言葉使いは優しさをも匂わす。洒落た音楽が流れ始める。

 落ち着くような、なんていうか、穏やかにしてくれる男。


「ねぇ、私たちって太ってると思う?」

「……太ってるとは思うが、平均より上だな。多分」

 明確に目安がない以上、自分たちが太っているのかが分からない。鏡に映った自分は太っているように見えるが実際にはどうなんだろうか。

 俺的には目の前にいる凛は太ってはいないと思う。艶のかかった髪に、整っている顔。

 これらの容姿を持ち合わしていて太っているなどとの勘違いをしているのならきっと怒られるだろうな。


「と、いうより凛は太っていと思うんだが?」

「そうかな…………私、容姿に自信がなくて」

 どことなく不安を乗せた声は優の耳を突く。不思議と音楽の音色も変わっていく。


「でもね――」


「凛と優?」


 凛の声ではない誰かの声が耳を叩いた。半音高く嘲笑っているかのような声は――クラスで1番の人気を誇っている花咲夏帆であった。


「なんでよ? ねぇ答えて!」


 怒り。不安。心配。哀れみ。喜び。


 どの感情を取って探したとしても夏帆の声色には合わないでいた。

 少しだけ怒っているような、少しだけ悲しんでいるような。そんな声を店内に響かす。


涙を流しながら夏帆は言った。


「大っ嫌い」

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冴えない僕と君は今日も努力する @sink2525

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