甘い夜

//SE 水道の水音と食器の鳴る音。


「もうすぐ終わるよ。そんなの後でいいのに? 手伝ってくれたら早く終わるよ」


//SE 近づいてくる足音。


「じゃ、食器拭いてくれる? 洗い終わったら私も拭くから」


//SE 食器を拭く音と水音。食器を洗う音。


//SE 水音が止まる。食器を拭く音。


「いつもはどうしてるの? ちゃんと食器洗ってる?」


「食器が溜まってからまとめ洗い? ダメだよ、ちゃんと洗わないと」


「はい、これ食器棚に片付けてくれる?」


//SE カチャカチャと食器の鳴る音。


「はい、片付け完了! お疲れ様でした。ちょっとゆっくりしよ」


//SE ソファーに腰を下ろす音。


「ふふ、やっぱり落ち着く……ずっとこうしてられたらいいのにな」


「鼓動が早いね……私にドキドキしてくれてるの?」


「ねぇ、私に会えなくて寂しかった?」


「当たり前? 私も寂しかったよ」


//SE 軽いリップ音。


(小声で)

「幸せだな……」


//SE 小さな衣擦れの音。


「や、ヤダ、どこ触ってるの? くすぐったいって」


「お腹はダメだって」


「このむにむにがたまらない? やめてよ、気にしてるんだから」


「触らないでよ。恥ずかしいから。ちょっと太ったって言ってるでしょ? だから触っちゃダメ」


「ほんと、ダメ、くすぐったいって……やんっ」


「もぉ、変な声出ちゃったじゃん!」


「もっと聞かせて? なに言ってるの、本当に。もしかして疲れてる? 疲労で頭おかしくなっちゃってる?」


「照れてるんだろって? ……そうだよ、照れてるよ、照れてます」


「だって、久しぶりだし……」


「って、もう! からかってるでしょ? だからやめてってば、くすぐったい」


「もぉ、だったらこうだ! えい!」


//SE ドタバタとした物音。少し上がった息遣い。


「参った、降参? 足の裏弱いの知ってるんだからね。私に勝てるわけないでしょ」


「ふふ、なんかいいね、こういうの」


(ねだるような声で)

「ねぇ、後ろからギューッてして」


「暑くないかって? ほんとムード壊す天才だよね。なんでそんなこと言うかな?」


「自分だって照れてるんじゃん。背中越しに鼓動、伝わってるよ。さっきより早い」


「すごくドキドキしてる」


「くすぐられたからだ? まぁ、そういうことにしてあげてもいいよ?」


「でも、私にドキドキしてくれてるなら嬉しいかなって……」


//SE 耳元にかかる吐息。


(耳元で囁く)

「こうしたらもっとドキドキしてくれる? 私だけにドキドキしてくれる?」


//SE 耳元で響くリップ音。


(いたずらっ子のように耳元で)

「ふふ、可愛い」


「からかわれてるようで嫌だ? 分かってないな。可愛いってね、最大級の褒め言葉だよ」


「少なくとも私は、可愛いと思えない人を愛せないから」


「愛されてるのかって? そのくらい分かるでしょ? もしかして伝わってないなんて言わないよね?」


「言ってくれなきゃ分からない? いつもそうやって私にばかり言わせようとするよね。ずるいな」


「でも、今日は幸せだから特別ね」


「好き、大好き、本当に大大大好き。大好きだよ、本当に」


「なんでそっちが照れてるのよ。普通照れるの私じゃない? かなり恥ずかしいこと言った自覚あるよ?」


「思った以上の破壊力? なにそれ、ふふ」


「俺の彼女は世界一可愛い? ふふ、バカ」


「……ねぇ、本当に可愛いって思ってる?」


「本当に? ふふ、ありがとう」


「そろそろさ、お風呂入ろっか?」


「一緒に入ろうかって? バカ。狭いから無理だよ」


「そんな目で見たってダメ。うちのお風呂が狭いこと知ってるでしょ?」


//SE 部屋の中を歩く小さな足音。


(小声で)

「……一緒に入る?」


「ううん、何も言ってないよ。本当だって、何も言ってないから」


「口が動いてたって? 気のせいだよ。なにも言ってないもん」


「お風呂入ったらあの下着姿が見られなくなるって? あ、そうだね、考えてなかった、

ごめんね」


「なんでそんな残念そうな顔してるの? そんなに見たかったの?」


「見たいに決まってる? アハ、そんなに力込めて言わなくても。またの機会もあることだし」


「先に入る? 私が先でいい?」


「じゃ、先に入ってくるね」


(耳元で囁く)

「大人しく待っててね」


//SE バスルームのドアの開閉音と服を脱ぐ衣擦れ音。


(ドア越しのくぐもった声)

「あ、そうだ、ちょっとクローゼットの中からシャンプー取ってくれる? 新しいの買ったの持ってくるの忘れちゃった」


//SE クローゼットの開閉音。


//SE ゆっくりとした足音。


//SE バスルームのドアを小さく叩く音。


(ドア越しのくぐもった声)

「持ってきてくれたの? ありがとう。ちょっと待ってね」


//SE ドアが開く音。下着姿の彼女。

//SE ゴクリと唾を飲む音。


「ありがとう。……どう? 可愛い?」


「なんで硬直してるの?」


「……そんなにまじまじと見ないでよ、恥ずかしいって」


「このまま押し倒していいかって? ダメに決まってるでしょ」


「ちょっとは興奮した?」


//SE ゴトッと物が落ちる音。


「ちょっ、ちょっと」


//SE 水音を含んだリップ音。

//SE 重なり合う息遣い。


(少し息が上がった状態で)

「ま、待って……お風呂入らなきゃ……汗かいてるし……」


「そんなの気にしない? 私が気にするから」


「一緒に入って流せばいい? そんな問題じゃないって」


「もう待てないって? ダメだよ、ダメ、待って」


//SE 少し大きめのリップ音。


(鼻にかかったような甘い声)

「耳は、ダメッ……んっ……本当に待って」


「もう無理? じゃ……一緒に入ろ」


//SE 慌てたように服を脱ぐ衣擦れ音。


(ドア越しの少しくぐもった声)


「なんでそんなに嬉しそうな顔なの?会った時より嬉しそうなんだけど」


「男の本能? なに、それ」


「好きな女の前で我慢する方が無理? ちょっ、ヤダ、待って」


「まだ全部脱いでないから」


「脱がせるからいい? ちょっ、そういう問題じゃ……んんっ」


//SE ガタガタと扉が閉まる音。

//SE 激しいシャワーの水音。





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