街ブラデート
//SE 駅の改札の喧騒の音。
//SE 駆け寄ってくる足音。
「久しぶりっ! ちょっと痩せた?」
「待ったかって? えへへ、実は待ちきれなくて早く来ちゃった。二十分くらいかな?」
「ごめん? なんで? 待ってる時間も楽しかったよ。会えるんだってずっとドキドキしてた」
「はい、これ。待ってる間に買っておいたの。好きでしょ、あの店のカフェラテ」
「私のはキャラメルマキアート」
「いつコーヒー飲めるようになったのって? ふふ、カフェラテ見ると思い出すからね、時々飲んでたら飲めるようになったんだ」
「少しでも近くにいる気分を味わいたくて」
「でもね、そのカフェラテ、少し私には苦くて。砂糖控えめでしょ、それ」
「ふん、どうせ私はお子様ですよー」
//SE 駅の外に出る。街の騒音とセミの声。
「せっかくだからさ、少し街の中歩こうよ。街ブラデートしよ」
「欲しい物? 特にないよ? ただ一緒に歩きたいだけ」
「ねぇ、手、繋いでいい?」
「ふふ、相変わらずゴツゴツしてるね」
「なんで謝るの? この手、好きだよ。大きくて安心する」
「前来た時よりお店減ったでしょ? 郊外にショッピングモールできちゃって、この辺のお店も何店かそっちに移転したみたいなんだ」
「あ、でも、あの店はあるよ。そう、お惣菜売ってるお肉屋さん。好きだったでしょ、あそこのコロッケ」
「買って帰ろうね。夜ご飯はそれとサラダにしよ」
「手料理期待してたって? 何が食べたいの?」
「筑前煮? まさかの? いいよ、作ってあげる」
「でもその前に、ちょっとこっち来て」
//SE 人気のない路地裏。喧騒が消える。
「会いたかった……」
//SE ギュッと抱きしめられ、彼女の息遣いが間近で聞こえる。
「本当に会いたかった……」
(少し涙声)
「ずっとこうしたかったの……」
「俺も会いたかった? ふふ、嬉しい」
「やっぱりこの腕の中、落ち着く。私の居場所なんだなって思えるよ」
「素直じゃんって? 私、いつも素直だけど?」
//SE 小さな衣擦れの音
(耳元で囁く)
「ほら、見て。ちゃんと着けてきたよ、あの下着。可愛いでしょ?」
「そんなの見せられたら押し倒したくなる? エッチ」
「……全部見るのは夜になったら、ね」
「楽しみにしてる? もぉ、バカッ」
//SE 通りに戻る。街の喧騒
「ねぇ、あの店入ってみよ。ほら、あの服、絶対似合うと思うの」
//SE 店員のいらっしゃいませの声と店内に流れるBGM。
「ちょっと着てみてよ。絶対似合うから」
「なんなら一緒に試着室入る?」
「冗談だよ。真っ赤になって、可愛い」
「一緒に入ったら店員さんに怒られちゃうかもだし。ほら、早く着てみてよ」
//SE カーテンが閉まる音と服を着替える衣擦れの音
(カーテン越しに少し小声で)
「どう? サイズは大丈夫? 着た姿見たいから、終わったらカーテン開けてね」
//SE カーテンを開く音
(はしゃぐような明るい声)
「わぁ、思った以上に似合ってる! すっごいカッコイイ! めちゃくちゃいい! 最高!」
「気に入った? このまま着ていくの? いいと思うよ、うん、すごくいい!」
「あ、私からプレゼントさせて。わざわざここまで会いに来てくれたんだもん、たまにはプレゼントしたいの」
「いつももらってばかりだから」
「なにもあげてないって? 分かってないな。こうして会いに来てくれることが最高のプレゼントなんだよ」
//SE 外に出る。街の喧騒音。
(少しからかうように)
「このランジェリーショップ、入ってみようか? いいでしょ?」
「無理? なんで? いいじゃん!」
「恥ずかしい? 男が入っていい場所じゃない? そんなことないよー。結構彼氏と選んでる子いるよ?」
「そんな猛者にはなれない? どんだけの勇者だよ? 大袈裟なー。そんなに大したことじゃないってー」
「からかいすぎちゃったかな? 顔真っ赤、可愛い、うふふ」
「今着てる下着で十分? 直接選んでよー。本当に好みの下着着けたいし」
「ネットで探そうって? メーカーによってサイズ変わったりするから、直接着けてみないと」
「心の準備が必要? なんの準備よ。まぁしょうがないな。じゃ、次来た時は絶対ね!」
「約束はできない? えー、約束して、お願い」
「善処します? じゃ、本気で善処してね! 約束だからね?」
//SE パタパタとした軽快な足音。街の喧騒音。
(弾んだ声)
「見て見て! めちゃくちゃ可愛い!」
「この喫茶店の看板猫かな? 気持ちよさそうに寝てるねー」
「まん丸で可愛い! 寝顔が笑ってるみたいだね」
「え? 私に似てる? それって太ったって言ってる? 確かにちょっと太ったけど……」
「幸せそうな寝顔が似てる? え、私、こんな顔して寝てるの?」
「もっと可愛い? もぉ、恥ずかしいって」
「俺以外に見せないで? なに言ってるの、もぉ……そんなの当たり前でしょ」
//SE 彼女の楽しげな鼻歌。街の喧騒音。
「あ、やってる! よかった、ちゃんと開いてた。ここ、不定休だからさ、たまに閉まってるんだよね」
「何にする? やっぱりコロッケ?」
「私? うーん、コロッケもいいけどメンチカツも美味しそうだし、ハムカツも捨てがたい。あ、唐揚げもあるよ」
「全部買えば? ダメだよ、太っちゃうもん。さすがにこれ以上は太りたくないかな」
「半分ずつにすればいいって? そうだけど、でもやっぱりそんなに食べたら太っちゃう」
「全然太ってないから大丈夫? 分かってないなぁ、お腹のお肉とかヤバいんだから」
「むしろもっと太れ? 服着れなくなっちゃうよ」
「あ、クリームコロッケもいいね。あ、うずら串もあるよ! 久々に来たけどやっぱり全部美味しそうだね」
「誘惑が半端なさすぎるよぉ」
「全部買おう? 食べきれなかったら明日食べればいい? うーん、でも筑前煮も作るしな」
「筑前煮はやめてサラダにしよう? いいの? 食べたいんじゃなかったの?」
「私を食べるからいいって? バカッ! なに言ってるの?!」
「嫌かって?」
(耳元で囁く)
「嫌なわけないじゃん。家に帰ったら、ね」
「ご飯にする? お風呂にする? それともわ・た・し? え? それやって欲しい? 無理無理、そんなの無理だよ」
「私を恥ずか死にさせる気?」
「男の憧れだって? そんなの実際してる人いるのかな?」
「後輩が彼女にしてもらったって言ってた? 彼女さん大変だー」
「あー、でも男の人ってあーいうのも好きなんでしょ?」
(こっそり耳打ち)
「裸エプロン」
「いや、しないよ? 絶対しない。しないしない、ヤダ」
「一回だけ見てみたい? えぇ……気が向いたら、考えてみてもいい、かな?」
「絶対その気にさせてみせる? なに言ってるの、バカ。そんなことに情熱向けないでよね」
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