明治、大正、昭和、三つの時代を背景に、三つの布にまつわる人間模様が細やかな時代描写とそこに生きた人々の喜怒哀楽とともに紡がれています。
歴史の表舞台に出ることのない、我々と同じようなかつての日本人がたどった道を、追体験するかのように克明に描き出す筆致は非常に読み応えがあります。ともすれば過去へと葬られそうな彼らの苦悩は、信じていたものに裏切られてもまた同じことを繰り返す現代人への警鐘とも感じました。
暮らしに欠かせない「布」というモチーフが、各章の人間たちにとってまさに生きる支えとなっているところがとても印象深いです。
『小豆三粒を包める端切は、いつか必ず役に立つ』
小さな布切れに対するこの思いは、先人たちの苦悩を希望へと変える原動力であったことでしょう。
一話読み切りとしてはボリュームのある作品ですが、それぞれの章に引き込まれる力があります。とても貴重な歴史資料であり、愛情に満ちた人間賛歌。ぜひお読みください。