【負の継続】なぜ重税や圧政、いじめなどは継続されるのか──加害者の恐怖と被害者の正義

晋子(しんこ)@思想家・哲学者

負の連鎖を断ち切るのは誰か──加害者の恐怖と被害者の正義

政府が国民を重税や圧政で苦しめ続けるとき、あるいは学校などでいじめっ子がいじめを続けるとき、その背後には一つの共通した心理が存在している。彼らは


「もしも今ここで加害行為をやめてしまえば、報復されて自分が被害者になってしまう」


という恐怖に囚われているのである。だからこそ彼らは、悪をやめることができない。いったん始めてしまった加害を延々と続けるしかないのだ。この構造は「負の継続」と呼ぶことができる。


だが、この「負の継続」という言葉が、加害者への理解や同情に繋がるのは間違っている。彼らが恐れているのは、自分自身が蒔いた悪の種に過ぎない。自ら人を苦しめておきながら、「やめたら仕返しされるから、やめられない」と語るのは、ただの卑怯な自己弁護である。悪を始めなければ、そもそも報復を受ける理由など存在しない。つまり、加害者が抱く恐怖は正当な帰結であり、その責任を取ることこそが本来あるべき姿なのだ。


いじめの世界を考えてみれば分かりやすい。いじめっ子はしばしば「やめたら自分が立場を失う」「やめたら仕返しされる」と怯える。だからこそいじめを続ける。しかしこれは被害者から見ればあまりにも滑稽な言い訳だ。仕返しされるのは当然であり、むしろ立場を失うことこそ正義である。いじめられた側が報復を望むのは、人間として自然な感情であり、平等な社会において当然の権利でもある。加害者がそれを恐れることを「仕方がない心理」などと擁護してはならない。それは単なる悪の論理であり、被害者を再び踏みにじる暴力だからだ。


国家の歴史においても同じ構造が繰り返されてきた。独裁者は「権力を失えば自分が追放される、あるいは処刑される」と恐れて、権力を手放すことができない。その結果、民衆への圧政をさらに強化し、暴力を重ねる。ローマ帝国の暴君たち、近代の絶対君主、あるいは20世紀の独裁者たちも皆、この「負の継続」の罠に陥っていた。やめれば自分が裁かれるから、やめられない。だから続ける。だがその連鎖の果てに待っていたのは、結局のところ民衆の蜂起であり、断罪であり、処刑であった。つまり「負の継続」は加害者を守るどころか、むしろ彼らの破滅を引き寄せる鎖でもあるのだ。


重要なのは、被害者の怒りが正当であるという事実だ。圧政に苦しむ民衆が立ち上がることは悪ではなく、自然であり当然である。いじめに耐えた人が反撃することも、罪ではなく正義である。人間は平等であるべきなのだから、苦しめられた者がその苦しみを返そうとすることを非難する理由はどこにもない。むしろ「報復をしてはならない」「復讐はむなしいだけ」などと説くことこそ、加害者に都合の良い偽善にすぎない。


「負の継続」という言葉は、加害者がやめられない理由を説明するものではある。しかし、それを理解したからといって「だから加害者も苦しんでいるのだ」と同情してはならない。加害者の苦悩は、彼らが自ら選び取った悪行の結果である。逃げ場のない牢獄に入ったのは、ほかならぬ彼ら自身なのだ。だから「負の継続」とは、悪人が自ら築いた監獄に閉じ込められている姿でしかない。


人はしばしば「加害者もまた恐れている」「彼らも人間だから」といった言葉で、被害者の怒りを封じようとする。しかしそれは決して平等ではない。平等とは、被害者が声を上げる権利を持つことを認めることだ。報復を望む心を押し殺させて、被害者に無限の忍耐を強いる社会は、もはや正義ではない。それは加害者の支配を永続させるだけの、もう一つの「負の継続」である。


加害者が報復を恐れるのは当然であり、同情に値しない。被害者が報復をしたいと望むことは正義であり、自然である。「負の継続」という現象を理解することは必要だが、それを口実に悪を正当化することは絶対に許されない。


「負の継続」とは、悪人が自ら蒔いた種を恐れている姿に過ぎない。そして、その恐怖は彼らが背負うべき当然の責任である。被害者が報復を望むのは人間としての正義であり、加害者に同情する理由などどこにも存在しない。

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