SINGLE「Doppelgänger」
YOSHITAKA SHUUKI
Doppelgänger ☆一話二話三話
親の教育がなってない、とアホ抜かす奴がおる。そいつは正真正銘のアホで、
親の教育がなっていても、ちゃんと育たない子供は存在する。
では何故育たないのか?
なんでやろなぁぁぁぁ〜〜〜〜?
まあいいじゃろ。今から『フルダイブ無料ソーシャルネットワークゲーム』をするから忙しいのじゃ。
ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、諸君思うところあるんやろ。お主何歳なんやって。
いやまあ、分からんでもない。ド頭から思想をよだれの如く垂れ流す爺さん、ホンマ何もんやって思うとうに違いない。
でもな、ひとつ言わせてや。
儂はピッチピチの私立高校の一年生。名を吉岡歯茎や。
ゲームの起動に時間が掛かっとるな。話を戻すとするか。
親の教育がちゃんとしててもな、何かようわからんことになるんやって。
あれは何歳じゃったかな。
うーーーーーーーーーーーーーーーーーん…………。
あーそうそう! 五歳にも満たない頃かの。
悪いこと何もしてないのに檻の中に閉じ込められるんじゃ。
お菓子を万引きしたわけでもない。
おしゃぶりを咥えながら優等生で生きとった筈じゃ。ちゃんと三歳の頃によちよち歩きになったし、男の子らしく『ウル〇ラマンごっこ』もしとった。
でも産まれてきて早々、他の人より数倍泣き虫じゃったんか。助産師が言ったそうじゃ。
「この子育てるの大変ですよ」って。
もしやそれが原因か? すると罪はあれか? 人より数倍泣き虫罪か?
そんで檻の中に閉じ込められたんか?
「助けてえええ」と何百回泣き叫んでも助けてくれない、刑務九年の途方もない学校生活に。
それが親の教育が良くても育たんくなる理由じゃ。
→あなたのニックネームを作成→ 。
勿論、囚人同士では仲良くなれなかった。
その時、僕の心に『いくつもの僕』が住み着いた。
理由は分からぬ。
でも、僕は一人じゃなくなった。一人称も互いに違い、俺や儂、おいらなど多様に満ち溢れていて牢獄から仮釈放中も一人だったけど、全然悲しくなかったし、寧ろハッピーだった。
ごめんこんな話して。でもさ、嬉しいんだ。俺の中の僕にお礼を言いたいんだ。
独りぼっちの僕に話し掛けてくれてありがとうって。
だからこの『フルダイブ無料ソーシャルネットワークゲーム』、ゲームタイトル【
けどよろしく、僕、そして俺。そしておいら、そして儂。
HAHAHA、楽しみだ。
あ、そうだ。ニックネームだった。本名は駄目なんだよね。
ならこうしよう。
→ドッペルゲンガー→ 。
この世界には悩んでる人がいるよね。本当の自分がどこにいるとかそんなくだらないことで。
消しちゃいなよ。その、本当の自分ってやつ。
少なくとも僕はそれで楽になれたよ。
「そんで課金するの?」
「いや、キャラは引きたいけど
「お金ないもんなお前」
「いや俺だけどな」
「ぁはあ」「あはあ」
これ全部俺の中の儂。でも人格はそれぞれ違う。
何? ちょっと狂ってるみたいな顔で見るの止めてや。
でもね、こういう時ドッペルゲンガーがいると楽なんだ。それを有効的に使った自衛の策もあるしな。
その名も、ドッペルゲンガーマトリョーシカ。どんなものかは、順を追って教えたるわ。
第二話 防御機構
マトリョーシカ人形を御存知ならば理解は簡単か。何度砕いても、同じ顔した人形が内からでてくるというあれである。
つまり内なるドッペルゲンガーを外に纏わりつかせることで、と説明をしようとしたとき眼前に「お出まし」である。
長身二メートルの大男、青と赤を交差した魅力的な髪色に、ダイアモンドを思わせる輝かしい眼。
エスキルの限定Sキャラ――ビラン・ストレージである。
ストレージは水と炎のダブル技で、何倍もの対格差を誇る怪獣を屠り、余裕綽々でこちらに近付いてくる。
「俺はビラン・ストレージ。まあ、御試し用だ。だから君のものではない」
「要するに課金しないとビラン君は手に入らないんだ?」
「ああ、この高精度の殺戮兵器を手に入れたいだろ? ドッペルゲンガー君」
エスキルの特徴は何と言っても課金システム。キャラを手に入れるためには課金する必要があり、見事引いたキャラは自分のパートナーになれるのじゃ。
ビラン・ストレージは事前情報で『かなり強い』ことが分かっており、運営も初頭からバグレベルキャラを持ってくるとは思わなかった。しかも凸すれば相手を数秒で屠るのも確認済み。されど凸となれば多額の金が入用になる。
「どうする? 俺」
「…………」
「ねえ、どうすんだよ?」
「引きたいか?」
「うん」
「引くしかねえなあ!」
「そうじゃろ、逆にここで引かずにどこで引くんじゃ?」
「引くのはいつ? 今でしょ?」
「でも凸は流石に止めとかない? 10万は軽く飛ぶよ?」
「それは六凸の話だろ? 一凸なら余裕」
「最初は様子見で。俺貧乏やしな」
ドッペルゲンガーが議論を交わすのを腕を組みながら見ていた余。
ドッペルゲンガーマトリョーシカの話は今後するとして、先ずは課金。プリペイドカードは前もって買っている。一応、四枚持っとる。
取り敢えずキャラだけ引こう。性能を上げるのは次の機会にやな。
→入金金額をご記入ください→ 。
とりま二枚や。挿入口に入れる。ガチャロック機構が解除され、俺は手汗握る手でハンドルを握り締める。
「ぷふううううううううううう」
勢いよくレバーを倒した。倒せば倒すだけ金が摩耗、されど当たって砕けろの精神や。要らん武器とかゴミ武器がポンポン排出され、同時に俺の金も天国に羽ばたいていく。
金が底を尽きる頃、俺の目に天井の文字が見えた。
「もうすぐで天井や! 絶対に引けます」
ガチャ! 天井というソシャゲの特有ワードはようわからんが、これで絶対に当たった。ガチャポッドが開き、盛大なファンファーレが鳴り響く。
「僕はビラン・ストレージ。水と炎を司るキャラさ」
達成感が全身を駆け抜ける。よう当たったわマジで。俺の中の僕も胴上げをしている。
然しそんな中、訊きたくない声が俺らの耳に飛び込んできた。
「よし、これでビラン・ストレージ完凸。sランクもらったなこれ。なあストレージ」
「これで俺は他の俺には負けない。完成された存在と成ったのだ」
そこには聞き馴染みの声ともう一人のビラン・ストレージがいたのだ。
そいつらはどんどん近付いてくる。
「久しぶりやな歯茎。声で分かったわ」
ドッペルゲンガーマトリョーシカ発動!
「「凄いのお(笑)」」
「もういいよ。で、そっちの君は一凸もされてない未完成のビラン・ストレージさんね。こんにちは」
「み、みかんせい? ん、それってどういう?」
友達、又の名を田中大地。更に又の名を彼の親は超エリート企業で、そのコネで悠々と過ごしとる脛かじり野郎。
田中は田中とは思えないキャラメイクで自身を装飾していて、歯とか凄い真っ白であった。
そんな偽りの白さを覗かせて言った。
「ちょいこいや。居酒屋にて、未完成の意味がなんたるか教えたる」
そういえば儂もドッペルゲンガーマトリョーシカの説明がまだだったな。次に教える。
第三話 儂らは俳優じゃ。お主も俳優にならんか?
先程実践で見てもらっため、理解が早いだろう。
すなわちドッペルゲンガーマトリョーシカとは偽りの自分を被り、本当の自分を心の奥底に隠す戦法である。この技法を使えば、真の部分が傷つかず、少しの痛みなら「本当の自分が言われたわけではない」と即座に傷口が修復可能なのだ。
然し諸君の思うことはようわかるのじゃ。それは一種の逃げではないか? と。
まあ逃げではあるが、逆にそれを使わず裸で過ごす奴らが儂の目には奇怪に映っとるんじゃ。
もしその状態で嫌味を放たれたら? 悪口を放たれたら? もう隠す術は何もなく「ぁ、自分はそんな奴なんや」と気分を害してしまい、途方の果てにはお風呂で孤独死なんてそう遠くない未来のように思える。
そしてこの技法には隠された技があり、一日ごとに使うドッペルゲンガーの種類を変えよ、という事である。
これをすることで「ころころ変わる奴」と認識され、次第に自分の中の本当の自分っていう要らないブツも消えていく。
(例) ドッペルゲンガーマトリョーシカを使わない場合
「てめえチンカスやな」(もう俺には死ぬしか道がない)
ドッペルゲンガーマトリョーシカを使う場合
「てめえチンカスやな」(へへ、泣く)
さあ、この違いを見て見れば一目瞭然! ドッペルゲンガーマトリョーシカの凄みが分かるのではないだろうか?
さあ、目の前の読者も「本当の自分」なんか消してしまえ。そいつはな、てめえにとっての粗大ごみなんじゃ。
「本当の自分」? ノンノン。「ドッペルゲンガー」? うんうん。
や、やめるではないか。俺をそんな哀れんだ目で見るのではない。
だけど学校生活においてかなりの必需品だぞ。使わない手はない。てか、使わないと死ぬ。
変な奴だってバカにされるって? じゃあこう言えや。「てめえ裸で恥ずかしくないんかこの変態が」ってな。
次の更新予定
SINGLE「Doppelgänger」 YOSHITAKA SHUUKI @yoshitakashuuki
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