地の龍・天の龍
tokky
第1話 ルオツン女子高等学校
和ノ国・ルオツン高等修道院 創立百年記念文集より
卒業生・クレアの記録
風の唄で目覚めた。乾いた空気に舞うのは砂ではなく、霊石の粒。
衣は翻り、膝も腕も硬く、ひび割れている。息がさらわれるほどの烈風に、雲が流れていく。
遠くで誰かが呼ぶ声がした気がしたが、それは風の戯れかもしれない。
千年の昔、和ノ国を治めていたのは「月の龍」と呼ばれる王だった。
その体は山のように雄大で、瞳は湖の深淵を映すように澄んでいた。
体躯は頑強、背は高く、晴れた日の湖のように深い色を湛えた目と、高い鼻梁、意志の強そうな唇を引き結んだ、高潔な王。妻は賢く美しく、きめの細かい肌を持っていた。美しく、言霊を操る巫女でもあった。
ある日、西方の国から使節が訪れた。だがそれは軍勢であり、隷属を拒む月の龍を襲った。
龍王は勇敢に戦ったが、奸計により命を落とした。
その遺骸は五つの方角に分けられ、各地に封印されたという。
「語り部よ。封印を解く時が来た。
地の龍が目覚める前に、道を辿れ。」
「語り部よ。五つの封印を辿れ。
地の龍が目覚める前に、風の道を越えよ。」
古文書の棚に、封印の地に関する記述を探す。
そこには、月の龍の遺骸が五つの地に分けられたという伝承が記されていた。
- 南の湖:右腕の封印
- 東の丘:左腕の封印
- 西の河:右足の封印
- 北の洞穴:左足の封印
- 龍背の山稜:胴の封印
千年の昔、月の龍が治めていた和ノ国。 その封印を巡る伝承が、語り部の記録として今、静かに語られる。 風の唄が導く幻想譚——あなたは、語り部の声を聞く。
登場人物
わたし・・・「メイ」 物語の中心人物で、話の経過に時々「日記のように顔を出す。
クレア・・・メイの親友
イボンヌ・・・メイとクレアの同級生
リン・・・同じく同級生
ウェイ・・・メイを学校に連れてきた人、メイの支援者
シュイピェン・・・クレアの腹違いの兄
シェン・ユンウェイ・・・ルオツン女子高等学校長
パオセン・・・クレアの親が決めた婚約者
村長・・・メイが元にいた村
チューメイ・・・伝説の女性
歴史学者・・・ずっと伝承を追い続けている中年男性、校長に恋をしている
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