キミのことを大好きなのがバレバレなのに、好きバレはしたくない美春さん
ペーンネームはまだ無い
第01話:キミんち行くから待っててねー
スマホの着信音。
電話の向こうから女の子の淡々としたか細い声が聞こえる。
「もしもし。わたし、メリーさん。今キミの家の最寄り駅にいるの」
通話終了の音。
しばらくして、またスマホの着信音。
「もしもし。わたし、メリーさん。今交差点のコンビニ前にいるの」
通話終了の音。
しばらくして、またスマホの着信音。
「もしもし。わたし、メリーさん。今キミの家の前にいるの」
急に電話から聞こえる声が、明るいトーンになる。
「……あ、合鍵は持ってきてるから、お気にせずー」
通話終了の音。
玄関が開錠され、ドアがゆっくりと開閉する。
控えめに声が聞こえてくる。
「おっ邪魔しまーす」
出迎えにいったあなたを見つけた彼女が、ちょっと怒った風に言う。
「あーっ、こらーっ! お出迎えにくるんじゃないのっ! ほら、あっち向いて、あっち!」
あなたが後ろを振り向くと、またスマホの着信音。
電話の向こうから女の子の淡々としたか細い声が聞こえる。
「もしもし。わたし、メリーさん。今キミの後ろにいるの」
急に後ろから抱き付かれるように目隠しをされる。
耳元で女の子の楽しそうな声。
「だーれだ? ……ブッブー、はっずれー。メリーさんじゃありませーん。ヒントは、超絶美少女女子高生でー、超絶性格が良くて―、超絶ナイススタイルでー、超絶キミが大切にしている年下の女の子っ! 正解は、美春ちゃんでしたー! ねぇねぇ、驚いたー?」
彼女はあなたから離れると、少しすねたような声で言う。
「……むぅぅ。ノリが悪いなー。そんなんじゃ、いつまでたっても恋人なんてできないし、女の子にだってモテないぞー」
彼女は小声になって言葉を続ける。
「……まぁ、わたし以外の女の子にはモテなくても良いんだけど。そりゃ、キミが他の女の子からキャーキャー言われたら、わたしとしても鼻高々だけどさ。それはそれでちょっと複雑な気持ちになっちゃうよねー。……うぅ、もしわたし以外の女の子と付き合うことになっちゃったらどうしよう? 想像しただけで気分が落ち込む……。えぇい、負けるな、わたし!」
「ぬんっ!」と独特なかけ声で気合を入れた彼女は、少し焦った風にあなたを見た。
「……え? いやいや、何でもないよ。こっちの話。あはは」
気を取り直した彼女の声は、通常のトーンに戻る。
「ところでさ、ちょっとこっち向いてもらえるかな?」
彼女の方へと体を向けるあなた。
「……はい、まっすぐわたしの目を見て。……んんー、やっぱりキミ、疲れた顔してるねぇ。いつもより元気ないの、電話越しでもわかっちゃったよー。そりゃ、わたしくらいのキミソムリエになれば、キミの些細な変化にも大体気づいちゃうんだけどね」
少し恥ずかしそうに早口で彼女が続ける。
「か……勘違いはして欲しくないんだけど、別に元気がないキミのことが心配になって、急いで駆け付けた訳じゃないからね。こっちに来る用事があったから、ついでで寄っただけだからね。ついでだよ、つ・い・で!」
気分と話題を変えるように、彼女が明るい声になる。
「そんなことよりさ、立ち話はこれくらいにして、お家の中、入れてもらってもいいかな?」
そう言って「えいっ!」とあなたの左腕に抱き付く彼女。
「あはは。腕に抱き付かれたくらいで、なに驚いてるの? 玄関からリビングまでとはいえ、女の子をエスコートするんだから、腕を組むのは当然でしょ? なんてったって、今日はお家デートなんだから。……ふふっ、それとも、お家デートが不服なら、これからお外デートしちゃう?」
クスクスと彼女が笑う。
「……ごめんごめん、嘘ウソ。冗談だよ、ジョーダン。疲れていて元気がないキミを外に連れ回そうだなんて思ってないよ。今日はお家でキミにゆっくりしてもらって、わたしがたーくさん癒してあげたいと思ってるんだ。せいぜい覚悟しておくんだな、にししっ」
彼女があなたをからかうように、耳元でささやく。
「さてと、それじゃ、本格的にお家デートを始めよっか。まずは、ご飯にする? ゲームにする? それとも、わ・た・し?」
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