第14話 魔女のマーリー
そんなみちるの態度を見て、マーリーはニコニコ笑いながら気さくに話しかけた。
「そんなに改まらんでええよ♪ よろしくね、みちるちゃん」
「はぁ……」
まだ信じられないと言う風なみちるの態度に、レイチェルは衝撃的な事実を告げる。
「こう見えて彼女は250歳だから」
「え……? えーっ!」
みちるは、改めてマーリーを上から下まで舐めるようにじいっと見つめる。しかし、どう見ても彼女の姿は10歳そこそこにしか見えなかった。
(これが魔法の力……?)
「今はこんな感じやけど、もちろん絶世の美女にもなれるけんね」
マーリーはそう言うと、一瞬でグラマーな美女の姿に変わる。彼女の身体が瞬間的に強く光ったかと思うと、20代後半くらいのナイスバディな容姿に変わっていたのだ。
服装もそれに合わせた黒いタイトなドレスに変わっている。まさにマジで魔法そのものだった。
「でも普段はこっちの方が好きなんよね」
そう言ってマーリーはまたすぐに幼い少女の姿に戻る。魔法使いのお約束の呪文も、杖を振るアクションもなしに。
その様子を見たみちるは、ごくんとつばを飲み込んだ。
こんな魔法が自分でも使えたなら、自分も人の姿になって魔物の姿を誤魔化せる。今の醜い姿を――。あっ、これってもしかしたらある意味全人類が一番欲しがる能力なんじゃ……。少なくとも女性は……。
みちるが彼女の魔法に感心している間に、彼女自身もまたみちるを観察していた。
「ふぅ~ん……。悪くなさそうやねえ」
「素質ありそうですか?」
レイチェルはマーリーにみちるの潜在的な力の有無を聞いてみる。この質問に、彼女はまんざらでもない表情を浮かべた。
「そうやね、悪くないもん持ってると思うよ」
どうやら、みちるにも魔法使いの素質は眠っているらしい。現役の魔女が言うんだから、これは間違いないだろう。
素質を見抜いた幼女魔女は、目を輝かせながらみちるに話しかけた。
「どうする? 早速修行する? それとも今日は休む?」
この突然の提案に、みちるは困惑の表情を浮かべる。魔法の修行の話を聞いたのさえついさっきなのに、心の準備が出来ているはずもなく――。
「あの……。出来れば今日は休みたい……です」
みちるは少し申し訳なさそうにマーリーの顔を見る。その答えを聞いた彼女は、少しも気分を害する事なく明るい笑顔をみちるに見せた。
「分かった♪ じゃあ明日からビシビシ行くよ!」
「よ、よろしくお願いします!」
こうして、今日一日はゆっくり休む事になる。と言う訳で、マーリーは軽く家の中を案内してくれた。魔女の家はどこも可愛らしくまとめられていて、すぐに和む事が出来た。
「ちっちゃい家でごめんねぇ~」
案内をし終わったところで、マーリーは家の奥の方のキッチンでおもてなしの準備を始める。そのカチャカチャという音を聞いていたみちるは、じっとしていられなくなって彼女のもとに向かった。
「あの、私何か手伝います」
「ええのええの! 今日はお客さんなんやからゆっくり休んどき! 旅の疲れもあるやろ?」
マーリーは彼女の申し出をやんわり断る。マーリーはこんな事は日常茶飯事と言った風で、逆にみちる達の方を気遣うのだった。その気持ちを受け取ったみちるは大人しく客間に戻る。おもてなしの準備が整うまで、客人の2人は大人しくソファに座って待つ事になった。
時間も出来たし暇だったので、何となく会話が始まる。最初に口を開いたのはみちるの方だった。
「ところで、2人はいつ知り合ったの?」
彼女はいきなりマーリーとレイチェルの出会いについて質問する。やっぱりまずは2人の関係に関心がいくものなのだろう。
レイチェルは特に表情も変えず、感情を乗せずに定型文を口にする。
「この仕事やってると色々あるんだよ」
「へぇ~」
何となく上手くかわされたような気はしたものの、ここまでそっけないって事は、この事についてはまだ深く話せる状況でもないのかなとみちるは思った。
なので、彼女は質問の方向を変えてみる事にする。
「魔法使いの知り合いがいるなら、早く教えてくれれば良かったのにぃ~!」
「そう言う流れにならなかったからね」
今度はみちる自身の気持ちをぶつけてみたものの、やっぱり会話は弾まなかった。仕方がないので、次の話題は今一番心配な今後の事へ。
「魔法使いの修行って厳しいのかな?」
「どうだろう? 案外楽勝かも?」
「だったらいいんだけど……」
と、その時、カチャカチャと言う音と共に、美味しそうな匂いが2人の前まで漂ってきた。
「お楽しみの所かんにんな~♪」
何とか会話が弾みそうになった所で、マーリーが料理を抱えて部屋に入って来たのだ。美味しそうな料理が次々と2人の前に運ばれて来る。
あの小さな体でどうしてここまでのものがと感心するくらい、沢山の料理がテーブルに並べられていった。
「お待たせ! 大したものはないけど、どうか楽しんでや!」
暇を持て余していた2人の前に、素朴だけど暖かい森の恵みが沢山並べられた。それはおもてなしの心が十分伝わる料理の数々。
マーリーの用意した全ての料理が揃った所で、楽しい食事の時間が始まった。
「どや? 美味しいやろ?」
料理を口に入れる姿をニコニコした顔で眺めながら、マーリーはみちるに話しかける。
「美味しいです! すごく!」
流石に自慢するだけあって、マーリーの料理はとても美味しかった。それはまるで、料理に美味の魔法がかけられているみたいに。
彼女が魔女だけにそれもありえるけれど……。しっかりと料理をした上での美味しさだとみちるの舌は感じていた。
食事を終えてくつろいで、マーリーを加えた3人でそれぞれの思い出話に花が咲いて――。
そうして、楽しい時間はあっと言う間に過ぎていった。
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