第14話

告白してくれた男の子を好きになった。


本当は、告白された時、もう好きになってた。

ストンと胸に落ちた。


二人乗り自転車も

動物園も

一緒にご飯食べるときも

少しずつ『好き』は増えた。


凄くかっこいいとか

スポーツ推薦とか

そういうんじゃなくて


藤倉彗は、藤倉彗のまんまで愛おしい。そう思えるから。


「私、バスケわからないし、役に立たないから、自信ないけど…」

「俺、『役に立ってほしい』って新川さんに思わないよ。

新川さんはいつもみんなの為に頑張ってるから。

俺は新川さんを大切にしたい」

私は藤倉くんを見上げる。

藤倉くんは、きゅっと笑顔になった。

「でも暇なら練習見ていて!俺頑張るから!」

藤倉くんが部活に戻っていく。

私は藤倉くんを見つめる。初めて真剣にバスケを見た。

でも藤倉くんの動きのしなやかさと、チームワーク、さりげないリーダーシップはよくわかった。

明らかにムードメーカーで、藤倉くんがいるだけで雰囲気が明るくなる。


部活終了後

「藤倉!片付けはいいぞ!」

先輩が言う。

「お前、カノジョを送ってやれよ、もう8時だぞ」

「あ、いいです。私、1人で帰れますから」

慌てて手をふると、藤倉くんが「10分待って!」と私に叫ぶ。

「奥義高速モップがけ!」

がーーーっと掃除をし、ボールをがんがん片付け、おりゃおりゃおりゃあっと整頓していく。

「はい!終了!」

藤倉くんは、ぱんぱかぱーんと、元気のよい笑顔になった。

「お疲れ様っす!」

「おう」

先輩も後輩もばかうけしている。

「帰れ帰れ!」

「変なとこに寄り道すんなよ!」

「新川ちゃん、藤倉はエロいよ!気をつけてね!」

(え?えええ?)


着替えてきた藤倉くんが私の横に並ぶ。

「帰ろ!」

「うん」

自転車を押す藤藤倉くん。

「え、乗っていいよ。疲れたでしょ」

「乗ったら早く駅についちゃうじゃん。あ…ニ駅だから自転車で送ろうか?お尻痛くなければ乗って」

(お尻って言った瞬間上擦ってますが)

…本当にエロいのかな…

どうしよう~!


藤倉くんの自転車に乗る。

「しっかりと、つかまってよ。ぎゅぎゅっと!」

「う、うん」

私は藤倉くんにしがみついた。

「うわあ!」

藤倉くんが叫ぶ。

「やば!」

「な、なに?」

「…新川さん…やわらかい」

「え?えええ!」

藤倉くんが深い溜め息をついた。

「華奢なのにやわらかい…」

「そんなこと言われたら抱きつけないよ!私、電車で帰る!」

「わあ!もう言わない!」

そう嘆きながら自転車を走らせる藤倉くん。

うちは事実上1駅と半だから、すぐに家についた。

「今日ありがと」

かすれた声で言う藤倉くん。

ふわあっと抱きすくめられた。

「!」

藤倉くんの唇が、そっと頬にふれていた。

(わあ!)

「じゃ、また明日」

自転車で帰って行く藤倉くん。

私は呆然と見送った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る