第67話 ソラがいない今

 俺は、ゆっくりと体を起こした。


「どうするんだ?」


 かみさまが、俺に尋ねる。

 どうするんだろう。

 俺は……

 いったいどうしたい?


「わからない」


 なにもわからない。

 なにができるかもわからない。


「ちなみにジルとのペット契約は破棄させた。

 ジルとの盟約により自爆テロでもされたら困るからな」


 かみさまが、淡々と答える。


「そうか……

 で、カイはどこにいる?」


「ついて来い。

 案内してやる」


 かみさまは、そう言って扉を開ける。

 俺は、かみさまの後ろをついて歩いた。




 ――パンドラ・地下街地下牢



 水の音が滴るその場所にひとりの女が手を縛られている。

 女は俺の方をじっと睨んでいる。

 カイだ。

 カイが俺を睨んでいる。


「カイ……」


「気安く私の名前を呼ぶな!」


 ずいぶん嫌われているようだな。


「……カイ。

 どうしてお前は、妹を殺してそんな平気でいられるのだ?」


「平気だと……?

 私が、平気だと思うのか!?」


 カイが、怒鳴る。


「……え?」


「妹を……ソラが死んでお前だけが悲しいと思っているのか!?」


 カイが、大粒の涙をこぼす。


「私は、アイツの姉だぞ!」


「そうだったな」


 俺は、ため息をついた。

 そして、カイの手錠に手を当てる。


「どうするつもりだ?

 昴よ」


 かみさまが、俺を睨む。


「このカイを自由にする」


「は?」


 カイが、驚いた顔で俺を見る。


「……カイを君を自由にする。

 君の処分は俺に任されている。

 だから、君を自由にする。

 問題ないだろう?

 かみさま」


 かみさまは、一呼吸入れたあと静かに答えた。


「問題はない。

 でも、後悔しないな?」


 俺は、自分でも何が言いたいのかわからない。

 でも、なんとなく思った。

 自由にしてあげたいと。

 ソラがいたのならふたりで住まわせて幸せになってもらうって方法もあったのかもしれない。

 だけど、ソラがいない今。

 なにもさせてあげれない。


「後悔は……するかもしれない。

 でも、今はこれしか思い浮かばないんだ」


「そうか……

 わかった。

 カイを自由にする」


 かみさまは、そう言ってカイの手錠を外した。

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