乱高下するテンションに身を任せれば、いつの間にかに大人になってしまう僕らは、くすんだりテカったりした日々をいつか思い出せなくなるだろうから。だから、記録するんだ。
ぼくたちが同じ中学を出ていたら夢みたいってメモしとかなきゃ / 雀100『good morning』
放課後にゲーセンに通ったこと/カラオケの音漏れが実は好きだったこと/修学旅行中の恋バナについていけなかったこと/握らなかった手があったこと/その全てが夢だったこと。
本連作に登場する『かずくん』は言葉を借りて浮遊しながら、読み手の地平に降りてきて、だけど時を経て(主体に流れる時間と同じぶんだけ言葉に重さがあるのなら)離れていくから、どうにかして、かずくんを言葉にして繋ぎとめないといけなかった。
そうした、あまりに読み手を信じ過ぎているがゆえの奔放さと従順さにつられて、行間に目をさまよわせながら、私たちは言葉を探すたびに自由になれた。歌として、まっすぐに投擲される言葉が読み手自身の中に確かな像を結びながら。例えば、アイスが溶けると同時にそのベタベタとした手のひらの感触までもを想起させるように。
なかでも、「おいあのさ」「馬鹿じゃねえの」「とりあえずべつに二十歳かしらんけど」から見え隠れするフラットな喋りは、反発・抵抗の意を示したくて発する「うるせーだまれは?おわったかすざこばか」といった連なりにも似た乱暴で、過剰な言葉を使いたくなる時期を思い出させる(同時に、開き直るかのように「よかった誘ってくれて」の感情の猛追(再上映)に泣きそうにもなる)。
本当は別に伝えたいことがあったとしても話せなかった。本音とは相反する、その場しのぎだって分かる程度のボケもツッコミも受け入れてくれる友だちがいたのなら、「話したい」。話したかった。
また、そんな言葉あそびと現実世界の両方を掬いあげたのが下記一首である。ここでは悪口や煽りの域を越えて、もはや仲間内での飛び交いを再現する。
▂▃▅▆▇うおおおおおおおおおおおおおおおお▇▆▅▃▂ ▂▃▅▆▇はいおもんない▇▆▅▃▂ ▂▃▅▆▇黙れゴミカス▇▆▅▃▂
/『SUPERNOVA』
「(中略)コメットパンチ・外すなよ」 /『地滑 (連想)』
『次からは本当の名前で遊ぼうねわかんなかったらDMしてね』
それから、はっとさせられる十首目。例えばボウリングに行った時に『プレイヤー名』を入力する時にきみの本名を初めて知ることになるのかもしれないし、順番待ちの呼び出し表にすきな人の苗字を出来心で書くシーンのような偽りや企み、あるいは『DM』というように単にインターネットを介した親交なのかもと思いを馳せながら、その全部がじれったくて懐かしい。
『ペットボトル拾ってゴミ箱に向かう途中でペットボトルでかいな』
一首目に戻る。捨てる前に初めて気づく大きさくらい、一瞬の話の種になったらいいな。話せたら、いいな。どうでもいいことを声高に話せる/笑い飛ばせる/そんな話を振ることができる仲でいられたら、という祈りにも読める。
ドライブミークレイジーな文体とひた走る爽快感、リアルな会話を軽快なテンポで十首に乗せて、手慣れた──いやむしろアンタまた庭のお手入れサボったね……? と分かる程度に繁茂した光景になぜかある一輪の薔薇──のような未来への希望と切なさに満ちた素晴らしい連作をありがとうございました。