第3話 事件資料

秋乃は、資料を一枚ずつ机の上に並べた。


事件が起きたのは、白峰学園。


県内でも有名な私立中高一貫校だ。


中学から高校までの六年間を一貫した教育方針で学べることを売りにしている。


卒業生には有名大学への進学者も多く、学校の評判は悪くない。


むしろ、教育熱心な家庭からは高く評価されている学校だった。


秋乃は事件概要に目を通す。


亡くなったのは、白峰学園の元生徒。


卒業してから数年が経っていた。


学校を卒業した後も、当時の友人や教師との交流があったという。


死亡した場所。


発見時刻。


警察による初期確認。


秋乃は必要な情報をノートに書き写していく。


現在のところ、警察は自殺と見ている。


事件性は低い。


それが資料に書かれている内容だった。


「自殺、か……」


秋乃は呟いた。


その言葉に特別な違和感を覚えたわけではない。


自殺と判断される事件は、決して珍しくない。


けれど、次のページをめくったところで、秋乃の手が止まった。


学校側の対応について。


そこには、いくつかの証言がまとめられていた。


亡くなった元生徒について、学校側が詳しい説明を避けている。


当時の学校生活についても、学校側は、


『確認できている事実はない』


という立場を取っている。


さらに、元生徒の在学中の学校生活について、一部の関係者から疑問の声が上がっている。


秋乃は眉を寄せた。


「何を確認できてないの?」


資料には、それ以上のことは書かれていない。


誰が疑問を持っているのか。


何を疑問視しているのか。


学校側は何を把握しているのか。


肝心な部分が抜け落ちている。


秋乃はページを戻した。


事件概要。


死亡。


自殺。


学校側の対応。


その三つをノートに書く。


そして、その横に小さく、


『要取材』


と記した。


秋乃はパソコンを開いた。


白峰学園について検索する。


学校の公式サイト。


教育方針。


進学実績。


学校行事。


卒業生の紹介。


どのページを見ても、明るい学校の姿ばかりが並んでいる。


生徒たちの笑顔。


校舎の写真。


教師たちの紹介。


秋乃は画面をスクロールする。


事件について触れた記事はほとんどない。


学校側が発表していないからだろう。


秋乃は椅子に背を預けた。


取材が必要だ。


学校の説明だけでは足りない。


亡くなった元生徒を知る人。


当時の同級生。


教師。


そして学校側。


できるだけ多くの人間から話を聞かなければならない。


秋乃は取材先をノートに書き出していく。


白峰学園。


元同級生。


元担任。


遺族。


関係者。


ペンを置いた。


「まずは学校だな」


秋乃は資料をまとめた。


そのときだった。


一番最後に残っていた一枚の紙が目に入った。


当時の関係教職員一覧。


秋乃は何気なく手に取った。


まだ、この名前の意味を知らなかった。


その紙をめくれば。


十三年前の記憶が、すべて動き出すことになる。

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