前作の最後、主人公は人と魔物の境界に立つ者となり故郷を後にした。今作の冒頭、彼は記憶を無くした者としてある集落を訪れる(前作との繋がりは明かされないが、父を亡くしていることや海辺に住んでいたという発言から恐らく前作主人公だと知れる)。魔物の避けの疎水を越えてやってきた彼を、村人は名無しと呼ぶ。
本作もまた村の子どもが殺される事件から物語が大きく動くが、果たしてそれは夜の眷属たる魔物の仕業か、それとも稀人である名無しが犯人なのか。村の若者たちの三角関係も背景に、ダークファンタジーにミステリ風味を交えて話は一気に転がっていく。真相と結末はぜひ本編をお読みいただきたいが、前作に劣らぬやるせない展開が読者を待っている。然れどその終わりこそこの物語にふさわしい。
そして稀人はまた疏水を渡る。次の物語にもまた期待したい。