29話 操られた相棒

薔薇の蔓が、四方から一斉に襲いかかってきた。


「くっ……!」


マークが咄嗟にビビットを庇いながら飛び退く。蔓は空を切り、床に深々と突き刺さった。


「マミ! 落ち着いて、俺だ!」


イズマが痛みを堪えながら叫ぶが、虚ろな目のマミは操られたまま剣を構え直していた。


「無駄だよ」


ローズラが、愉快そうに笑う。


「あの子はもう、私の意思でしか動かない」


「てめえ……!」


マークが拳を構えた。


***


「まずは、そっちから片付けようか」


ローズラの手が、ビビットへと向けられた。


「あんた、電気を操るんだってね。……いい人形になりそうだ」


「な――」


「洗脳のクリスタル、その真骨頂を見せてあげる」


薔薇の花粉が、ビビットの周囲を包み込んだ。


「ビビット! 逃げろ!」


マークが叫んだが、間に合わなかった。


「ぐ……あ……」


ビビットの目から、次第に光が失われていく。


「ビビット……!?」


「……マーク?」


焦点の合わない瞳が、マークを見た。次の瞬間、放たれた電撃が――マークの体を直撃した。


「が――ッ!!」


***


吹き飛ばされ、マークは壁に叩きつけられた。


「ビビット……お前……」


信じられない、という顔で、マークは体を起こした。


ローズラが、満足げに笑う。


「守るべき相手が、敵になる。……いい表情だよ」


「くそ……! ビビット、目を覚ませ!」


再び電撃が放たれる。マークはそれを間一髪で避けた。


「ビビット! 俺の声、聞こえないのか!」


呼びかけても、虚ろな目には何の反応も浮かばなかった。


このままでは――


マークの脳裏に、嫌な予感がよぎった。


***


「マミも、峰打ちで頼む!」


イズマが、痛みを堪えながらマークに声をかけた。


「殺さずに止められるのは、お前だけだ」


「分かってる……!」


マークは、マミの薔薇の剣を紙一重で躱すと、拳の側面で軽く首筋を打った。


「――っ……」


マミの体が、力なく崩れ落ちた。


「よし……」


イズマが、這うようにしてマミの体を受け止める。


「悪いな……もう少しだけ、眠っててくれ」


***


「一人、片付いたか」


ローズラが、僅かに眉をひそめた。


「でも、まだあんたには――操られた相棒がいる」


「……ビビット」


マークは、拳を下ろした。


「絶対に、傷つけねえ」


電撃が、再び放たれる。マークはそれを、あえて避けなかった。


「マーク! 何して――」


「大丈夫だ」


体に電流を受けながらも、マークは真っ直ぐビビットへと歩み寄っていく。


「――思い出せ、ビビット」


ローズラの操るビビットが、拳を振り上げた。


その瞬間――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る