夏休み、公園のトイレの裏で拾った、みどり色の不思議な生きもの。
つつけば「ぴいぴい」と鳴き、眠れば「ぐるぐる」といびきをかく。
少年は、その生きものを「ぬるぐる」と名づけ、自由研究として観察を始めます。
好きな食べもの。
少しずつ大きくなる身体。
いつの間にか覚えていた文字。
幼いひらがなで綴られる記録は、最初こそ奇妙でかわいらしい観察日記に見えました。
けれど、日付を追うごとに、書かれた言葉よりも、そこに書かれなかったことの方が恐ろしくなっていきます。
「いたいから、みじかめ」
「お父さんがかえってきたからやすみ」
しょうたは、その言葉の意味を説明しません。
ただ、その日にあったことを、子どもらしい言葉で書き留めていきます。
だからこそ、無邪気な言葉の奥に隠されたものに気づいた瞬間、胸を強くつかまれます。
人ならざる姿をしたものが、必ずしも一番恐ろしいとは限らない。
そして、人ならざるものだけが、化け物とも限らない。
全五話。
説明を削ぎ落とした短い記録の積み重ねだけで、ひとりの子どもが過ごした夏と、彼に寄り添う“友だち”の姿が浮かび上がります。
最後の一日まで読んだとき、「ぬるぐるだけが、ぼくの友だち」という言葉は、最初とはまったく違う響きで胸に残るはずです。
どうか、この夏休みの自由研究を、あなた自身の目で最後まで見届けてください。