失恋で傷ついた少女を、誰より近くで慰める一体のぬいぐるみ。
その声は、少女自身が心を守るために生み出した防衛本能です。最初は「君は悪くない」と涙に寄り添う優しい存在だったはずなのに、吸い込んだ未練や嫉妬によって、その言葉が少しずつ歪んでいきます。
友達に悪気がないことも、彼とのやり取りに深い意味がないことも、少女は頭では分かっている。それでも感情だけが納得できず、疑いたくない理性と、痛みをぶつけたい衝動の間で揺れる姿がとてもリアルでした。
誰かに傷つけられて悪魔になるのではなく、自分を守るための肯定が、やがて他人を傷つける毒へ変わっていく。
ぬいぐるみという優しい存在から語られるからこそ、その変化がより不気味で切ない。少女の指が送信ボタンへ近づくたび、読んでいるこちらまで「押さないで」と願ってしまう、心の弱さを丁寧に描いた心理ホラーです。