廃墟。
法的に捨てられた、この世のものではありながらこの世に存在しないことにしてもらっているという体(てい)のそれは、しばし異世界めいたものを求める人間を度々引き寄せる。
少年がここに訪れた理由は、ここが彼にとっての秘密基地だからであるという。
秘密基地などと聞くと、子供が一生懸命DIYをして山の中に作るこじんまりとしたものを想像してしまうが、どうもそうではなく人工のものを間借りしたものが彼の『秘密基地』のようである。
話を聞いていると、それなりにでかい。
植物が侵入していたり、子供でも入り込める作りなあたり廃墟なのには違いないが、少なくとも階数は二階分はあるのだというそうだ。
それはおそらく、山の中にひっそりと建ち、何らかの原因で人が寄り付かなくなっていった建物だと思慮できる。
サテ。じゃあここは何だったのか? というところが論点になってきそうだ。
おそらく明確な答えはないのだろうが、自分なりに考察するに、
ここは田舎の幼稚園か、もしくは……これは地元に実際にあったからという理由だが、いわゆる、『特別支援学校』……表現が難しい。
あたりが候補に上がるか。
子供が足げく通うくらいなので、建物が建っているのは主人公の地元と考えるのが自然だろう。そこで何やら悲しい事件がたったなら、それは噂となりニュースとなって主人公の耳に届き(?)親もここには近づかないように促すのではないだろうか?
だから、特別、公に何かがあった場所、というわけではないのだろう。無事呪われずに今日までご健在であるのが良い証拠だ。
想像するに、
子供の数が少なくなり、かといって取り壊すほどの財力を持ち合わせていなかった業者によって放置された施設なのではないかと思う。
あるいは……
一歩踏み込んだというか、やや穿った考察を敢えてするなら、
この施設は特に悲しい事件もなく閉園(閉業)したのは間違いないのだろうが、
『その後』何かが起きた……ならありうるかもしれない。
コンクリートになぜか貫かれていた落書き。
戸口を向いていた椅子。それらが、この施設の持ち物ではなく、『外から持ち込まれたもの』つまり……
主人公よりも前に、この廃墟を何らかの目的として使っていた人間がいる。というなら可能性はありそうだ。
そこで、誰が何をしていたかは……もう誰もわからないだろう。
考察の可能性は無限大である。
いずれにしても、生活をしていた人間の記憶は残る。足跡も、息遣いもしっかりと残る。
人間は、生きているものと、そうでないものの境界にどうにも惹かれてしまう生き物のようだ。とすれば「廃墟」も、そんな境界たり得るのではないだろうか。
まるで夢を見ているような、浮遊感を感じる掌握。
ご一読を。
夏の暑さ。長い夜。死者をお迎えするお盆もあり。
夏はとかく、怪異や心霊現象に遭遇しやすい季節です。
見てしまう。聞いてしまう。触ってしまう。触られてしまう。五感を伴う恐怖。
…だけではない、かも。
ある場所へ行った。帰って来た。
そして脳内にしかと描かれ、連想され。こびりついてしまったものは。
厄介です。油汚れなみに頑固で、落ちない。永遠の脳内映像ホラー。
老婆心からのアドバイスは。
「廃墟」に行った時点で。おそらくもう、ロックオンされている、かもしれない。
数々の諸先輩方の先例があります。
夏の教訓を学びつつ、汗のようにまとわりつく恐怖を楽しんでいただきたい作品です。