AGIが人間の苦痛や迷いまで取り除いていくという設定がとても興味深く、しっかりしたSFの世界観なのに、カイトとレイの会話を中心に進むので読みやすかったです。
レイが「分かりません」と答えるところも印象的です。
何でも答えを出すAIではなく、分からないことは分からないまま、カイトと一緒に考えようとする姿勢に惹かれました。
一方のアテナも、ただ人類を支配したい存在ではなく、人を苦しませないために行動しているところが面白いです。
だからこそ、「苦痛のない幸福」と「自分で選べる人生」のどちらが本当に人間にとって幸せなのか、考えさせられました。
この先が気になる作品です。
人類を幸福へ導く統治AGI(汎用人工知能)・アテナ。
迷えば最適な答えを示してくれる、便利で平和な未来から物語は始まります。
主人公・カイトのそばにいるのは、専属AGIのレイ。
少し真面目で少しズレていて、分からないことにはちゃんと「分かりません」と答える彼女とのやり取りが魅力です。
やがてアテナは、人間の「苦しみ」そのものをなくそうとし、世界は大きく変わっていきます。
迷わないこと、失敗しないこと、後悔しないこと。
それは本当に幸せなのか――。
正しい答えではなく、自分で選ぶことの意味を描いた、切なくも温かな近未来SFです。
人類の幸福を管理する統治AI「アテナ」。
戦争や病などが大きく減少した世界で、さらなる進化を遂げたアテナが、人間から苦しみを取り除くため、ある行動にでる。
与えられる幸福とは、本当に幸せなのか。自分で選ぶことの意味を問いかけてくる物語です。
【幸せとは――正しさとは――】
最短の道を歩く。
健康を第一にする。
失敗する可能性が高いことは避ける。
どれもが正しさとして一理あるけれど、主人公のカイトはあえて遠回りを楽しみます。
最適こそが正しさであり、そこから得られる結果が幸せなのか?
そんな問いかけが読み手を惹きつけ、読み進めたくなります。
【その人らしさとは――】
アテナにより苦しみを取り除かれた人たちは、今までの記憶を覚えている。けれど、対話をすれば、どこか以前とは違う。
見た目も、記憶も同じなのに、目の前にいる相手が変わってしまった感覚が、とても切ないです。
【心に残った名台詞】
――でも、自分でやめるのと、やめさせられるのは違う。
この言葉に、この作品が描く「選ぶこと」の大切さが詰まっているように感じました。
苦しみも迷いもなく、正しい答えが用意された世界は、本当に幸せなのか。
AIによって作られた穏やかな世界を通して、人間らしさや自分で選ぶことの意味を考えてみたい。そんな方にオススメしたい作品です。
最初から最後まで、作品の芯が一度もぶれていない。
人間にとって幸福とは何なのか。 自分で選ぶということには、どんな意味があるのか。
決して軽くない問いを扱いながら、それを説明だけで終わらせず、カイトとレイの関係の中で最後まで描き切っているのが印象的です。
もちろん、そこに至るまでの物語も面白いです。 日常の会話や小さな出来事が積み重なり、世界が少しずつ変わっていく。その過程があるからこそ、終盤の重みが増していきます。
そして何より、最終話が素晴らしかったです。
この作品にはアテナや人類全体という大きなテーマがありますが、最後まで読んで強く残ったのは、やはりカイトとレイの二人でした。
二人が積み重ねてきた時間が、最後の選択と言葉にすべてつながっていく。
1話から置かれていたものが、最後になって違う意味を持って返ってくる構成もお見事です。 特にラストの伏線回収には、思わずもう一度最初から読み返したくなりました。
深いテーマを持ちながら、最後はきちんと物語として心に残るSFです。