BORDER 最後の境界守
冬青ゆき
第0章
死とは本来、終わりである。
人も獣も命を落とせばやがて形を失い、静かな無へと還っていく。
だが、その理は絶対ではない。
強すぎる嘆き。
断ち切れぬ執着。
焼きついた憎悪。
或いは───愛でさえも歪みきった果てに魂は解けることを拒み、この世に留まり続ける。
そうして生まれるのが、怨念体だ。
それはもはや死者ではない。
未練が凝り固まり、意思と飢えだけを残して変質した災厄である。
怨念体は、己の気配を知覚した生者を決して逃さない。
人間であれ、家畜であれ、一度獲物と定めればどこまでも追う。
肉を砕き、魂殻を裂き、最後には魂魄すら喰らい尽くす。
ゆえに、誰かがそれを狩らねばならない。
日常の裏で誰にも知られぬまま境界線を踏み越えた怨念を見つけ出して裁き、その存在ごと管理する者がいる。
これは死に損なった怨念と、それでもなお人の世を守ろうとする者の暗く、血塗られた記録である。
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