#5 蝉がうるさい
#5 蝉がうるさい
「ねー、悠仁……」
「何?」
「蝉がうるさいから、なんとかしてー…」
「おう、任せろー……」
いや、出来るわけ無いだろ。
「えー、やったー……」
真白も脳死で喋ってんじゃねぇよ。
いやまぁ、確かに、脳死になるくらい暑いけどさ。
今朝、エアコンが効かなくなった。
原因は不明。
何度リモコンを押しても、エアコンがうんともすんともいわなくなったのだ。
今の日本で、真夏にエアコンが効かない、というのは、ほぼ死ぬに等しい。
死だ。
断言しよう。
死だ。
最低限涼もうと窓を開けたが、風も生ぬるい。何なら熱だ。
風鈴とかもないし、うちわも持ってない。下敷きもない。
だから、俺も真白も、真夏の暑さをもろに受けて、絶賛死にかけてる訳だけど。
何なら溶けてる。
ならなんでわざわざ、真白が俺の家に来てるのか。
俺が真白の家に行くのでも良いんじゃないか。
そう言ってみたが、俺が真白の部屋に入るのは「ヤダ」らしい。
……お前、ホントに俺の幼馴染か?
幼馴染ってのは…、こう……、なんか、親友よりも親しい、みたいな、そんな距離感じゃないのか?
あー……、暑い。
ホント暑い。無理だ、溶ける。
真白は俺の家に来る時は、いつもパジャマ姿だが、今はもう限界突破して、肩まで露出してる。
寒色でできてるみたいな存在だけど、流石に真夏の暑さには太刀打ちできないらしい。
いつになく、頬も、露出している肩も、熱を帯びて赤くなっている。
冬はいつも寒そうなのにな。
あー、てか、ほんとに。
顔がいいな。
綺麗だな。
瞼瞑ってると、ホントに人形みたいだ。
てか、シャツが汗でびちょびちょになってるんだが。
俺のベッドで汗かくんじゃねぇよ。
濡れるじゃねぇか。
……てかコイツ、もーちょっと、気をつけたほうが良いんじゃないか?
シャツ透けてるぞ。
目を開けた真白と、目があった。
「ねー、悠仁。もう一回だけ、エアコン、試してみよ?」
「あー……、うん……」
半ば溶けたまま、エアコンのリモコンを、
真白に渡す。
「これ、エアコンじゃなくて……」
あー何?
「……やっぱり」
「悠仁、単四電池二本ちょうだい…」
なんとか立ち上がり、
机の引き出しから取り出して、ひょい、と投げ渡す。
がちゃがちゃ。
ぴ。
間の抜けた電子音とともに、エアコンが風を吹き出し始めた。
「……悠仁?」
「ごめん」
……結局アイス食べられた。
しかも、しろくまくんだ。
いつもの四倍の値段だ。
でもこう、はむはむアイスを食べてる真白を見てると、なんか……こう……。
餌付けしてるみたいだな。
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