第39話 転封
ナミブ経由で俺に届いた指示は度肝を抜くものだった。
旧ジャミール王国と一度はナミブ公爵領に編入が決まっていた旧ガルボ共和国を併せた領地をヴィットマン辺境伯に任せると言うものだった。
広さ自体は以前の3倍以上になったが発展の度合いが違う、既に開発し尽くした領地と違ってこれから開発しなければならない領地では税収が違うのだ。
何より現在の領地の収入はミハエル商会の納税に支えられているのでミハエル商会が新領地に移ってしまったら結構領地運営が大変になるだろう。
と、思ったが
だれが新領主になるのかは知らないが領地を持たない法衣貴族を当てるとすれば開発がすでに終わった領地なら余程の無能でも無い限り失敗は無いだろう、確かに良いアイデアと言えば良いアイデアだ、余計なことをせずに現状維持にだけ気をつければ良いのだから。
シャハト伯爵の様に欲をかかなければ人頭税と支店の税収だけでも十分にやっていけるはずだ。
今までは領主だったので心配いらなかったが関税をかけられるとミハエル商会は結構辛い事態になる、小麦を無尽蔵に販売出来たのは関税が無かったのが結構大きいのだ。
領民も自分の土地を手に入れて定住している者が多い、ワインもこの領の特産品になった。
小麦、その加工品、ワイン、魔道具、マヨネーズ、乳液などこの領地から出荷される品物は多いので関税はミハエル商会にとって死活問題になる。
新領主がそこに気づくとかなりまずい事になるが税収を増やそうとするなら関税はかけるのが普通である、今まで掛けなかったのは商会ありきの領地運営だったからだ、特産品が無い領地は立地条件が良ければ関税の収入だけでも領地運営ができるほどの収入が入るのだ。
まあ今考えるのは領民の事だ、ミハエル商会の従業員には人頭税をかけていなかったが新領主が取る様なら商会で働くより折角開墾した自分の土地をもらって独立した方が良くなる、エドガーさん一家などは絶対独立するべきだがエルフは欲が無くて面倒くさがりなので
「お金の計算が面倒なので商会の従業員のままでよろしく」
って独立しない、自分の興味がないものには極力時間をかけたくないのだ・・寿命が長いくせに。
嫁や子供達を置いて行くのは絶対嫌なので商会の本店は新領地に移さないといけないが、ここに全てを集約し過ぎてしまったので簡単に移せない状況である。
ここでウダウダ悩んでも仕方がないのでブレイバーズに帰還命令を出してナミブまで戻った、車両を積み込んで直通運転で領地まで帰らせた。
俺は王都で降りて王に謁見を申し込んだ。
王都は元々それなりに栄えていたが鉄道が出来てからは更に発展した、計画中の大陸を東西に貫く路線が完成したら物流の中心地として更に発展するだろう。
2日ほど王都で買い物などしながら待っていたら、謁見出来た。
王様、財務卿、軍務卿、法務卿の4人と会談した。
今日は帝国のビックフォーが揃い踏みだ。
早速今回の転封について聞いてみた。
「王様、急に転封と言われても私はともかく商会としてはおおごとなのですが、急にどうしたのですか?」
「いや、新しく手に入った領土だからお前に楽しみを提供してやろうと思ったのだ、開発するの好きじゃろ?」
(うーん、確かに開発は好きだ、領地でも物でも女でも新しい物を作り出すのは楽しい。)
「商会の機能を全てシャハトグラードに集めてしまったので簡単に動けないのですよ、自分が領主だったので商会も政治抜きで発展して来たので今更普通の商会に戻るのも大変なのです。」
「まあ、その辺はあまり案ずるな今日は財務卿と法務卿を呼んでいる、こやつらなら何か良い案があるであろう。」
早速財務卿の意見が発表された。
「では私の案は現在のヴィットマン辺境伯領は王領として代官は私の手のものを充て現状を維持させます、鉄道は元々ミハエル商会の持ち物なので現状維持で新領地に移せる部門だけ移動してもらって現在の本店を支店にします、支店長にはヴォルト殿が適任かと思います、新領地の領都はジャルドが良いでしょう、土地が広くて今あるインフラも痛んでいるので併せて再開発すれば良いし、ザハティールからソルダンまで線路を通す中間地点なのでそこも都合が良いかと思います。」
「可能であれば大陸南側で東西に貫く路線があれば更に発展が望めるのだが、ポルトからカミシロの中央山脈越えルートはやはり無理だろうか?」
このおっさん鋭いな。
実はこっそりポルトから中央山脈手前にあるボード集落まで線路を作って開発したシールドマシンのテストの為にカミシロ王国の手前にあるホーエン王国で終わっている街道目掛けてトンネルを掘っていたのだ、情報が漏れていたのだろうか?
このルートは中央山脈があって西に通じる道が無かった大陸南側の交通事情が大きく変わる、ポルトの小麦を運ぶのは王都からジャルドを通ってカミシロに向かう街道で運んでいたので下手をすると半年くらいかかる大仕事だったのだ、大陸北側の王都からソルダン、大陸西側を南北に貫くソルダンからカミシロ、大陸南側を東西に貫くポルトからカミシロのルートが開通したら大陸中央から西側はとんでもなく発展するだろう。
俺と同じ発想をしたのなら大したおっさんだ、伊達に宰相と財務卿を兼任しているわけではない様だ。
まあ、隠してもしょうがないので。
「ポルトからカミシロ王国までのルートは考えてあります、中央山脈に穴を掘って線路を通すつもりで準備しています。」
「おお!やはり考えておったか、流石ヴィットマン辺境伯だな」
同じ発想をしていたのが嬉しかった様で財務卿から褒められてしまった。
今度は王から
「やはり開発するのは楽しかろう、無理矢理絞り取る様な事はせぬから思う存分楽しむが良いぞ、御主が儲かれば国も潤うでの。」
相変わらず開発費用は商会持ちだが国も支援はしてくれる様だ、各国の線路や駅などの土地の取得は法務卿が外務卿と一緒にやってくれるし新領地の税についても財務卿が便宜を図ってくれる事になった。
ここまでされたら嫌とは言いにくい、って言うか俺も一応貴族だから命令には逆らえない大人しく帰って首脳部と連合のみんなと話しをしよう。
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