第2話 俺以外が強すぎる
男は、魔法を授かり、何とも言えない能力に少しがっかりをしていると、幼馴染が寄ってきました。
「レオ、どんな魔法だった?」
「会話魔法…」
「へえ~」
『自分から聞いておいて「へえ~」って…まあ反応に困る魔法なのはわかるけど』
男は少し不機嫌になりながらも、幼馴染の魔法が気になります。
「それで、すみれは?」
「私は花魔法だって」
「花魔法?なんだそれ」
「なんか花に関することだったら何でもできるらしいよ」
『この世界の魔法は何か変なものばかりなのか?普通そんな魔法ねーだろ』
「えっと、彰仁様は?」
「あ、俺かい?俺は…」
『なんか凄い言いたくなさそうだな。相当の外れだったのか?』
「俺のは不老不死の魔法だって」
「へえ~ふろうふし、って不老不死!?死なないってこと?」
「どうやらそうっぽいね。でも、それ以外は特にないみたいだからシンプルだね」
男は、自分の方がシンプルな魔法であるとわかっているので、大男の言葉に少し傷ついていました。
『ま、まだだ。残り二人がそんなに強くない魔法かもしれないだろ』
「ソフィのは、武器魔法だったよ」
幼女はそう呟きました。男には自分の理解できる言葉だったので、早速魔法の恩恵を受けたことを自覚しました。
「え、えと、ソフィ?は武器魔法だったのか」
「そう、どんな武器も、生み出せる、らしい」
『なんかちょっと変わった喋り方だな。まあでも、そんなことよりも…普通に強くね?どんな武器持ってやばすぎだろ。戦争の権化かよ。てか、俺の魔法って多分これだけだよな。もしかして彰仁様と同じことしかできない?』
「レオはこの子の言ってることがわかるの?」
「え、ああ、そうっぽい。俺には日本語に聞こえるし。多分ソフィには俺の言葉がソフィの国の言語に聞こえるんじゃないか?」
「そうなんだ。レオってお喋り好きだから合ってるね」
男は、自惚れているので、自身に合う魔法はもっと華やかであると思っていますが、そういうことは口には出さず、少し拗ねた態度で示しました。
「それで、もう一人の、ええと」
男はそう言って青年に視線をやりました。青年は男の言葉がわかったことに一瞬驚き、異物を見るかのような目で見た後、情報の開示を始めました。
「僕はケヴィン、ケヴィン・シュナイダーだよ。魔法は操獣魔法だって」
「おう!俺はレオン=ユーリエフだよろしくな。それで操獣魔法ってのは?」
「どうやら動物や魔物?を自由に操れるみたいだよ」
「魔物?なんだそれ?」
「それは私から紹介いたしましょう」
鳴りを潜めていた魔女が再び話の輪に入ってきました。
「魔物は魔力を帯びた動物のことです!ドラゴンなんかも魔物の一例ですね!」
「は?ドラゴンって地球にいないだろそんなの」
「ここは地球ではないのでいますよ」
その瞬間、その場の空気が凍てついたのを魔女以外は理解しました。まだ夏場だというのにまるで雪山にいるかのようでした。
『は?地球じゃない?確かに魔法とかこの場所とかファンタジー感あるけど』
「ここは地球じゃないなら何て星なの?」
「この星の名はマギア、魔法を冠する唯一の惑星です」
『つまりこの状況って…』
「これって異世界召喚ってやつ?」
「はい、すみれさんその通りです!」
『なるほどな。この状況を完全に受け入れたわけじゃないけど、所謂お約束展開というものだろう。あの魔女も俺たちのこと勇者とか言ってたしな!実にこの俺に合ったシナリオだな。まあ、俺の魔法に目を瞑ればだが』
「それで、俺たちは何をすればいいんだ?」
「皆さんにはこれからダンジョンを踏破してもらいます。そして私の不死の呪いを解いて私を処刑してもらいます」
『ダンジョン!なんと良い響きだろうか!まさに主人公属性の俺に相応しいな!まあ、後半の言ってることは物騒すぎてあれだが』
「不死の呪いって何?」
「ああ、まあそれは後回しにしましょう。処刑を宣告された経緯もまた今度話します!それよりも、皆さん自分の魔法が気になっているでしょう?試しに行きませんか?」
そうして勇者たちは魔女に連れられて外に出ました。外に出ると、早速赤竜が現れました。赤竜は咆哮を上げて、こちらを威嚇し、睨んでいます。
「ひっ!」
男は情けない声を出しました。他の者たちもその威圧感に怯えて足がすくんでいました。しかし、魔女にとってはこれが日常であるため、いつもと同じように話始めました。
「皆さん!こちらはぐれ赤竜ですね!皆さんの魔法なら雑魚ですから頑張ってください!」
「こ、こんなの無理だよ!それに、僕らは魔法の使い方すらわからないんだよ!」
「ソフィ、怖い…」
「大丈夫!怖がらないで!魔法はイメージを具現化するんです!できると思えばできます!」
『そんなこと言われてもこんなのどうやって?てか俺の魔法で何ができるねん!』
「レオ、あの外国人さんたちは何て言ってるの?」
「あ?え?」
『そうか、すみれにはあいつらの言ってることがわからないのか』
「怯えているだけだ。後は魔法の使い方がわからないとか…」
「へえ~そうなんだ。でも、もう魔法の使い方わかったから大丈夫だね」
「お前、こんな状況で何言ってんだ!?っておいおい!」
女は赤竜の前に出て、右手をかざしました。そして…
「食べて」
女はただ一言、そう唱えました。すると、地面から植物が現れ、その竜の半身を飲み込んだのです。
「は?」
「い、一体なにが…」
四人はその状況にまだついていけないようです。皆が顔を歪ませる中で、女と魔女だけが平静を保っていました。
「おい、すみれ、今何やったんだ?」
「魔法を使ったの。食虫植物みたいにドラゴンも食べれるかなって。それでイメージしたらできた」
沈黙と異常者を見る視線が女を襲いました。しかし、当の本人は自分の出した植物にめを奪われており、その滑稽さに、魔女も笑ってしまいそうでした。
「はーい皆さ~ん!このままでは赤竜さんが可哀想なので、ケヴィン君、この赤竜をあなたの中に取り込んでください!」
「え、そんな、僕はまだ、魔法の使い方なんて」
「!”#$%&’()=)(’&%$#”!《竜の咆哮》」
命の危険を感じ取った竜は、咆哮をあげ、暴れています。その姿は威厳のあるものではなく、ただの生物でした。
「ほらほら、早く赤竜さんを解放してあげないと~」
「で、でも…」
青年は足がすくんで立っているのも精一杯な状態でした。
「イメージだ!すみれ、じゃなくて、さっき魔法を使ったこいつはイメージしたらできたらしい。だから自分の中に取り込むイメージをするんだ!」
「い、いめーじ」
「そうだ!」
青年は男の言葉通り、竜を取り込むイメージを脳内で作り出しました。竜はその青年のイメージ通り、体は魔力に分解され、青年の右手に吸収されていったのです。
「はあ、はあ…」
「おめでとうございまーす!これで初めてのテイム成功ですね!」
「や、やったのか?僕が」
男は悔しい気持ちを抑えながら青年の元に駆け寄りました。
「おめでとう、ケヴィン」
男は尻もちをついている青年に手を差し出し、祝いの言葉を発した。
「ああ、ありがとうレオン。君のおかげだ」
青年は男の手を取り、立ち上がった。
「さ!せっかくテイムを成功させたんですし、出してみましょ!」
「だ、出す…出す…出でよ!」
青年は頭の中でイメージしました。女が出した植物のように顕現するイメージを。
「ガァァァーッ!」
「わあ!」
イメージが完成した瞬間、地面には六芒星の魔方陣が現れ、赤竜が降臨しました。その咆哮は先ほどと変わらぬ威圧感を放ち、皆が耳を塞いでいました。
「す、すげえ」
「ドラゴンを操れるなんて凄いな」
『やっぱりこの魔法も超強いですよね~知ってました~てか、すみれも何気に凄いことしてたし、もしかしてまともな戦力にならないのって俺だけ?』
「ねえ、レオ」
「ん?どうした?」
「外国人さんと仲良くなりたいから私にもレオの魔法使ってよ」
「俺の魔法って他の人にも共有できるのか?」
『てか共有できたら本当に俺って荷物持ちしかやることなくなるのでは?それはまずい。絵面的にやばい、イケメンが崩れてしまう!』
「魔法はイメージだからレオがやろうと思ったらできると思うよ」
「じゃ、じゃあ、やりたくない…」
「なんで?」
「荷物持ちはしたくないから…」
「言ってる意味がわからないよ?」
「と、とにかく!や~り~た~く~ない~」
「じゃあ彰仁さんにやってもらうね」
「…やる」
「やりたくないんじゃないの?」
「やります…やらせてください」
『これがわざとじゃなくて本心から言っているのを俺は知っている…知っているからこそ、俺がただ恥ずかしいやつじゃねえか!』
男は両手で顔を隠しましたが、耳まで赤くなっているのを幼馴染は見逃さず、「耳赤いけど熱でもあるの?」と聞かれて悶絶したのは、男の名誉のために詳しくは語らないでおきましょうか。
そうして男は魔法を発動させて勇者たちのコミュニケーションを円滑にさせたのです。
「初めまして、橘すみれです。17歳で日本人です」
「初めましてすみれ、僕はケヴィン・シュナイダー。スイスの大学で動物の研究をしてる22歳だよ」
「あなたは?」
「ソフィは…ソフィア。14歳のロシア人」
「ソフィア、よろしくね」
「ソフィでいい、すみれ」
「わかった。じゃあよろしくね、ソフィ」
「うん、よろ、しく」
『すみれってあんまし友達いないけど意外とコミュ力あるんだよな~いい意味で怖いもの知らずというか』
「すみれさんは凄いね」
「あ、彰仁様」
「様はいらないよ。好きに呼んでくれ」
「そうっすか」
「すみれさんもレオン君も俺なんかよりも凄くて何だか誇らしいよ」
「俺もっすか?」
「うん、そうだよ。だってあの場でケヴィン君に的確な指示を出せるなんて凄いよ。俺はただ見ていることしかできなかったし」
「なんか、彰仁さんにそう言われると嬉しいっすね」
「そうなのかい?」
「そりゃ、やっぱ日本生まれ日本育ちなんで、皇族に褒められるのは嬉しいっすよ」
「君みたいな子がいると思うと、日本の未来も明るく思えるよ」
「まあ、俺はいつかビッグになる男ですからね!」
大男は軽く笑い、男に対して羨望の眼差しを向けていました。男のその自信は大男が喉から手が出るほど欲しいものであったのです。
「レオ!そろそろ移動するって~」
「おう!今行く!さ、彰仁さんも行きましょ」
「ああ、そうだね」
そうして二人は女たちの元に駆け寄り、魔女の指針を聞いた。
「これから皆さんにはダンジョンに行ってもらいまーす!」
「ダンジョン?」
「はい!あの塔が見えますよね?あれがダンジョンです!あそこにいるモンスターを倒してきてくっださ~い」
「それで、そのダンジョンを攻略したらあんたの呪いも解けるのか?」
「いえ、解けませんよ?」
「はあ?じゃあなんで行くんだよ」
「最初からレベルの高いダンジョンなんて行ったら、せっかくの可愛い勇者たちがすぐに死んでしまうじゃないですか!あなたたちを成長させるのも私の役目なんですよ!それに、実績作りには持ってこいです」
魔女は胸を張って鼻を鳴らしました。その姿からは幼さを感じさせました。
「実績作りって必要なの?」
「はい!必要です!」
「何に使うの?」
「それは…まあダンジョン攻略してからのお楽しみですね」
『なんかこの魔女隠し事多すぎだろ。まあ、ダンジョン攻略ってわくわくするし、楽しみだが…でもな、俺の役割って何かあるのか?このままだと本当に通訳で終わるんじゃ…』
「ふふっ」
魔女は不敵に笑い、男の肩に腕を回し、耳元で囁きました。
「大丈夫、あなたの役割はしっかりありますよ」
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