主人公が足元をすくわれて「ヒヤ」っとする。そんな感じが強烈な余韻を残してくれます。
主人公は「人権」について学ぶため、刑務所の中を見学しにいく。
その帰りに食堂に寄り、どことなくその場所が「出所者が最初に食べるシャバの味」の現場なのだということを知る。
その辺りから、どんどん主人公が浮足立つように。
彼は人権について学んでいる。言って見れば「塀の中の事情」という「一般人が知らない領域」について理解を深めに行っているはず。
でも、大丈夫なのだろうかと、彼の脇の甘さがどんどん露呈していくことに。
自分が見てきたものを「知識」として得意そうに話す。それと同時に、周囲で聞かされた「元殺人犯の男に関する噂話」までペラペラと喋ってしまう。
彼は本当の意味で、「人権」について学べていたか。受刑者たちの事情という「リアル」をちゃんと肌感覚として受け止められていたか。
彼の行動を見るとどうしても、彼のせっかくの「見学」は無責任な噂話と同じ「うわっつらの知識」で終わってしまっているように思える。
そんな彼がやがて体感するもの。ヒヤっとする瞬間。
彼が知らず知らずに踏み抜いて、何かを侵してしまったかもしれないこと。
一人の人間が持つ無自覚な「危うさ」のようなものがひしひしと感じられる短編でした。
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